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2-1:婚約の話が来たあの日 その1

 二年前、十四歳の私マーガレットは今夜の夕食は何かなと呑気に考えていた時だったと思う。、


「マーガレット、大事な話がある。お父さんの部屋まで来なさい」


 お父様から唐突に呼び出された。

 しかし、お父様は先程王城から帰ってきたばかり。

 お疲れだろうし一休みしてからでもいいのに、なんでまた急に?


 も、もしかして城で何かあった!?

 何か良くない事だったらどうしよう?

 できれば、晩餐会へのお誘いみたいな嬉しいお知らせだといいのだけど。


 不安と期待を胸に抱きながら、私は恐る恐るお父様の書斎へと向かい、部屋の扉をノックした。


「お父様、マーガレットです」

「一人だな? 部屋に入ったら扉を閉めなさい」


 私が書斎に入るとお父様は椅子には座っておらず、落ち着かない様子で部屋の中を行ったり来たりしている感じだった。


「それで、お話というのは?」

「マーガレット、落ち着いて聞きなさい」


 さっきから落ち着いていないのはお父様の方である。

 けれど、お父様の只ならぬ様子を見た私は、余程何か重大な事があるのではないかという不安が高まり、更にお父様の気迫もあって思わず息を飲みこんだ。


「実は、婚約の話が来ているのだ」


 婚約?

 お母様が亡くなってから久しいし、お父様もしかして?


「お父様、再婚なさるのですか?」

「違うわッ! 我が愛する娘、マーガレットにだ」


 へ?

 婚約って早くない?

 あっ、でも、もっと小さい時から許婚(いいなづけ)の相手がいるってっ人もいたから、別に変じゃないのかな?


「そうですか」


 とりあえず、私からはこんな言葉しかでなかった。

 結婚とか以前に恋愛に興味が無さ過ぎるし、学校のクラスメイトにも「マーガレットは色気よりも食い気だね」って言われるし。

 今だって本当は婚約よりも今夜の夕食の方が気になるけれど、流石にそれはお父様に申し訳ないと思った。


「それで、ここから重要なのだが、相手が相手なのだ。きっと、聞いたら驚くぞ!」


 お父様は不安そうにしつつも勿体ぶる感じで私にそう言った。


 ああ、そっか。

 婚約だから相手もいるんだ。

 何か現実感無さ過ぎてピンとこないな。


「相手は何と、第二王子だ」


 王子様?

 学校の恋愛意識高い人たちが「王子様との結婚とか憧れるー」って言っていたし、無茶苦茶自慢できる相手だと思う。

 そうでなくても、国王様の息子なわけだから結婚したら国王様が義理のお父様になるって事だし、普通に凄いかも。


「そんな凄い人と本当に結婚できるのですか?」

「やはり、マーガレットもそう思うか。お父さんも国王様からいきなり『マーガレットさえ良ければ第二王子と婚約してやってくれないか?』と、さっき王城で言われたばかりで驚いているのだ。冗談だと思うのだが、言い出した相手が国王様だしな。だから、こうして急いで帰ってきてマーガレットに婚約の是非を今問うているのだ」


 だから、部屋で私と二人きりでの話だったのかな?

 国王様が戯れでお父様と私をからかっているだけかもしれないし、誰かが聞いて真に受けたら赤っ恥だし。


 でも、仮に話が本当ならば皆に自慢できる相手だし。

 それに、お父様が話を断らずに私のところにまで持ってきたって事は、少なくともお父様は賛成という事。

 お父様のため、ひいてはファーレネイド家の利になる話ならば。


「お父様、よろしいのではないですか?」

「おお、そうか。よし、では早速王城に行って国王様に伝えてくる。何、まあ単なる国王様の戯れならば、それに故意に乗ってあげるのも忠誠心。だから、話が本当かどうか分かるまでは二人だけの秘密だぞ」


 そう言って、さっき帰ってきたばかりのお父様は王城へと再び出かけてしまった。

 それにしても、国王様も悪い人。

 きっと、冗談だと知ってガッカリするお父様と私の姿を見たいだけだろうし、その時はちゃんと演技しないと。


 でも、今はそれよりも今夜の夕食。

 今日は魚の気分かな?

 そういえば、お父様は夕食までには帰って来られるのかしら?

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