23.夜中の密談
息抜きに更新しました。
……読んでて何か違うとは思いつつも、更新しました。
(禍津 明視点)
カミラエルが1年に編入してから数週間が経過した5月中旬……
「うぅ……この前のテストは平均点こそ取れたが……マズいな……」
その間、俺達は中間テストを受けていたのだが、俺の結果は平均ギリギリだった。
「……とはいえ、アヤノに比べりゃマシか……あいつ、結構赤点多かったみたいだしな……」
意外な事に、アヤノは勉強が出来ないタイプだったらしい。
……余談だが、未だに俺はアヤノとキスより先を出来ずに居る。
まあ、同性とそういう事をするハードルは高いからな……
「……それはそうと秀光や光華、影華の点数が高いのは予想通りだったか……」
あの3人はやはり優秀だ。
俺なんかとは比べ物にならない程に……
「ハァ……何か眠れないし、少し外を歩くか……」
一応言っておくと、この世界では男性かつ強い異能力者というだけで将来の生活には困らなかったりする。
……だとしても、前世でそこそこの人生を歩んだ俺からしたらテストの点数がヤバイのは危機感を持ってしまうのだ。
そんなこんなで眠れなくなってしまった俺は、少し寮を抜け出して外を歩く事にしたのだった……
そして数分後……
「あ、兄さんなのです!」
「影華……お前も出歩いてたのか……」
少し夜空の下を歩いていた俺は、何故か影華と出くわした。
……これが光華やアヤノなら多少は嬉しくなったかもしれないが、絶賛トラブルメーカーと化している影華と出会ってもそんな気分にはなれなかった。
「……何か失礼な事考えてるのです?」
「トラブルメーカーに会ってゲンナリしてるところだよ……」
「普通に言ったのです……」
「影華相手に気を遣う必要もないしな」
こんな事を言っているが、これでも俺は影華を怒らせない様に細心の注意を払って言葉を紡いでいる。
……下手に怒らせたら、俺じゃどうやっても影華に勝てないからだ。
とまあ、ここまでは大した話もなかった。
そう、ここまでは。
「ハァ……で、他に誰も居ないのですし、少し内緒話でもするのです」
「内緒話?……いったい、何のはな……」
「兄さんは、本当に兄さんなのです?」
「っ!」
……俺は一瞬、息が詰まった様な気がした。
何故、疑われた?
何故、言う気になった?
俺の脳内に、そんな疑問が浮かんでは消えていく。
「……いや、この言い方は少し違うのです。……あの光華姉さんが何も疑っていない辺り、兄さんは本物の兄さんで間違いないのです」
「そ、そうだ!……何を思って、俺が本物かどうかなんて聞いたんだ!」
影華が俺を本物だと思った理由が光華である事に対して思うところはあるが、今はひとまず置いておこう。
……だが、影華はまだ何かを疑っているらしく……
「だから、質問を変えるのです。……兄さんは、何を思い出したのです?」
「っ!?」
先程の質問よりも、更に核心を突く質問だった。
俺の今の状態は、この世界の自我が前世の記憶を思い出したって形に近い。
つまり、人格のベースは今世の自我だが、前世の常識に引っ張られていると言った方が正しいだろう。
「……あの日、階段で転んで頭を強く打ってからの兄さんは、かつてのトラウマを何故か克服していたのです!……そして、頭を打った直後の謎発言……これは巷で流行ってる異世界転生系の物語とよく似ているのです!」
「……まあ、そうだよな……」
他の奴等ならまだしも、記憶を思い出した場面に居た影華が気付かない訳がない。
……いやでも、光華は全く気付いてなさそうだが……
「どうせ光華姉さんの事でも考えてるのです?……光華姉さんは兄さんを本物だと直感してからはそれ以上何も考えてないだけなのです。……でも、私は思考放棄したりしないのです!」
「そ、そうか……」
「で、どうなのです?……兄さんは、前世の記憶とか持ってるのです?……それとも、ただ頭がおかしくなっただけなのです?」
……これはもう、駄目だな。
影華相手に下手な誤魔化しは通用しそうにない。
「……影華の予想通りだ。……俺は、別の世界からの転生者だ……」
俺は、あっさり真実を伝えた。
そして、それを聞いた影華の反応は……
「ふ~ん……そうなのですか。……じゃ、この話はこれでおしまいなのです」
「ファッ!?」
……突如として、俺の転生に関する話を終えると宣言したのだ。
「ん?……何で鳩がマシンガン食らった様な声を出してるのです?」
「いやそれどんな声だよ!……じゃなくて、深く詮索したりしないのか?」
俺としてはてっきり、根掘り葉掘り聞かれるとばかり思ってたんだが……
「……光華姉さんが全く気付いてない辺り、兄さんの人格は紛れもなく本物の兄さんのものなのです。……なら、これ以上私から言う事もないのです」
「えぇ……」
もっとこう……何かないのか?
本当に何も気にならないの?
「……私からしたら、兄さんに対してそこまで興味がある訳でもないのです。……だから前世を思い出そうが、私からしたら特に……いや、もし前世の世界にある兵器について教えてくれるなら……」
「いや、兵器に関しては大差ないな。……パンジャンドラムすらこっちの世界に存在してると知って驚いたぐらいには全く同じレベルだ」
「……それは残念なのです……」
おい、俺の転生より兵器かよ……
本当に、影華は変わってるな……
「……まあ、詮索しないんならありがたいが……それを言うなら、俺も影華に対して聞きたい事があったんだよ」
「ん?……私は転生者じゃないのですよ?」
別にそれは聞いてない。
というか、ここまで濃い性格だと転生者かどうかなんて微々たる問題だ。
「そうじゃなくてだな。……実際のところ、秀光とカミラエルの事はどう思っているんだ?……俺としては、付き合う気もないのにあんな態度を取ってるのだとしたら兄として思うところがあるんだが……」
以前、影華は秀光に対してはアプローチ次第では付き合うと言っていたし、俺もそれを信じていた。
しかし、今の影華はカミラエルを交えた三角関係を楽しんでいる様に見える。
本当に、その気はあるのか?
そう思っての質問だったのだが……
「……分かっているのです。……玩具にしてる以上、ちゃんと責任は取るのです……」
「お、おう……」
真面目な顔で責任を取ると返して来た影華を見て、俺は何も言えなくなった。
「ただ、今はまだその時じゃないのです。……秀光は未だに私を満足させるアプローチを見せてないのですし、カミラエルに関しても同様なのです」
「……でも、責任は取るんだな……」
「ま、2人で遊んでる以上はそうするのです……」
「……そうか……」
結局、ここまで話したところで両者共に話のネタがなくなり、解散する事になった。
「……じゃあ、また明日なのです」
「ああ、またな」
今日、影華に転生者だとバラした事が吉と出るか凶と出るかは俺にも分からない。
……ただ、叶う事ならこの平和がいつまでも続いて欲しいと思わずには居られなかった……
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(俯瞰視点)
2人が会話していた場所から少し離れた物陰にて……
「おっと……何とかバレずに聞けたぜ、ベイビ~」
そこでは金村 冥堂が、気配を消して聞き耳を立てていた。
「……面倒な世界だってのに、転生者までいやがるとかマジかよ……俺っち、何でラビリンス絡みでもない事案でこんな危ねぇ綱渡りしてんだ?……ベイビ~」
冥堂はそう愚痴を吐くと、静かに天を仰いだ。
「それに……あの嬢ちゃんはもしかしなくても俺っちに気付いてたんじゃねぇか?……いや、そうは思いたくねぇが……どっちなんだい、ベイビ~」
冥堂は天を仰いだまま両目を手で覆うと、そう絞り出す様に呟いた。
……そんな闇に紛れたロックンローラーは、それからしばらく後にこの場を去った。
後に残ったのは、ただの静寂だけだった……
ご読了ありがとうございます。
影華にしてみれば、実の兄が転生者だろうがどうでも良いって感じです。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。




