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婚約破棄された伯爵令嬢が、王女の侍女になって王宮の食事改革を始めました  作者: 絵宮 芳緒
第一章 婚約破棄の夜

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第一話 王宮夜会

王宮の大広間には、華やかな音楽が流れていた。


シャンデリアの光が降り注ぎ、貴族たちの宝石やドレスをきらめかせている。


今夜は王宮主催の夜会。

社交界でも特に大きな催しのひとつだった。


色とりどりの衣装を纏った令嬢たちが談笑し、貴族の青年たちがその周囲に集まる。


笑い声と音楽が混ざり合い、華やかな空気が広間を満たしていた。


その中で――

リディア・フォン・アルヴェルンは、深い青のドレスを纏って静かに立っていた。

それは本来、婚約者と並ぶ夜のために、自ら用意したものだった。


銀糸のような髪は後ろでまとめられ、小さなパールの髪飾りが控えめに輝いている。

足元には銀のヒール。

華美ではないが、気品のある装いだった。


その時――


「リディア、少し話がある」


振り返ると、そこに立っていたのは、本来エスコートする予定だった婚約者のアルフレッドだった。


どこか決意したような表情をしている。

リディアは静かに向き直る。


「何でしょうか、アルフレッド様」 



すると彼は、一拍の沈黙のあと、はっきりと言った。


「リディア、婚約を解消したい」


その言葉は、音楽の流れる広間の中で、不自然なほどよく響いた。


周囲の会話が、わずかに止まる。

そして人々の視線が、ゆっくりと二人へ向けられていく。


アルフレッドの隣には、かねてより噂のあった男爵令嬢――ミレーヌ・フォン・カストラが立っていた。


彼女はアルフレッドの腕に縋るようにしがみつき、どこか勝ち誇ったような笑みを浮かべている。


アルフレッドは、わずかに視線を逸らしながら続けた。


「君は優秀すぎる。

俺には……自分を立ててくれる女性の方が合っている」


その言葉に、周囲の貴族たちがざわめく。


夜会の中心で、婚約破棄。

しかも王宮の場で。


それがどれほど無作法なことか、誰もが理解していた。


それでもリディアは、ほんの一瞬だけ目を伏せただけだった。


やがて静かに顔を上げる。

表情には怒りも涙もない。

ただ、静かな微笑みだけが浮かんでいた。


「……承知いたしました」


そして、ゆっくりと優雅に一礼する。


「どうぞ、お幸せに」


そう言い残し、リディアはその場を離れた。


背筋はまっすぐで、歩みも乱れない。


その姿に、ざわめいていた貴族たちは一瞬、言葉を失った。


まるで、夜会の空気そのものが静まり返ったかのようだった。


――その様子を、二階の回廊から静かに見つめている人物がいた。


金の髪を持つ少女。

アリアナ・エルフィリア王女である。


「……あの方は」

王女は小さく呟く。


その紫の瞳の令嬢から、目を離すことができなかった。


――面白い。



――それが、リディア・フォン・アルヴェルンの運命が動き出した夜だった。

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