24.コードネーム:三毛猫
取り敢えず、一休み的に更新しただけで、これの更新に専念する訳じゃありません。
(ラヴィ・リンスゥ視点)
ワシは今日、都内のとあるビルの一室にやって来ておった。
何故なら、面倒な呼び出しがあったからじゃ。
「ニャ~。……で、"不死身の吸血姫"の様子はどうニャってるんだニャ?」
……ワシを呼び出したのは、目の前に居る人物……
【猫又】という異能を持ち、"内閣情報統制室"という組織で室長を務める女……コードネーム:三毛猫と呼ばれるワシの昔馴染みじゃった。
なお、その頭髪は三毛猫と同じ3色で構成されている上、頭には猫耳が、腰からは2本の三毛猫らしき尻尾が生えていたのじゃった。
そのくせ、服はきっちりと黒のスーツを着てるからチグハグ感が凄いのじゃ……
「ふん、また総理からこちらの状況を聞く様に命令されたんじゃな?……ったく、報告は逐一上げておるじゃろうに……」
そもそも、"内閣情報統制室"は大々的に公表されておる"内閣情報調査室"とは異なり、完全に時の総理の私兵として動ける組織の筈じゃ。
その存在すら一部の人間を除き秘匿され、ワシですらコードネーム:三毛猫の"現在の本名"を知らない程には完全なブラックボックスと化している組織……
そんな組織の長が、いくらカミラエルが要注意人物だとはいえ逐一報告を上げている筈の事柄について聞いてくるのはおかしいのじゃが……大方、こいつの直属の上司たる内閣総理大臣が過度に警戒しておるのじゃろう。
「ま、これも仕事ニャもんで」
「……どうせ、総理はワシの所にカミラエルが居る事に対して不安になっておるのじゃろ?……何せ、ワシ等は100年以上前に民衆相手に弾圧を行っていた当時の政府とバチバチに争った英雄と呼ばれた者達の生き残りなのじゃからな」
……今から100年以上前、この国の政府は弱い異能力者や無能力者を弾圧する方針をとっていたのじゃ。
ある意味、異能というものが存在するからこそ起こったものじゃったが……これに反抗する者や、面白半分で民の味方として介入する者も居った。
それが、後に英雄と呼ばれる者達じゃった。
「……総理の考えはもっともだニャ。……もし、今度はニャにもしてニャいのに反抗されるかもしれニャいと考えると……お前に直接聞いといた方が良さそうニャのはその通りだニャン」
「よく言うのじゃ。……お主も、英雄と呼ばれた者の1人じゃろうに……」
「そ、それはそうニャけど……」
英雄と呼ばれた者達は、100年以上前の出来事というのもあって殆んど存命ではないのじゃ。
ある者は戦いの中で死に、またある者は天寿を全うして死に……
各々が様々な死因で逝き、最終的に今でも存命なのは4人だけになってしもうた。
「"不死身の吸血姫"と呼ばれたカミラエル、"孤高の屍仙"と呼ばれた胡蘭、"迷宮の巫女"と呼ばれたワシ、そして"道楽の猫又"と呼ばれたお主……」
「結局、今でも生き残ってるのはミャ~やカミラエルみたいニャ長命が含まれてる異能持ちか、お前みたいな人外生命体だけニャ」
「……しかも、カミラエルと胡蘭にとってあの戦いは長い人生の中で介入した数ある戦いの1つに過ぎぬ……現に、カミラエルは100年以上前にワシと会っておる事など覚えておらんかったからのう……」
「それは……ミャ~としてもショックだニャ~」
共に戦った者ではあったが、カミラエルにとってあの戦いは重要と言う程のものではなかったのじゃろう。
「……話が脱線したのじゃ。……とはいえ、よく考えたら総理の懸念も痛い程に分かってしまうのう……」
「そうニャそうニャ!……少ニャくとも、"不死身の吸血姫"は少し前までテロリスト共の幹部格だった上に、"孤高の屍仙"は今でもその組織の幹部格ニャ!」
「……反論の余地もないのじゃ……」
カミラエルは少し前まで"異能の夜明け"の"No.9"として活動しておったし、胡蘭に至っては今も"異能の夜明け"の"No.6"として活動しておるからのう……
「……で、本当に問題はニャいのかニャ?」
「ない……とは言い難いのじゃ。……今のカミラエルは禍津 影華という生徒に惚れて、一緒に馬鹿な騒動を引き起こしまくっておるからのう……」
「ニャ~……確かに報告にあった通りニャ……」
「じゃが、それ以上はどうにもならんのじゃ……」
寧ろ、馬鹿ばっかりしてくれてる間は安心ってぐらいには笑えない相手なのがカミラエルじゃし……
「そうかニャ……ま、本当に影華が一緒に居るのニャら安心しても良さそうだニャ」
「……ん?……どうも、影華を知っている様な口振りじゃな?」
影華は確かに問題児じゃが、"内閣情報統制室"の室長に認知される様な問題を起こす様には……見えなくもないが、そんな前科はなかった筈じゃし……
とまあ、ワシが悩んでおると……
「……これは影華含め、誰にも言わニャいで欲しいんニャけど……今のミャ~の本名は、禍津 魅怪っていうんニャよ……」
「へ?……禍津……魅怪!?」
ワシはその名前を知っておったのじゃ。
確か、諸々の書類で禍津3兄妹の母親として記入されておった筈の名前じゃったからのう。
「あ、ニャにか気付いたかニャ?」
「お、お主……あの3兄妹の母親じゃったのか!?」
「そうニャよ?」
「……た、確かに異能の要素が全く遺伝しないのは珍しくないがのう……それならそうと前もって言って欲しかったのじゃ!」
道理で3人共、強い異能力者な訳じゃ!
異能は遺伝しなくとも、強い異能力者の子供も強い異能力者になりがちじゃからのう……
「あ、3人はミャ~がこういう仕事してるって知らニャいから、マジで秘密にしといて欲しいニャ」
「分かったのじゃ。……にしても、3人は本当に人工授精で産まれた子なのか?……まさか、ちゃんとした父親が居たり……」
「安心するニャ!……ちゃんと人工授精ニャ……」
「……なら良いのじゃ」
……こ奴が何を思って人工授精で子を産もうとしたのかは分からんのじゃ。
じゃが、下手に探らん方が良さそうでもあるのう。
「ニャ~……あ、秘密とは言ったんニャけど、影華には卒業と同時に言うつもりで居るニャ!」
「何で影華だけなのじゃ?……明や光華には言わぬのか?」
何で影華にだけ……
そう思って聞いたのじゃが……
「2人は、あんまり"裏"に関わるべきじゃニャいんだニャ。……ただ、影華だけはいずれミャ~の後釜にしたいと思ってて……取り敢えず、卒業と同時にうちの組織に副室長のポストを新設して任命するつもりで居るニャ!」
「……あ、あの問題児をお主の後釜にじゃと!?」
そんな事になれば、総理がストレスと疲労でぶっ倒れるのじゃ!
「どうせ総理がストレスと疲労でぶっ倒れるとか考えてるのニャ?……大丈夫ニャ、あの人はあの人で結構メンタル強いニャ!」
「……ほ、本気なのかのう?」
「本気ニャ!……影華の、身内だろうと無関心で対応しつつ、責任をとる場面ではちゃんと責任をとれる性格ニャら……」
「……それと同時に、兵器オタクを通り越した兵器馬鹿でもあるがのう……ほぼ確実に悪目立ちするのは間違いないのじゃ……」
今までの経験からして、あの兵器馬鹿が隠密作戦なんて出来る訳ないのじゃ!
銃撃戦には絶対に発展するじゃろうし、下手をすればエレクトリカルパンジャンカーニバルが開催されてしまうのは目に見えておる……
「そ、そこまで言うニャ?」
「お主はエレクトリカルパンジャンカーニバルを見ておらんから、そんな事が言えるのじゃ……」
「いや、エレクトリカルパンジャンカーニバルってニャんの事ニャ!?」
「……エレクトリカルなパンジャンのカーニバル、としか言えんのじゃ……」
その後も特に発展性のない会話が繰り広げられたが、まあ大した価値もない情報じゃった。
……にしても、こ奴があの3人の母親だとは思わなかったのじゃ……
ご読了ありがとうございます。
禍津3兄妹の母親、禍津 魅怪は自身の異能である【猫又】の効果で100年以上生きています。
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