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「勇者一行よ。此度の魔王討伐、見事であった。そなたたちのおかげで世界は平和になった。魔物の残党はまだいるようだが、魔王亡き今、大したことは出来ないだろう」
魔王討伐に俺たちを送り出したこの国の王が、俺たち勇者一行――俺たちと言ったが俺は勇者ではない――に向かって満足気に言った。
「この栄誉を称え、そなたたちに褒美を与えようと思う。名誉、地位、そのほか何でも欲しいものを言うがよい」
「いいえ。世界を平和にすることが私たちの使命です。褒美など必要ございません」
真面目な勇者がとんでもないことを言いだした。これに俺は目をひん剥く。
いやいやいや、俺たちの旅はかなり大変だったぞ!?
あんな苦行を経験して褒美が無いなんて、そんな馬鹿な話があるものか!
魔王を倒したおかげで、魔物に対する防衛費もこれまでより格段に少なくなるし、魔物に町を荒らされることが無くなるのだ。その分の金額を褒美として俺たちがもらってもいいのではなかろうか!?
王様、お願いです。もっと褒美をゴリ押ししてください! 俺たちに押し付けるように褒美を渡してください!!
「必要ないとは言うが、魔王を討伐した勇者一行に褒美を出さないわけにも行くまい」
「ありがたいお言葉です、がっ……!?」
俺の願いが通じたのかは分からないが、王がもう一度褒美の件を口にした。
そして勇者ももう一度断りの言葉を口にしようとした……ところを、勇者パーティーの魔法使いであるロジーナが魔法で防いだ。あれは『三分間の静寂』の魔法だ。ロジーナが他者の言葉を封じたいときに使う上級魔法。
そうか、ロジーナ。お前も俺と同じ考えなんだな!?
ロジーナの意思を汲んだ俺は、すかさず勇者の代わりに発言をする。
「畏れながら申し上げます。大陸を統べる国のトップである貴殿からの褒美は、生涯の宝と言い換えても遜色無いものでございます。是非我々に、生涯の宝を得る機会を頂けないでしょうか」
俺の言葉を聞いた王が満足気に頷いた。
一方で勇者は俺の方を見てすごい顔をしたが、魔法使いのロジーナと回復術師のルシアは涼しい顔をしている。
ロジーナだけではなくルシアも褒美が欲しかったらしい。ルシアが褒美を欲しがるタイプだとは思わなかったが、それはそうか。あれだけ過酷な旅を経験して何の見返りもいらないと言うのは人間らしくない。そんなことを言うのはこの世界で勇者だけだろう。
「心配せずとも全員に褒美を用意してある。魔王討伐の報奨金に加え、全員に町の領主などの欲しい地位を与えよう。あと勇者にはわしの娘と結婚をしてほしい」
「「「ありがたき幸せ」」」
俺たちが恭しく頭を下げたところを見て、観念したらしい勇者も頭を下げた。
よし、これで褒美はもらえることになった。
あとは。
「王様、実は個人的なお願いがございます」
「ほう。言ってみるがいい、格闘家よ」
「俺は地位はいりませんので、その分、報奨金に色を付けては頂けないでしょうか」
* * *
「王様が太っ腹でよかったあああ!!!」
俺は丘の上に建った店を見てガッツポーズをした。
「ああ、まさか現金一括で店を購入する日が来るなんて思わなかったな。しかも二階は自宅。夢のマイホーム!」
王都からかなり離れた町のため土地が馬鹿高いわけではなかったが、それでも大きな建造物を建てるにはそれなりの金が要る。
これからも多額の金が掛かることが予想されるため、王に交渉をしておいて良かった。
ちなみに俺が領主の地位を辞退したのは、昔からの夢があったからだ。
それは……「男の娘カフェ」を経営することだ!!!!
「長かった。実に長かった。前世を足すと、それはもう長かった」
何を隠そう、俺はこの世界に転生した元日本人なのだ。
元の世界で交通事故に遭って死んだ俺は、気が付くとこの剣と魔法の異世界に転生していた。
この世界での俺の名前は、フェリックス・デ・フォーリー。格闘家一家に生まれた俺は、幼少期から格闘家としての技術を教え込まれた。
異世界転生で第二の人生を始められたことはラッキーだったが、この世界、そして格闘家一家は、俺の趣味嗜好とは相性が悪かった。俺がいくら可愛いものが好きだと言っても聞き入れられることはなく「軟弱な趣味は認めん。もっと鍛える必要がある!」とより一層修業が厳しくなるばかりだったのだ。
そのせいだろうか。趣味嗜好とは逆に、俺は格闘家としての才能を開花させた。
そして気付けば勇者パーティーに選抜され、魔王討伐の旅に出ることになっていた。
「魔王討伐の旅でより一層ゴツくなったよなあ、俺」
俺は自身の太い腕を見て溜息を吐いた。
実のところ俺は、自分で可愛い服を着たいと思っていた時期があった。
しかし転生前も転生後も、家の都合で可愛い服を着ることが許されなかったのだ。
転生前は実家を出て一人暮らしを始めたら可愛い服を着ようと決意していたものの、一人暮らしをする前に交通事故で死んでしまった。
そして今世では、実家を出る前に魔王討伐の旅に駆り出されたため、可愛い服を着ることが出来なかった。
ようやく魔王討伐の旅が終わったと思ったら、このゴツさだ。溜息も出る。
「魔王討伐の旅に出る前は、ギリギリ可愛い服を着ても良いような筋肉量だったんだが……あれだけ過酷な旅じゃ筋肉ゴリゴリにもなるよな」
だから俺は自身の夢を少し変えた。
俺の代わりに、少年に可愛い服を着てもらうことで、俺の夢を代理で叶えてもらう! 少年の頃の俺の夢を具現化してもらう!
そうすることで、疑似的に俺の夢を叶えるのだ。
「店が完成したところで、店員がいないことには開店できない。店員を見つけに行かないと」
幸いなことに、俺には王からもらった報奨金がまだまだある。
あとは行動あるのみ、だ。
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