21.編入生は吸血女王
影華は明には無関心ですが、一応は実の兄なので何かあったら助けます。
……もっとも、優先順位は明<兵器ですが……
(前話から3日後、俯瞰視点)
国立異能力専門高校の外にある、とあるカフェの窓際席にて……
「さて、今日はよく来てくれたザマスね」
「……ったく、オレ達が何でカミラエルの馬鹿に呼ばれなくちゃなんねぇんだァ?」
「まあまあ、落ち着くのじゃ」
そこにはカミラエル、武音子、そしてラヴィ分身体の3人が居た。
「いや~、まさか3日も潰す事になるとは思わなかったザマス」
「……何か面倒事の匂いがすんだがァ?」
「そうザマスよ?……何せ、"異能の夜明け"に辞表を叩き付けたんザマスから」
「ハァ!?」
「ふぁっ!?」
カミラエルが語ったのは、"異能の夜明け"に辞表を叩き付けたという内容だった。
だが、衝撃はまだ続く。
「……とはいえ、一応"No.0"、"No.1"、"No.2"、"No.6"の4人は快く受け入れてくれたザマス。……問題だったのは"No.4"、"No.5"、"No.7"、"No.8"が反対して来た事ザマスかね。……"No.0"のお陰で組織は抜けられたザマスけど、絶対に反対派……もとい、あの過激派連中は何か仕掛けて来るザマスよ」
「そりゃご愁傷様だなァ。……で、それがどうしたァ?」
「まだ分からないザマス?……なら、これを見るザマス」
「あァ?……ってお前、正気かァ!?」
カミラエルが出した書類を見て、武音子は驚いた。
だが、カミラエルは止まらない。
「……あの騒動で世間から防犯体制を叩かれている貴女方には、これはとてつもなく魅力的な提案ザマスよね?……勿論、世間からの批判はどうにもならないザマスけど、実際の防犯体制は少しマシになる筈ザマスよ?」
「くっ……」
「ハァ……分かったのじゃ……」
……カミラエルは口角を上げ、笑みを浮かべた。
武音子が苦虫を噛んだ様な表情をし、ラヴィが匙を投げた書類は何と……カミラエルの名が書かれた、国立異能力専門高校の願書だった……
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(それから4日後、禍津 影華視点)
「……というやり取りが、つい4日前になされたとの事で……編入生です……」
「紹介された編入生の、カミラエル・レッドブラッドという者ザマス!……前職は"異能の夜明け"で幹部に就いてて、"No.9"と呼ばれてたザマス!」
……カミラエルの襲来から1週間後、カミラエルはそう言って私のクラスに編入して来たのです……
なお、カミラエルの見た目は私達よりも明らかに年下という感じで、それで高校の制服を着てるもんだからミスマッチ感が激しいのです。
「「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」」
当然、クラスの女子生徒達は全員が黙り込んだのです。
かく言う私も、驚きのあまり口をあんぐりと開けてたのです。
でも、そんな中で1人言葉を発した者が居て……
「……そ、その言葉が本当なら、仮に"異能の夜明け"が攻めて来ても、守ってくれるんすよね?」
言葉を発したのは、写美だったのです。
「勿論ザマス!……後、アジトにしてた廃墟がそろそろヤバそうだったザマスから、メイド達も全員こっちに引っ越して来たザマス!」
「……本当に信用して良いんすか?……後で内部から崩壊させたりなんて……」
「そんな事したら影華に嫌われるのは分かってるザマスから、やらないザマスよ!」
「……影華さん、何がどうなってるんすか?」
すぅ……
写美、覚悟して聞くのです。
「……どうも、カミラエルは私にガチ恋してる様なのです……」
「ふぁっ!?……男性じゃない上に、秀光先輩くらいにしか需要がない影華さんに惚れたんすか!?」
「喧嘩したいなら買うのですよ?」
「だって事実じゃないっすか!」
ここで簡単に考えを曲げない辺り、評価して良いんだか悪いんだか分からないのです……
でも、圧力に屈しないって点は高評価なのです。
「あっ……えっと……カミラエルさん、紹介は終わりましたか?」
……あ。
担任の宮本先生がたじたじになってるのです。
まあ、こんな状態なのでそうなってもおかしくないのですが……
「お前……確か宮本って言ったザマスよね?」
「は、はい!」
「何か反応がいちいちアイシャに似てるザマスね……って、それはともかく……1時限目はLHRとして、ちょっと広い場所でメイド達も呼んで影華とドンパチしたいんザマスが……」
いや、何を提案してるのです!?
「ふぁっ!?……ちょ、ちょっとラヴィ校長に確認をとって来ます!」
そうして宮本先生はラヴィ校長に確認をとりに行ったのです。
そして数分後……
「どうだったザマス?」
「は、はい……す、スタジアムの使用許可が下りました……」
何と、スタジアムの使用許可が下りたのです……
これは、これなら……
「カミラエル、何をしたいって希望はあるのです?」
「う~ん……やはり、"No.4"の兵器が現時点で考えられる1番の脅威ザマスから、その訓練になる様な兵器を大量に出して欲しいザマスね~」
「分かったのです!……それならパンジャンカーニバルの始まりなのです!」
初めて会った時はヤバくて関わり合いたくないと思っていたのですが……これは結構楽しいのです!
「影華、いったい何をするつもりなんですか?」
「光華姉さんは見てると良いのです。……そしてよく覚えておくのです、パンジャンは爆発だと!」
「爆発ザマス!」
「……これ、お兄様や秀光先輩に報告する案件な気がします……」
「奇遇っすね。……アタイもっす」
……やっぱり、カミラエルとはこういう事が出来て良いのです。
そうして私達は、スタジアムへと転送されるのでした……
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(数十分後、禍津 明視点)
俺がアヤノと付き合い始めてから1週間が経過した。
その間、アヤノとはキスまでしか出来ていなかった。
「も~、明はヘタレだよね~。……ま、同性でヤる事なんてないし、ヘタレてもおかしくないけど……」
「……頼むから、走ってる時にそういう事は言わないでくれ……」
俺達は今、1時限目の体育でグラウンドを走っていた。
勿論、担当教師は武音子先生である。
「あァ~……本当に大丈夫かァ?」
「……やっぱり、気にしてるみたいだよね……」
「だな。……心なしか秀光もソワソワしてるし、ありゃヤバそうだ」
「影華さん……僕が居なくても本当に大丈夫なのかい?……いや、ここは信じてあげるのもまた……」
武音子先生と秀光がこうなっているのには理由がある。
朝のHRで聞いたのだが、どうもあのカミラエルとかいう奴が1年A組に編入して来たらしいのだ。
……しかも、影華に惚れてるらしい。
そうなれば、秀光としても黙ってはいられない。
そう思っていると……
ープルルルル……プルルルル……
「……ん?……何だァ?」
ーガチャ
武音子先生の携帯が鳴った。
「な、何かあったのかな?」
「さあな」
「……あァ?……そりゃ本当かァ!?」
電話に出た武音子先生は、驚きの声を上げた。
そして……
「ん?……何かこっちに来たよ?」
「おい!……明、秀光、彩ノ進!……ちょっとスタジアムの方でメイドとパンジャンドラムが乱舞してるとかいう頭のおかしい報告が上がって来やがったから、ちょっと見て来てくれねぇかァ!」
「「「へ?」」」
……うん。
確実にカミラエルと影華がやらかしてるのは分かった。
そうして俺達はスタジアムへと転送される。
……そこで、風邪の時に見る夢の様な光景に出くわす予感を胸に……
ご読了ありがとうございます。
影華は真面目な兵器を使っている時は真面目なんですが、パンジャンドラム含むネタ兵器に走ると途端に遊び出します。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。