第四話 余裕の見物人
同じ室内。
話はすでにまとまりつつあった。
アルヴェルン伯爵は静かに立ち、
レオンもまた、その隣で姿勢を崩さない。
王と宰相は、短い言葉を交わしながら
最終的な確認を進めている。
その中で――
一人だけ、少し離れた位置で様子を眺めている者がいた。
王弟アルベルトである。
腕を軽く組み、
背もたれにわずかに体を預ける。
緊張も、焦りもない。
完全に“余裕の側”の人間だった。
(……やはりな)
内心で、小さく呟く。
血の問題。
魔力の均衡。
王家としての判断。
すべては理にかなっている。
だが――
それ以上に。
(あの二人)
思い出す。
無意識に重なった手。
自然に縮まる距離。
拒むどころか、引き寄せられるような空気。
「……決まっている」
ほんの小さく、口の中で転がす。
誰にも聞こえない声。
だが、その確信は揺るがない。
理屈ではない。
あれは――
すでに成立している関係だ。
視線をわずかに横へ流す。
皇太子レオナルトと目が合う。
一瞬だけ。
言葉は交わさない。
だが――
互いに理解していた。
レオナルトが、ほんのわずかに口元を緩める。
アルベルトは、肩をすくめた。
(競うまでもないか)
低く、内心で笑う。
奪うつもりもない。
焦る必要もない。
すでに結末は見えている。
ならば――
「……見物といこう」
小さく呟く。
その声には、わずかな愉しみが混じっていた。
どこまで踏み込むか。
どう掴みにいくか。
若い公爵子息の選択を――
ただ、静かに見届ける。
それが、今の役目だった。
王弟アルベルトは、目を細める。
その瞳には、余裕と確信、
そしてほんのわずかな期待が宿っていた。




