第2話 この小屋は素晴らしい(寝室・衣装部屋)
はっ、と気が付くと窓の外がうす暗くなっていた。どのくらいの時間が経過したのだろうか?いつの間にか机の上にはランプが置かれていて辺りを照らしている。
『異世界での過ごし方』
時間も忘れてこの本に夢中になってしまった。本の中でこの部屋についても触れられていた。正確にはこの小屋についてだけど……
曰く、この小屋は外部から認識されないらしい、それと小屋からある程度離れてしまうと私も認識できなくなるようだ。それにこれが結構重要で、この小屋に滞在する間は、すべての生理現象から解放されるようだ。つまり食事、睡眠などを必要としないわけだ。確かに数時間だろうけど空腹も眠気も感じなかった。今ものどが渇いた感じもない。
あとは、外部から認識されないので危険はなく、基本的な衣食住環境が用意されていると書いてあった。まだ試していないが、台所の食糧棚を開けると材料などが新鮮なまま出てくるので、調理して勝手に食べろという具合だ。調理器具も揃っていると書いてあった。
(食事をしなくても問題ないのに、なんで用意されてるんだろう?)
他にも別の部屋に普段着る衣服や魔物を倒すための装備などがあるし、この世界では珍しいお風呂があるとも書いてあった。ここまで読んだ時、すでに私はこの小屋に引きこもる気満々である。
でも、滞在期間に条件があり、1年より長く、つまりこの世界で360日より長く滞在できない。ちなみに1週間は6日でそれが1月に5週、そして12か月で1年になっている。
(地球の暦より計算しやすくていいわね、1年しか滞在出来ないのは残念だけど……)
ベッドのそばにある窓を見ると、先ほどよりも暗くなっているのがわかる。月明かりだろうか、森の木々が微かに見えていた。本を閉じベッドに座り窓の外を眺めてみるが、空には大小2つの月が見えた。異世界に飛ばされたのだなと、改めて感じる。
特に眠いわけでもないが、ベッドに横になり瞼を閉じると自然と寝入ってしまった。
目を開けるとまだ少し暗いが、夜が明けている感じがする。ベッドに座ってみたが今まで寝ていたと思えないほど意識がはっきりしている。すごく不思議な感覚で、あくびも出なければ体を伸ばそうとも思わない。昨日?は1日中、本を読んでしまったので、今日は小屋の中を確認することにする。
立ち上がって部屋の扉に向かい、おそるおそる開けてみた。扉の先は廊下になっていたので、扉から顔だけ出して左右を確認してみる。所々にランプがぶら下がっていて廊下は明るい。いくつか部屋があるようで扉が見えた。
まずは今いる部屋の隣の部屋に入ってみる。『武具室』というプレートがかけられている扉とチェストがいくつかある。部屋の広さは寝室でいいのかな?その部屋と同じくらいだ。
とりあえずチェストの一番上の引き出しを開けてみると下着が入っている。ブラジャーとショーツがきれいに畳まれて並んでいる。白一色ですべて同じ物のようだ。ふと、今自分が着ている服や、下着について確認していないことに気が付いた。
(本に集中してしまって確認もしなかった……)
身につけているのは、生成りの麻素材のワンピースだった。少しゴワゴワする感じもあるが問題はない。あとは下着でいつもの感覚と同じなのでショーツははいているし、ブラジャーも着けているのだろう。靴下は履いていない。
本の説明では小屋には1人しか滞在できないようになっているらしいので、ワンピースを脱いでみた。この部屋は窓もなく天井からランプが下がっているだけなので覗かれることもないだろう。
チェストにしまってある下着類と同じ物みたいだ。サイズがぴったりなのが気になるけど、日本で購入する物と何ら違いがないように感じる。ブラジャーにはワイヤーも入っていて、きちっとフィットしている。
(ショーツにはゴムが使われているし、これってこの世界で使ってはダメな部類のやつなのでは?)
まるで質問に答えるかのように、チェストの上に昨日読んでいた本が現れた。ちょっとびっくりしたけど、本に手をかけて開いてみる。開いたページには【下着について】の項目があった。
【下着について】
現在着用されている下着は、貴女の世界で作られたものを複製した製品です。材質なども複製されているため、一部この世界には現在存在していない物質も含みます。(化学繊維やフック、ワイヤーに使われているステンレスなどがそれにあたります)
このような製品は出来れば公にせずに秘匿することを推奨します。また、着心地は悪くなりますがこの世界で仕立てることが可能な下着も用意してあります。ぜひ試してみてください。
なんか微妙に監視されてるように感じるが、別に視線があるわけでも、物音がするわけでもない。もう少し様子をみるしかない。本の提案に乗るのは少々癪ではあるけど、確認は必要だと思い次の段を開けてみる。
同じように下着が並んでいる。確かに先ほどの段と違い、この世界で仕立てることが可能な下着と思われるものが並んでいた。かなり簡素な作りだが、この世界ではこれでも画期的なものなのだろう。とりあえず引き出しを閉めてワンピースを着た。




