最終話
「あたしも、泣けばよかった?」
初めてだったのにって泣けばよかった?
傷つけるだけならそのままにしてくれたらよかった。
ごめんなんて謝ってほしくなかった。
「泣けば。俺には全然いい女に見えないから」
気がつくと柳がうしろに立っていた。
我慢できなかった。その必要もなかった。
すでに崩れていた塔は、せき止める力を失って次々とあふれてくるようだった。
あたしは存分に泣いた。
片山の前では決して見せるかと思っていた泣き顔を、柳の前では惜し気もなくさらして、それこそ気が狂ったかと思われる程声を張り上げて泣いた。
好きだったよ。本当にすきだった。
でも体の関係になっちゃいけなかったんだ。
いつかはそれで良かったと思える日がくるのかな?
どれくらい泣いたか、しわしわになったシャツの袖が伸びてきてあたしの顔をゴシゴシと乱暴に拭った。
かすかなせっけんの、優しい香りがして、落ち着きを取り戻した心に余裕をもたせた。
この人はなんでいつもあたしに優しくしてくれるんだろう。
柳の本心を探ってみようと、その目をじっと見つめてみる。
薄茶色の髪の毛が夕日のオレンジに透けてきれいだと思った。
その下からのぞく大きくて切れ長の目が、哀れみと少しの非難を含み、だけども優しい色をしてそこにあった。
もしかしてあたしの事好きなのかな?
一瞬そんなうぬぼれが浮かんだけど、やっぱり違う違うと打ち消した。
彼はそんなあたしの胸中を察したのか、屈託なく笑って「ブス」と言った。
[完]
未熟な作品ですが、最後まで読んでくださってありがとうございます!!
感想などいただけたら今後のはげみになります☆




