22.カオスとロックとピエロ
取り敢えず、ここで1度更新を一区切りにします。
(禍津 明視点)
スタジアムへ転送された俺達が見た光景は、ある意味では想像通りだった。
何せ……
「【兵器錬成】、【浮遊式パンジャンドラム】、【凶暴式パンジャンドラム】、【灼熱式パンジャンドラム】、そして【クラスター式パンジャンドラム】なのです!」
「gruuuuuuuuuuuuuuu!」
影華が多種多様なパンジャンドラムを錬成し……
「お前達、今度こそあれ等を爆発する前に破壊するザマス!」
「「「「「「はい、お嬢様!」」」」」」
ーバサッ!バサッ!バサッ!
カミラエルが部下のメイド達にパンジャンドラムの破壊を命じ、それに応じたメイド達が背中から蝙蝠の羽を出して飛び回り……
「「「「「「「「え、えぇ……」」」」」」」」
他の女子生徒達がそれを呆然とした表情で見つめるという、なかなかカオスな状況になっていたからだ。
と、呆然とした表情になっていた集団から2人こちらにやって来て……
「お兄様!……この状況を何とか出来ず、申し訳ありませんでした!」
「いや、あれはどうしようもないっすよ……」
その2人とは、光華と写美だった。
「写美の言う通りだ。……禍津家で影華をどうこう出来た試しなんて1度もないし、カミラエルまで協力してるならもうお手上げだっただろ……」
「……お兄様……」
「明、ボクが言うのもアレだけど……影華ちゃんってそんなにヤバい感じだったの?」
「そうだな。……ある意味、禍津家最強の女だ」
影華には勝てない。
物理面でも、精神面でもだ。
「……何か、影華さんの顔……活力が漲ってるね……僕ですら、あんな顔は見た事ないのに……」
ードカァァァァァン!
「秀光……お、俺からはドンマイとしか……」
「秀光、ボクもかな……」
秀光は影華にアタックを続けているが、未だに進展はない。
一応、影華があそこまで気に入った人物は男女問わずそう居ないので、脈はある筈なんだが……
ん?
何か、カミラエルがこっちを見たぞ?
「……フッ」
カミラエルはこちら……というか秀光を見て、軽く鼻で笑った。
「へ、へぇ~……カミラエルさんは影華さんに気に入られて浮わついているみたいだね……こうなったら、僕もパンジャンドラムの的に……」
「辞めろ!……おい影華、いい加減にしろ!」
「ん?……って、兄さん達!?……何で居るのです?」
どうも影華はこちらに気付いていなかったらしく、俺達を見て驚いていた。
「そんなの、お前達が場をカオスな事にしてるって聞いたからだ!……いくら何でも、2人だけで盛り上がり過ぎだ!」
「あっ……ごめんなのです」
一見すると大人しく謝罪した様に見えるが、このマイペース兵器オタクがそんな簡単に折れる訳がない。
確実に、反省したふりだろう。
「……まあ良いザマス。……充分訓練にはなったザマスから、私も大人しくメイド達を撤退させるザマス」
「……せめて建前だけでも謝れないのか……」
カミラエルは、自分の立場が分かってないのか?
それとも、分かった上でやってるのか?
「それよりも!……秀光とか言ったザマスか?……お前が影華との関係を進められなかったのは、影華の趣味を理解してなかったからザマスよ!」
「そ、そうかもしれないね。……でも、それなら僕だって今後はパンジャンドラムの的にもなるさ!」
「え、本当なのです!?……実は、秀光先輩に的になって欲しいパンジャンドラムがあるのですが……」
「なっ!?……わ、私の役割を取らないで欲しいザマス!」
「いやいや、僕はとってないよ?……あくまでも、的が増えただけさ」
ーバチバチバチバチ……
み、見える……
秀光とカミラエルの間に火花が飛び散っているのが鮮明に……
「……ふふ、新しい玩具ゲットなのです!」
影華は影華で全部分かった上で2人の対立を煽ってやがるし、もう滅茶苦茶だな……
「……光華、アヤノ、思いっきり甘えても良いか?……現実逃避がしたい……」
「お兄様!?……わ、私で良ければ……」
「ボクで良いなら……」
「……あ~もう!……余計に収拾がつかなくなった気がするっすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ~!」
結局、場は余計にカオスな事になった。
まあ、この後時間経過と共に事態は収拾したのだが、今後もこういう事があると思うと憂鬱になる。
……まあ、俺は俺で光華とアヤノの胸に顔を挟んで貰っているので、人の事は言えないのだが……
「……本当にラヴィ校長も、何でカミラエルを受け入れたんだか……」
俺が考えた程度で分かる疑問ではないとはいえ、カミラエルの編入は本当に不思議だった。
……何か裏でもあるのか?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ラヴィ・リンスゥ視点)
「ふぅ……何というか、色んな人に謝る必要が出来てしまったのじゃ……」
……ワシは校長室でそう呟いたのじゃ。
いや、確かにカミラエルの編入は色々と混乱を招いたが、アレを味方に引き入れる事に比べれば……
と、そんなタイミングだった。
「へい、ベイビ~。……何か色々とゴチャついてたみてぇだが、何とかなったみてぇだなぁ」
「……冥堂か……」
突然現れた人物は、ワシとしては1番会いたくなかった味方だったのじゃ。
白と黒のツートーンカラーが特徴的なツンツン頭、大きな髑髏が描かれた黒の半袖Tシャツ、破れまくった黒のダメージジーンズ、腕に付けまくった銀色のブレスレット、耳に付けまくった銀色のピアス、そして極めつけに顔にペイントされたデスメタル風メイクと、背中にしょった黒いエレキギター。
そんな全体的にデスメタル風バンドマンらしき見た目をしたこの男は、金村 冥堂という者じゃった。
「……ったく、今回も問題はなさそうだが、やけにキナ臭い事に巻き込まれてんなぁ、ベイビ~!」
「問題ない事は……いや、お主のいう問題ないとは、ワシが未だに人間の味方をし続けておる事じゃったな。……それで、他のラビリンスの状況はどうなっておる?」
この冥堂という男は、ワシの様な存在……ラビリンスと呼ばれる迷宮発生装置をどうにかするために、数多の平行世界を飛び回っておる……らしいのじゃ。
「ん?……ま、ぼちぼちって感じだなぁ。……風斗の姉貴も面倒な世界を当てちまったみてぇで四苦八苦してやがるし……」
「ふむ……」
「どうもその世界、縄文時代より前にラビリンスが降臨したせいで情報が皆無な上、どういう訳か地球全土にダンジョンが発生してやがったらしくてなぁ……流石の姉貴も困ったちゃんだったらしいぜ、ベイビ~!」
「……地球全土、とは凄いのじゃ……」
ワシなんて、学校の敷地が限界じゃというのに……
「ま、それで姉貴もしばらくは帰って来れねぇらしいから、当分は新規のラビリンスは見つからねぇだろって訳よ。……だからまあ、俺っちもしばらくは好きに過ごそうと思ってたんだが……よりにもよって、この世界でしばらくお前の手伝いする羽目になっちまったぜ、ベイビ~!」
「……何がどうなってそうなったのじゃ……」
「知らねぇよ!……親父もお袋も、俺っちじゃ何考えてんのか分からねぇし……」
「……だとしても、困ったのう……」
冥堂を近くに置いておくのもアレじゃし、対処に困るわい……
……さてさて、本当にどうしたものかのう……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(俯瞰視点)
「ハァ……まさか"No.9"が抜けるとは思わなかったでヤンス……絶対、殺られる最弱枠だと思ってたんでヤンスが……敵に回ると厄介でヤンスね……」
人気のない路地裏……
そこで、ソンブレロを被り道化の仮面で顔を隠した怪人はそう呟いた。
と、その時……
「ぐへへ……売人さん、今回もくれや」
「金は有るでヤンスか?」
「勿論。……ちょいとひったくった金がたんまり有るぜ?」
浮浪者の女がやって来て、道化に何かを要求した。
「ふむふむ……充分でヤンスね。……今回の分でヤンス」
ースッ……
「ぐへへ……ありがたいなぁ……まさか、こんな安値で麻薬が貰えるなんてなぁ……」
そう言って、浮浪者の女は何処かへと去って行った。
そして、残された道化は口を開く。
「……麻薬を売ってるなんて、穏健派の奴等にバレたら除名の上で粛清されるでヤンスが……ま、リターンも多いし何よりあっしを殺すなんて無理でヤンスから関係ないでヤンスね」
そう楽観的に呟いた道化は、やがて路地裏の奥へと消えて行った。
……この道化が起こす麻薬騒動はやがて国立異能力専門高校をも巻き込む事になるのだが、この時は誰も知らなかった……
ご読了ありがとうございます。
金村一族の者、登場!
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。