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第9話

ふと、見上げた向かいの道を歩く人物が誰だかはすぐに分かった。


こんな距離からでも、うしろ姿でもすぐに片山とわかってしまう事はやっぱり好きだからとも思うし、時々すごくみじめでもある。


隣にいるのはS学園の彼女だ。


あたしはとっさに近くの看板に隠れた。

腕を組んだ二人。彼女がやや寄り添うような形だ。


彼女を見たのはこれが初めてだった。

遠くからでもかわいい感じの子だと思った。

背の高い片山と並んで頭ひとつ分くらい低い彼女も女の子の中では背が高い方かもしれない。



二人は慣れたそぶりでラブホテルに入っていく。

制服だとか、誰かに見られるなんて事は少しもかまわない様子で、堂々としていた。




信じられない。さっきまで階段であたしとキスしていたクセに。


あたしに触れていたその手で彼女を抱けるの―――?



事実として知っていても実際に見るのとは訳が違う。

あたしは自分の中で嫉妬というものが激しく渦巻くのを感じた。







今日は朝から雨が降っている。


昨日の光景がどうしても頭から離れなくて、夜はよく眠れなかった。

メールで東階段に彼を呼び出し、あたしは一人で屋上に立っている。

冷たいしずくが身体にしみこんでいくのを感じる。

片山が傘を差し出した、あの日と同じ雨で。



「内田!?」「何してんだよ!?」片山が走り寄ってきた。

不可解なあたしの行動に戸惑っている様子だ。

普段は見せない表情だった。もっと見ていたいと思うような顔だった。


あたしは片山の体に勢いよくぶつかった。

そして言った。「もういいでしょ。あたしのモノになってよ。」


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