第10話
ホテルのドアを、勢いよく閉めるとあたしは雨に濡れたくちびるを夢中で押し付けた。
角度を変えて何度もキスをし、大き過ぎるくらいに口を開いて片山の舌を待った。
ベットに移動してからは彼に任せた。
片山があたしの服を脱がせ肌に触れると、冷たい肌にみるみる熱が広がってきて、他の事は何も考えられなくなってしまう。
文字通りされるがままにするしかなかった。
窓を打ち付ける激しい雨音が絶えず部屋に響いていて、それは今のあたしの心境にも似たところがあって、そのせいか少しだけ心を落ち着かせた。
この時ばかりは雨が降っていて良かったと思った。
片山の大きくうねった肩ごしに天井を見上げていたあたしは、彼の目を見ることができなかった。怖かったのかもしれない。
こんなに向かいあっているのに、目と目で話せる距離にいるのに、今、体の一部で初めて繋がっているというのにそれがひどく寂しい事に思えてきた。
たまらなくなってわたしは目を閉じる。
雨音を聞きながら、揺れている体が自分とはどんどん離れていってしまうように感じて。
片山があたしの中に吐き出すその瞬間は、痛みとか後悔とかとにかくいろんなものがぐちゃぐちゃになって襲ってきて、声を出さずに泣いた。
片山は荒い息を落ちつけた後、あたしの頭をポンポンと二回なでた。そして一言、「ごめん」と言った。
そのごめんがどんな意味合いのごめんなのか、その後はあたしの目を見ようとしなかった。
あたしは自分の中で何かが小さく音をたてて崩れるのを感じた。




