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婚約破棄された伯爵令嬢が、王女の侍女になって王宮の食事改革を始めました  作者: 絵宮 芳緒
第十章 新たな立場

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第四話 母の微笑み

応接室の空気が、ゆっくりとほどけていく。


伯爵の言葉によって、


すべてが決まった後の静けさ。


その時だった。


「……ずいぶんと、しっかりした方ね」


柔らかな声が、扉の向こうから響いた。


振り向く。


そこに立っていたのは――


リディアの母だった。


穏やかな微笑みを浮かべ、


静かに室内へ入ってくる。


「お母様……」


リディアが驚いたように呟く。


母は軽く頷いた。


「ええ、少し前から」


どうやら、話は聞いていたらしい。


伯爵は特に咎める様子もない。


むしろ当然のように受け入れている。


母はカイルの前で足を止めた。


そして、静かに見つめる。


「あなたが、カイル様ね」


穏やかだが、


どこか鋭さもある視線。


カイルは一礼する。


「ヴァルディーク公爵家のカイルでございます」


母は、ふっと微笑んだ。


「ええ、分かっているわ」


一歩、近づく。


そのまま、やわらかく言った。


「リディアを選んでくださって、ありがとうございます」


その言葉に、


リディアが目を見開く。


「お母様……」


だが母は、ちらりと娘を見るだけで、


すぐにカイルへ視線を戻した。


「この子は」


少しだけ、いたずらっぽく微笑む。


「見た目よりも、ずっと頑固ですから」


「……っ」


リディアの頬が一気に赤くなる。


「お母様、それは……」


思わず抗議するが、


母は気にしない。


カイルは、ほんのわずかに目を細めた。


「存じております」


その一言。


リディアがさらに言葉を失う。


母はくすりと笑った。


「でしょうね」


そして――


少しだけ真剣な表情になる。


「大切にしてやってください」


静かな言葉。


だが、その中に込められた想いは深い。


カイルは迷わず答える。


「必ず」


短く、確かに。


母は満足そうに頷いた。


「なら、安心ね」


そう言って、少しだけ距離を取る。


空気が、やわらかく変わる。


その中で――


リディアは、そっと息をついた。


胸の奥に、温かなものが広がっていく。


家族に認められた。


その実感が、静かに満ちていく。


その時。


カイルが、そっと視線を向けた。


「……リディア嬢」


呼ばれる。


顔を上げる。


視線が合う。


その瞬間――


ほんのわずかに、


二人の間の空気が変わる。


周囲がいても、関係ない。


静かに。


だが、確かに。


繋がっている。


リディアは、小さく微笑んだ。


「……はい」


その声は、もう揺れていない。


母はその様子を見て、


何も言わずに微笑んだ。


(ああ、これは)


心の中で、そっと思う。


(もう、大丈夫ね)


こうして――


リディアは、


家族に見守られながら、


新しい未来へと歩き出していった。

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