↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の花嫁〜迷い込んだ精霊の国は、男女比100対1の逆ハーレム国でした〜  作者: 夜風ほたる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/13

第五話

評価、ブックマーク、感想、レビュー、リアクションをいただけると執筆の励みになります!

どうか完結まで応援をよろしくお願い致します!



 レシアーノが仮泊まりしている部屋まで戻ると、朝食が乗っていたお皿は片付けられていて、テーブルにはティーセットが準備されていた。

 ティーポットの中身からは湯気が漏れていて、置かれてから時間は経っていなかった。

 リブラミアはレシアーノをソファーに押し倒し、その上に覆い被さった。

 急な展開に体を固くする。

 そんな様子を気にも留めず、押し倒した体勢のまま顔を接近させてきた。

 彼は右手でレシアーノの頬に手を添えて視線を合わせると、真剣な顔をして言った。


「ねぇ、レシアーノ。貴方は私を選んでくれるよね?」

「……選ぶ?」

「私と結婚してくれるよね?」

「それは……」


 すぐに肯定しなかったのが気に入らなかったのか、彼はレシアーノの肩口に顔を埋めて無言になった。

 動きを止めた彼を静かに見守っていると、消え入りそうに小さな声が耳元に届いた。


「口付けは駄目でもこれならいいよね…」


 これとは?と聞き返す間もなく、首筋にぬるりとしたものが触れた。

 数秒経ってから、それは彼の舌だと理解して一気に顔が赤くなる。

 レシアーノは動揺と恥ずかしさで言葉を失っていた。

 一度だけ舌の感触と異なる唇が触れる感触がした。

 その瞬間だけチクリと痛みが走り、体が強張る。


「リブラミア様…っ?いま、何を?」

「ふふっ…私の印をつけただけだ。レシアーノが口付けを許してくれるまで、毎日つけるよ」

「え!!毎日この状況になるのですか!?」

「…逃がさないよ?」


 真っ赤に沸騰しすぎたレシアーノの顔からは、フシュ〜と音がして意識が遠のいていった。


「レシアーノ?大丈夫ですか!?」


 耳に届く声が遠くなり、意識はそこで途切れた。



***



 目を覚ました時にはベッドで寝ていて、リブラミア様に『やりすぎました、ごめんなさい』と謝られた。

 『これから参加しなければならない会議があるから、しばらく部屋で待っていて』と言って彼は部屋を出ていった。

 部屋に残されたレシアーノは、大人しくベッドの上で借りた本を読んでいた。

 ほのぼのとした内容の小説に、ふふっと笑みを溢し、ゆったりとした時間を過ごしていた。


 そこに、


 ーーコンコンッ…


 扉からノックの音が響いた。


 本をめくる手を止めて扉に視線を向ける。

 ノック音の後には誰の声も聞こえず、シーンと静まり返っていた。

 気のせいかと思いまた本を読み始めると、再度ノック音が聞こえてきた。

 不審に思いドアの前まで警戒しながら近づくと、扉が急に開いた。

 そこに立っていたのは、昨日ぶつかってしまった長身の男性だった。


「…………入るぞ」


 そう言うと、躊躇いなく部屋の中へと入って来た。

 突然の訪問者に警戒を強める。

 しかし、昨夜ぶつかってしまった後ろめたさから、追い返すことまでは出来なかった。

 怒られることを想像して黙って立っていたレシアーノは、予想外に優しい男性の表情に自然と警戒心を緩めた。 彼はレシアーノの手を引き近くのソファーに座らせると、横に彼も座った。


「あなたは昨日の…、どうしてここに?」

「………俺はファーゼスだ。お前の仮婚約者になった」

「か、仮婚約者?」

「…………そうだ」


 ファーゼスと名乗る男性は、無愛想な言葉とは真逆に柔らかい表情でこちらを見ていた。

 レシアーノの髪を一房手に取って、くるくると触る手つきも優しい。


「ファーゼス様………」

「なんだ」


 独り言がぽつりと口から出て名前を呼んでいた。

 どこかで聞いたことがある名前……。

 というか……、

 それよりも……、

『仮婚約者になった』って言わなかった!?

 耳を疑う発言を聞いてしまい、脳内処理が追いついていなかった。

 そのせいで、名前について抱いた違和感を忘れた。


「わたしの仮婚約者様はリブラミア様のはずですが?」

「兄上はさっき、正式ではないと言っていた…」

「さっき…?」

「………お前を……呼び止めただろ?」


 わたし、誰かに呼び止められたっけ?


「えっと………」

「俺はお前の正式な仮婚約者だ…。母上にも言った」

「え!女王様にも!?正式って何をしたのですか!?」

「お前に……口付けしたが?」

「え?……あの時のく…ちづけが何か?」

「正式な婚約者はお互いの同意による口付け、正式な仮婚約者は一方の願いと口付けだ」


 つまり、


 正式な仮婚約 = 一方の同意+口付け

 正式な婚約 = 双方の同意+口付け

 正式な結婚 = 双方の同意+深い口付け


 ということかしら???


『同意』は何をもって決まるのかは不明だけど…。


 人間は届出とか書類が大切だけど、精霊は口付けが重要なのね!?

 リブラミア様が口付けしたがってたのって、これが理由だったりするの…?

 この状況はまずいんじゃ……

 必死に状況整理をしている間に、ファーゼスは元々胸元が大きく開いていた服を脱いで、上半身裸となっていた。

 突然視界に男性の上半身裸姿が映り、状況整理を放棄して慌てて声を出した。


「えっ、ちょっ!?ファーゼス様?」

「仮婚約の、印だ…」


 ファーゼスはそう言うと肩口を指差す。

 そこには紋章のようなものが浮かび上がっていた。


「………お前の紋章だと思う。正式な契約は、男側に紋章が浮かび上がる」

「すでに正式な仮婚約の契約が発生しているってことですか!?」

「そうだ。お前は………、俺が嫌いか?」

「嫌いではないです。まだファーゼス様をよく知らないですが」

「…………そうか」


 無愛想な言葉の後にふわりと笑った笑顔が見えた。

 不意打ちな微笑みにドキリと胸が高鳴った。

 彼はご機嫌になり、大きな体でぎゅっと抱き込んできた。

 それから、レシアーノの髪を梳きはじめた。

 なんだか大きな獣に懐かれたみたいだ。

 彼は悪い人では無いのは確かである。

 だけど、知らぬ間にファーゼス様と仮婚約が成立してしまっていたことには動揺が隠せない。

 そしてなによりリブラミア様よりも先に成立した。

 その事実に、背中に冷たい汗が流れた。


 この状況をリブラミア様が知ってしまったら…。


 その時、


 部屋の扉が開くのと同時に、今一番会いたくない人の声がした。


「レシアーノ、戻りました!誰も来てないでーーー」


 上機嫌で扉を開けたリブラミアは、ソファーに座るレシアーノと上半身裸のファーゼスの二人を見て絶句した。

 衝撃のあまり言葉を失った。

 石のように固まって動かなくなっていた。

 それから数十秒後にやっと我に返ったリブラミアは、全身から殺気を放ち出した。

 静まり返った部屋に不穏な空気だけが流れる。

 ファーゼスを睨みつけながら二人の前までやって来たリブラミアは、怒りに任せて怒鳴り散らした。


「ファーゼス!!お前、レシアーノに何をしている!」


 レシアーノからファーゼスを力任せに引き剥がし、床に叩きつけた。


「………………っ…」


 ファーゼスが痛みに顔を歪めた。

 怒りに我を忘れたリブラミアは、ファーゼスに畳み掛けるように怒鳴った。


「何をしていたと聞いているっ!!」

「…………正式な仮婚約を言いにきた」

「正式、な………?」


 想定していなかった言葉に疑問を口にしたリブラミアは、ファーゼスの肩に浮かび上がった紋章に目がいった。


「その紋章は……」

「レシアーノのだ」

「お前!私がいない間にレシアーノに口付けしたのか!?」

「…………………この紋章が事実だ」

「…………っ!!」


 リブラミアは怒りに身体中を震えさせて、ファーゼスからレシアーノに視線を移した。


「レシアーノ……、ファーゼスと口付けしたのですか?」

「あ、えっと、あれは事故というか、その」

「私には、口付けを許してくれなかったのに!ファーゼスには口付けさせたと言うことですか!?………赦さない!認めない!もう貴方の気持ちなんて関係ない!!今すぐ私のものにするっ!」


 何かに取り憑かれたかのように彼の表情は仄暗さが増していた。

 呪いかけるように言葉が吐き出され、強引にソファーに押し倒されていた。

 止める声は彼に届かず、荒々しく唇を奪われた。

 一度ではなく何十回も口付けた後、唇をこじ開けられてねっとりとした舌に口内を荒らされる。

 息を吸い込むことすら赦さないと、口を塞がれ続けていた。

 レシアーノは窒息する直前でリブラミアの肩を叩くと、漸く唇が離された。


「このまま既成事実でも作りましょうか。貴方が成人した日に、私のものになるように…」


 激しい口付けの後、リブラミアはそう言った。

 落ち着いた声とは裏腹に、発した言葉は物騒だった。

 彼の鋭い瞳が逃さないと、拒否は赦さないと言っていた。

 普段のリブラミアとかけ離れた彼の姿に、カタカタと体が震え出す。

 もう一度リブラミアに口を塞がれそうになった時、


 バンッ!!!!


 大きな音がした。


 それはリブラミアが吹き飛ばされて、壁にぶつかった音だった。


「……頭を冷やせ!……怯えてるだろっ」


 ファーゼスの怒りの籠った声が、部屋に響いた。

 リブラミアが吹き飛ばされた原因は、ファーゼスの魔法によるものだった。

 その証拠に、ファーゼスは片手をリブラミアに向けていた。

 リブラミアはゆらゆらと視点が定まらない瞳で、レシアーノを捉える。

 カタカタと震えるレシアーノが恐怖心を露わにしてリブラミアを見ていた。

 その姿を見て、リブラミアの血の気がサーッと引いた。

 みるみるうちに顔が青ざめていった。

 カタカタと震え続けるレシアーノ、青ざめて絶望と書かれた顔で動けなくなっているリブラミア。

 二人はお互いに見合ったまま、時間だけが過ぎていった。

 動けなかった二人のうち、先に行動を起こしたのはリブラミアだった。

 ふらふらと立ち上がり、何も言わず部屋を出ていった。

 出ていく彼を呼び止めることは出来なかった。

 未だに震えているレシアーノを、ファーゼスはそっと抱きしめた。


「兄上がすまない………昔からああなんだ」

「………昔から?」

「幼い頃、兄上のお気に入りのおもちゃに触れただけでも激怒された……」

「………ふふっ、そんなことで激怒されたんですか?」

「…………笑ったな」


 そう言ったファーゼスは優しい表情をしていた。

 どうやら心配してくれていたみたいだ。

 彼のたった一言で震えが止まっていた。


「心配してくださって、ありがとうございます」


 お礼を告げて微笑み返した。

 途端にファーゼスの顔は赤くなり、肩口に擦り寄るようにして顔を隠してしまった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。