1-1:出会いの日
この日、私マーガレット・ファーレネイドは十六歳にして婚約者である第二王子と初めて顔を合わせる事になる。
国中の貴族たちが集まり、王宮で行われる王国主催のパーティ。
毎年、貴族会議が始まる前日に開かれるもの。
そして、今年はその最中に国王様が息子の婚約者を集まった貴族たちに紹介したいとの事。
元より、出席者が家族を同伴させて交流するのが習わしがあるこのイベント。
貴族たちの社交の場となっており、昨年まではお兄様がお父様に同行していたけれど、婚約発表の件もあって今年は私が行く事に。
今、私はお父様であるファーレネイド伯爵の娘、すなわち伯爵令嬢として今この場にいる。
「あの第二王子が婚約?」
「ええ、何でも今日国王様が婚約者共々直々に紹介するとか」
「相手の家もよく引き受けたもの。国王様が強要して断れなかったのかしら?」
何やら噂されているけれど、別に無理やりだなんて事はない。
ただ単に、いきなり婚約の話が来たので受け入れただけ。
まあ、確かに第二王子は第一王子と比べて王位継承権では劣るし、周りの貴族たちも皆次の国王は第一王子だと推している。
そういう意味では、幾ら王子と言っても第二王子と結婚したところで得るものは無く、夫の位が無駄に高い故に結婚しても利を得られるどころか苦労するだけかもしれない。
しかし、それでも私もお父様も王家との繋がりができると喜んでいた。
だから、この機会を逃してはいけない。
そう思い、第二王子の妻として相応しくなるために私は痩せて美しくなった。
以前は丸々と太っていて私の事を馬鹿にする者もいたけれど、今は違う。
「やあやあ、皆の者よく集まってくれた。明日からは会議で忙しくなる。だから今日は存分に楽しんでくれ」
唐突に会場に現れた国王様が、扉を開けるやいなや気さくにそう皆に話しかけた。
会場にいる貴族たち全員がビクッとして一気に緊張が走る。
「ところで、今日は我が息子でもある第二王子の婚約者を、今この場で皆に紹介しようと思う」
国王様が二人の若い男を引き連れ、会場奥の一番偉い人が座る席へと移動するなりそう言った。
二人の男は私にとって初めて見る顔だけど、王と同列の席に座ったので第一王子と第二王子の二人なのではと察しがつく。
男の一人はスラっとしたいかにも好青年という感じ。
そして、もう一人の男は丸々と太っていて若干だらしのない顔。
見た感じの年齢からして細い方が第一王子、太い方が第二王子だと思う。
つまり、あの太っちょが私の婚約者?
でも、これから正式に紹介するって王様も言っているし、今判断するのはまだ早いか。
これで実は二人共全然関係ない人だったら考えただけ損になるし。
「ふむ、どうやらまだ来ていないようだな。ファーレネイド伯爵、娘のマーガレットはどうした?」
国王様は、私の隣にいるお父様に向かってそう言った。
私が目の前にいるのにもかかわらず。
でもまあ、無理も無いか。
だって、私は以前と比べて痩せてこんなにも美しくなったのですから!
私は、痩せるまでの日々を思い出しながら改めて自分が見違える程の姿になっている事を誇らしく思う。
「(ひそひそ)第二王子と婚約したのって、あのファーレネイド家の令嬢?」
「(ひそひそ)もしかして、逃げ出したのか? まあ、アレじゃあなあ」
周りがざわつき始め、国王様も困惑の表情を浮かべている。
まったく、誰が逃げ出すものですか。
むしろ、ドンと来いです。
「えっ、いや陛下。マーガレットならばここに」
「はあ?」
お父様が国王様に向かってそう言うも、王様は納得しない様子。
やっぱり、ここは私自らが名乗った方がいいかな?
私は、一歩前に出た状態で足の膝を軽く曲げつつげつつスカートの裾を軽く持ち上げ、そしてこう挨拶した。
「む、何だ貴様は? 見ない顔だな」
「陛下、本日はお日柄も良く。私が陛下がお探しのマーガレット・ファーレネイドで御座います」




