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「何でも良いが、早く証拠の在り処を吐いた方が賢明だぞ。こうなったロジーナは、いつ何をするか分からんからな」
「机の引き出しの一番下です! 二重底になってて、底板に見せかけた板の下に、魔法を掛けた子どもたちのリストが入ってます!」
俺は詐欺師の言う机の引き出しの一番下の段を確認した。
すると彼の言うように底板に見えていた板が外れた。
「おっ、本当に二重底になってるな……このノートがリストか」
「あの、話したので、もう拷問はされませんよね!?」
「今回の件以外に悪事を働いたことはある―?」
「無いです。誓います! 今回のは、とある高名な魔法使いの弟子になる選抜試験に落ちてむしゃくしゃしてやったことです。選抜試験に落ちるまでは真面目に魔法の勉強をしてたんです!」
半泣きになりながら述べる詐欺師の男に、ロジーナが顔を近づけた。
「とある高名な魔法使い、ねー。あたしよりも高名な魔法使いなんていないはずなのに、高名な魔法使いねー」
「すみません。全然高名ではない魔法使いです! あなた様と比べたらクズのような魔法使いでした!」
「そうよねー? 偉そうにしてる魔法使いどもは、研究室にこもってばかりで魔王討伐なんてしてないもんねー? 魔王討伐をしたあたしが一番高名よねー? あんたも魔法使いの端くれなら、当然あたしのことを知ってるわよねー?」
ロジーナが反論は許さないとばかりに、語尾を伸ばしながら、ねちっこく問いかけた。
「はい! 拷問魔法使いのロジーナ様を知らない魔法使いなどおりません! お目にかかれて光栄です!」
拷問魔法使いって通称なのか、ロジーナ……。
今や詐欺師の男は半泣きではなく完全に泣いている。やったことがやったことだから自業自得ではあるが、少し可哀想に見えてきた。
「ふーん。まあなんでもいいけど、余罪が無いならあんたはこれで終わりね。あたしのこともちゃんと知ってるみたいだし」
ロジーナがつまらなそうな顔をしながら述べた。
良かった。エグい拷問が始まる前に終わってくれたようだ。
そう思った俺は甘かった。
「でもそっちの奴隷商はまだダメ。人間をさらってきて奴隷として売りさばいてた証拠を出すまで、許してあげない」
ロジーナが、それはそれは愉しそうに笑った。
* * *
「さあみんな、どこへでも好きに行くがいいわよ!」
あの後、俺たちは無事に奴隷商の悪事の証拠を入手した。
ちなみに奴隷商は無事ではない。
まあ生きてはいるからギリギリセーフ……いや、やっぱりロジーナはやりすぎの気がするが。
とはいえあの奴隷商によってカイルとケニーが劣悪な環境に閉じ込められていたことを考えると、同情は出来ない。
とにかく。そんなわけで、俺たちは詐欺師と奴隷商を証拠とともに衛兵に引き渡し、奴隷たちの閉じ込められている倉庫にやって来ている。
そして奴隷たちの入れられている檻をすべて開放し、中にいた彼らを解放した。
「もう自由にどこへ行っても良いけど、行く場所が無い人はここに残って。あたしが王都で住み込みの仕事をあげるから。当面の衣食住は確保できるわよ。ただしあたしの元に来た人には力仕事が待ってるからそのつもりでねー!」
力仕事……以前ロジーナが古狸とやらに押し付けられた仕事をさせるつもりなのだろう。
どんな仕事かは知らないが、言葉通り衣食住は保証されると思っていいだろう。ロジーナはそんなところで嘘を吐く人間ではないから。
「残ったのは三人ね。うんうん、力持ちっぽい人が残ってくれて良かったわー」
この場に残った人物を見て、ロジーナが満足気に頷いた。
「あたしの塔に来たら、弟子たちに仕事内容を習ってね。みんな細くて弱そうに見えるだろうけど、魔法使いだから逆らったら怖いわよー。両手の爪を剥がされちゃうかも!」
冗談のように言っているが、ロジーナが言うと冗談になっていない。
ロジーナはさっき気軽に他人の爪を剥がしていたのだから。
……と言うか、弟子にもあの魔法を教えているのか。なんて恐ろしい流派なのだろう。
「そうだ、フェリックス。また一晩泊めてよー。ついでに彼ら用の部屋も貸して」
「また魔力切れか?」
「今回はあたしだけじゃなくて、彼らも王都まで転移させなくちゃならないからねー」
「はいはい。こんなことを想定して部屋をたくさん作ったわけじゃないんだがな」
俺は一度肩をすくめてから、ロジーナと三人の男たちを連れて歩き出した。
今夜は俺とカイルとケニーに加えて、ロジーナと三人の男たちの分の料理も作らないといけないのか。
……宿代代わりにロジーナが料理を作ってくれないかなあ。




