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婚約破棄された伯爵令嬢が、王女の侍女になって王宮の食事改革を始めました  作者: 絵宮 芳緒
第九章 王家の判断

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第三話 呼び出された者たち

王宮の一室。


静かな空気の中、二人の男が並んで立っていた。


アルヴェルン伯爵。


そして、その息子――レオン。


前回の呼び出しから、まだ日も経っていない。


攫われた一件。


その説明と対応。


すでに一度、王弟と顔を合わせている。


だからこそ――


今回は別の意味を持っていた。


「……来たか」


低い声。


王弟アルベルトが、すでに席についていた。


伯爵とレオンは同時に一礼する。


「王弟殿下」


アルベルトは軽く頷くだけだった。


座るようには言わない。


それが、この場の重さを示している。


「状況は理解しているな」


前置きのない言葉。


確認ではない。


前提の共有。


伯爵は静かに答える。


「はい」


短く、無駄のない返答。


レオンもまた、表情を引き締めていた。


アルベルトは一拍置く。


そして――


「では、結論を伝える」


その一言で、空気が変わる。


レオンの背筋が、さらに伸びた。


伯爵の視線が、わずかに鋭くなる。


「アルヴェルン伯爵令嬢リディア嬢は」


淡々と告げる。


「王家の保護下に置く」


その言葉に、レオンの拳がわずかに握られる。


だが、何も言わない。


続く言葉を待つ。


アルベルトはその様子を見て、わずかに目を細めた。


「そして」


一拍。


「婚姻の話が進む」


その瞬間。


空気が、静かに張り詰めた。


レオンの呼吸が止まる。


伯爵は動じない。


ただ、静かに問う。


「……お相手は」


アルベルトは、ほんのわずかに口元を歪めた。


「分かっているだろう」


名は出さない。


だが、それで十分だった。


伯爵はゆっくりと息を吐く。


「……ヴァルディーク公爵家」


確認するように言う。


アルベルトは否定しない。


それが答えだった。


レオンの胸が強く鳴る。


思い浮かぶのは、あの男。


そして――


姉の、あの表情。


その時。


アルベルトの視線が、静かにレオンへ向いた。


「お前もだ」


短く告げる。


レオンが一瞬、息を呑む。


「……俺も、ですか」


アルベルトは淡々と頷いた。


「植物に加え、光を帯びる」


「王家に近い発現だ」


その言葉に、空気がさらに張り詰める。


伯爵は目を伏せる。


すでに、覚悟はしていた。


だが――


改めて告げられると、その意味は重い。


アルベルトは続ける。


「ゆえに」


「両名とも、保護対象とする」


明確な宣言だった。


レオンはゆっくりと息を吐く。


理解する。


これは――


守られると同時に、縛られることでもある。


アルベルトは、その変化を見逃さなかった。


「異論はあるか」


静かな問い。


だが、その実、拒否は許されない。


伯爵は一瞬だけ目を閉じる。


そして、開いた。


「……ございません」


低く、はっきりと答える。


だが――


「ただし」


一言、添える。


アルベルトの視線が動く。


「娘の意思を、最優先に」


静かな、しかし譲らぬ声。


その言葉に、レオンもわずかに頷いた。


アルベルトはそれを見て――


ふっと、笑った。


ほんのわずかに。


「当然だ」


短く答える。


その声には、どこか余裕があった。


まるで――


最初から、その答えを知っているかのように。


こうして。


すでに動き始めていた流れは――


静かに、確定へと進んでいく。

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