88.狂信者の耐久戦術
すぅ~……重ね重ね期待しないでください!
(金霊院 秀光視点)
真梨亜姉さんと遭遇してから、数分が経過した。
「あらあら、そんなものですの?」
「……真梨亜姉さんこそ、守ってるだけじゃどうにもならないよ?」
「秀光……その台詞は少しでも相手に痛手を負わせてから言うものザマス!」
「あはは……カミラエルさんは手厳しいね……」
……僕とカミラエルさんは、相も変わらず真梨亜姉さんの結界に手を焼いていた。
「もう、こいつは無視して他の奴からしっぽ取るとかじゃ駄目なんザマスか?」
「……ルールが確かなら、1人でも残ってる限りその学年は負けない事になってるからね……ここで片付けられるなら片付けておきたいのさ!」
「ふふ、きちんと現状を認識しておりますわね」
そう。
たった1人でも残っている限り、その学年の負けは絶対に決まらない。
……故に、3年生に勝つためには絶対に真梨亜姉さんも片付けなければいけないという……
本当に厳しい戦いだね。
加えて、現在進行形でぎこちなくなっているカミラエルさんとの共同戦線というのもマズい。
……ふむ、この戦局を打破する手段を考えないといけなさそうだ……
「秀光、何か考え事ザマスか?」
「ちょっとね……それにしてもカミラエルさん、昼休み前の事はあんまり気にしてない感じ?」
「そんな訳ないザマス!……ただ、今はあの件を気にしてる余裕すらないだけザマスよ!」
「はは、みたいだね……」
カミラエルさんは2つの物事を切り離して考える事の出来る人物だったらしい。
……にしては、普段から僕に突っかかって来るのは何故なんだろうね?
まあ、今は考えても無駄か……
「無駄話は終わりましたの?」
「ええ、真梨亜姉さん……その上で宣言します」
「何を、ですの?」
「……僕とカミラエルさんの2人で貴女を倒すという事を、ですよ!」
「そ、そうザマス!」
僕は真梨亜姉さん相手に勝利宣言をかました。
……もっとも、僕がこの手の勝負で真梨亜姉さんに勝てた事なんて1度もないんだけどね?
なんて思ってたら……
「ほう……まあ、秀光は貴重なチート異能持ちの男性というだけで、長子である筈の私を差し置いて金霊院家の跡継ぎに内定しているぐらいですから……その程度、楽勝なんですわよねぇ!」
ーぶわっ!
「くっ!」
「い、意外とそういうの気にするタイプだったんザマスか!?」
真梨亜姉さんは内心、長子の自分より後に生まれたにも関わらず異能や性別といった理由で跡継ぎに内定した僕を快く思っていなかったらしい。
……何より、僕は真梨亜姉さんより弱いしね。
「私だって、金霊院家を継いで一族全員でラヴィ・リンスゥ様を崇拝したかったですわ!」
「……選ばれなかったの、ああいうところも理由なんじゃないザマスか?」
「し~っ!……それは言っちゃ駄目だから!」
「あら、しっかりと聞こえてますわよ!」
あ~、うん……
真梨亜姉さん、完全に校長先生を勝手に崇拝してる狂信者だからな~。
……仮に僕が居なかったとしても、跡継ぎ候補からは外されていただろう。
「……まあ良いか……宣言したからには、やらなくちゃね!」
ーチャキッ!
「全くザマスね!」
ーバサッ!
僕は【悪殺の剣】を握り、カミラエルさんは背中の羽を思いっきり開く。
……けれど、このままじゃ勝てない。
「では……そろそろ2人のしっぽもいただきますわよ!」
「来ると良いよ!」
「同じくザマス!」
ここで考えるべきは、真梨亜姉さんの強み。
そもそも生徒3強の強みはバラバラで、本江先輩は素早さ特化で、寂子先輩は攻撃特化……
そして真梨亜姉さんが最も得意とするのは防御と回復特化による耐久戦術だ。
だからこそ、早く結界を破りたいんだけど……
「威勢だけは良いですわね……【聖女・具現化】ですわ!」
ーキラキラキラキラ……
「やっぱり出して来たね!」
「ちょっ、お前もザマスか!?」
真梨亜姉さんが初手で出したのは、僕のそれとほぼ同じ感じの……巨大な金色聖女の具現化だった。
その上……
「2人とも、踏み潰してあげますわ!」
ーゴゴゴ……ドシィィィィィィィィィィィン!
「これだから真梨亜姉さんは……」
「荘厳な感じ出しておいて踏み潰しとか、もうちょっと何かなかったんザマスか!?」
「真梨亜姉さんの強みは防御と回復であって、攻撃面は基本的に脳筋寄りだからね!」
真梨亜姉さんの攻撃は基本的に脳筋寄りで単純だ。
まあ、障害物競走の件を見て分かる様に単純さも1周回って読みづらくなってるんだけどね?
加えて、そんな攻撃に最強クラスの防御と回復が乗ると更に厄介な強さへと変貌する。
……まるでゲームにおける、どれだけ攻撃しても体力を削り切れない無敵の耐久キャラみたいな、ね。
「煩いですわね!……口封じの【神の鉄槌】を食らうのですわ!」
ードンガラガッシャァァァァァン!
「うぐっ!」
「……こいつ、この私相手にここまでやるとか本気で強いザマスな!」
僕は真梨亜姉さんが落とした雷を避けながら、カミラエルさんの言葉に内心で頷く。
確かに真梨亜姉さんの防御は鉄壁だ。
……特に、こういった自分1人でも生き残っていれば負けない勝負では最強と言って良い程に。
けれど、そんなシチュエーションでなければ真梨亜姉さんはそこまで重宝する万能キャラじゃない。
ここまで鉄壁の結界で守れるのは自分だけだし、自分以外の他者を狙われたら終わり、何より僕やカミラエルさんを未だに削り切れない程には攻撃も対応可能……
障害物競走の件だって不意打ちが効いただけであって、正々堂々やっていれば結果は違った筈さ。
つまり、何が言いたいかと言えば……
「カミラエルさん、何か真梨亜姉さんの結界を突破する方法はないかい!?」
ーブンッ!ガキィィィィィン!
僕は真梨亜姉さんの隙を突き、剣を振り下ろす。
……けれど、その攻撃は真梨亜姉さんの結界に為す術なく阻まれ、そのまま止められてしまった。
「あらあら、金霊院家の跡継ぎ最有力候補様の実力はその程度ですの?」
「うっ……そこを突かれると痛いね」
「それと……頭上注意ですわよ?」
ーゴゴゴ……
「百も承知さ!」
ータッ!……ドシィィィィィィィィィン!
先程まで僕が居た場所に振り下ろされる、金色聖女の踏み潰し攻撃。
……そして、それに思いっきり巻き込まれてなお無傷の真梨亜姉さん。
もう、絶望しかないよ……
「秀光、もう出し惜しみはナシで行くザマスよ!」
「分かってるとも!」
それでも、僕達はやらないといけない。
……勝ち残るためには。
「……というか、秀光もあの具現化出来るんザマスよね!?」
「出来るけどしないよ!?……真梨亜姉さんはアレの制御が苦手だから、今みたいに単調な攻撃ばかりさせておいた方が良いんだ……ここで仮に対抗して巨大戦力を投入なんかしたら、無駄に被害が大きくなって損するだけさ……」
「そ、そうなんザマスね……」
「……地味に私が気にしている事を抉るのは辞めてくださいませ!」
ーゴゴゴ……ドシィィィィィィィィィン!
真梨亜姉さんは相も変わらず具現化した金色聖女の踏み潰しか、雷による攻撃ばかり……
やはり、耐久戦術に入った感じかな?
「カミラエルさん、どうも真梨亜姉さんは僕達相手に徹底的な耐久戦術で挑むつもりらしい」
「……どういう事ザマス?」
「具現化した金色聖女に雷でこちらを牽制しつつ、結界で防御して僕達のスタミナ切れを狙っていると言えば分かるかな?」
「……最悪ザマスね」
良くも悪くも勝つためなら手段は選ばない人だからね。
確実に勝てるなら、どれだけ地味な絵面になろうともやってのけるんだよ……
……だからこそ、そろそろ本気で対策しないとマズい事になる気しかしないね。
「と、なると……カミラエルさん、この停滞した戦況を何とかしてくれないかい?」
「……駄目ザマス、私の攻撃は多分全てが結界に阻まれるザマス……」
「試してみなきゃ分からないよ?……なんて、頼ってる身で本当にごめんね……全部、僕が役に立てないせいなのに……」
「っ!……辞めるザマス、恋の好敵手が漏らす弱音とか聞きたくないザマス!」
……ああ、本当にそうだ。
僕は何を弱気になっているんだ。
でも、この感じ……
「……カミラエルさん、まだ切りたくない奥の手があるって顔をしてるね?」
「っ!?……き、気付かれたザマスか……」
やはり、カミラエルさんには奥の手があったらしい。
それが何かまでは、分からないけど……
「頼む、お願いだからそれを……」
「……なら、耐え抜くんザマスよ?」
「へ?」
その時、僕は咄嗟に察せなかった。
……なのに、カミラエルさんは構わずに手札を切った。
「ふぅ……【夢血再現・黄衣の王】!」
僕は、どの様な手札をカミラエルさんに切らせてしまったのか……
それを僕が理解するのに、そう時間はかからなかった……
ご読了ありがとうございます。
無限耐久キャラに有効な一手、それは……
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




