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887話 犯人の正体は?

 リックに呼ばれて向かった先は、特別船室に備え付けられている浴室である。


「何を見つけたんだ?」

「キュ!」

「それは……毛か?」

「キキュ!」


 リックが掲げて見せたのは、短く白い何かの毛であった。明らかに人の物ではない。


「キュー!」

「そこに落ちてたってことか。その穴、排水溝じゃないよな。空調用の穴か?」


 リックが毛を拾った場所は、浴室の隅にある小さい穴の前だった。サイズ的にはリックなら入り込めそうだが、網で覆われていて入ることはできそうにない。


 四つん這いになって空調穴を覗き込んでみると、網の向こう側にも白い毛が落ちているのが確認できた。


 網は目が結構粗いので、向こう側の毛がこちらに入り込んだのだろう。ほんの僅かに風が流れているから、これが毛を動かしたのかもしれない。


「これは何の毛だ? 鑑定しても謎の毛としか表示されないし……」

「ヤー」


 ファウが白い毛をビョンビョンしたりクンクンしたりしているが、それで何か分かるのだろうか?


「これが船に入り込んだモンスターの毛なのかねぇ」

「ヤー?」


 でも、この空調穴の中を動き回れる程度の大きさで、人を殺せるか? リックと変わらない大きさだぞ?


 ま、まあ、初期にリスに殺された俺が言うことじゃないかもしれんが。でも、背中を一噛みで人を殺害するには、ちょっと小さすぎる気がする。


「よし! 船内の空調穴を調べてみよう!」

「キキュ!」

「ヤー!」


 モンスたちを連れて船内の探索へと乗り出したんだが、これが中々難しかった。そもそも人が多すぎるし、空調穴であれば全部に毛が落ちているわけでもなかったのだ。


 それでも最下層の倉庫や、カジノの隅などで同じように白い毛が落ちているのを発見した。やはり、何らかの生物が空調穴の中を動き回っているのは確実だろう。


「船長室の空調穴も調べたいなぁ」

「ヤ!」


 ファウが俺の肩の上で大賛成だとばかりに大きく頷いている。こいつ、すっかり探偵気分だな。妖精探偵ファウ? なんか小説のタイトルっぽい!


 ファウに急かされながら再び船長室へと戻ったが、まだ封鎖は解除されていないらしい。扉が閉じたままだし、数人のプレイヤーがNPCに押し止められているのが見える。


 ただ、その中に非常に目を引く人物が混じっていた。


「た、探偵がいるんだけど」

「ヤヤー!」


 ファウが目を輝かせてその人物を見つめているな。まあ、俺もめっちゃ見ちゃったけど。だって、その見た目がもう探偵と呼ぶ以外になかったのだ。


 ブラウン系統のインバネスコートに、チェックの探偵帽とスーツ。しかも手には虫眼鏡を握っている。


 最初はイベント用のNPCかと思ったが、そうではなかった。何とその探偵はプレイヤーだったのである。


「おや? 白銀さんですか? お初にお目にかかります。名探偵シャーロットと申します。お見知りおきを」

「あ、おう。よろしくお願いします?」


 いきなり話しかけられてキョドッちゃったよ! だってNPCと思ってたからさ! というか名前!


 この人、プレイヤーネームが名探偵シャーロットだった。ゲームの中で探偵ロールプレイをしたいのだろう。


 ああ、性別は女性だ。黒髪のストレートヘアに青い瞳の、長身の美女だ。身長は190近いんじゃなかろうか?


「この部屋に何かしらのヒントがないかと思ってやってきたのですが、入れないようですね」

「そうか。この部屋の空調穴を確認したかったんだけどなぁ」

「おや、白銀さんもそこに辿り着いたのですね?」

「ということは、め、名探偵シャーロットさんもか?」

「そうなのですよ!」


 俺がフルネームで呼んだら、嬉しそうに笑う。名前からして拘りがあるってことらしい。愛称で呼ぶ勇気がなかっただけだが、ちゃんとフルネームで話しかけてよかった。


 シャーロットも俺と同じように白い毛を各所の空調穴前で発見し、船長室を確認しにやってきたそうだ。


 そうやってシャーロットと情報交換していると、再びアナウンスが聞こえた。俺たちの体も動かなくなる。


『多くのプレイヤーが船内の各所で発見した、謎の白毛。同じころ、船長室にいた副船長が同じものを発見していた』


 どうやらイベントが進行したらしい。一定数のプレイヤーが白い毛を探し出すのがトリガーなのかね?


 ムービーの中では副船長が部屋の隅に目を向け、白い毛を発見している。毛を摘まみ上げて、何やら考え込む副船長。そして、何かを思い出したようだ。


「これは、先日襲撃してきた、ホワイトホーンラットの毛か……?」


 ホワイトホーンラットというのは、船襲撃イベントの際に敵に交じっていた、新種のモンスターである。確か、大型の氷山から出現したはずだ。


 見た目は、額に角が生えた白いハツカネズミって感じだった。テイム対象じゃなかったことで、多くのテイマーが泣き崩れていた程度には可愛かったね。


 こいつらは数が多く、遠距離攻撃をかいくぐってデッキまで上ってきていたはずだが……。その時に船内に入り込まれたって言う設定なのだろう。


 そして、船長室を調べ始めた副船長が、決定的な証拠を発見する。


「これは……! ここから船長室に入り込んだのか!」


 船長室の浴室に存在する空調穴の網が、あちら側から押し出すように破壊されていた。ホワイトホーンラットなら、これくらいはできるかもしれない。


 そこでムービーは終了する。


『さあ、プレイヤー諸君。ヒントを基に、犯人を探し出してくれたまえ』


 もうモンスターが犯人だって分かってるのに、未だにミステリー風なのやめれ。運営の趣味なのか?


本日、コミカライズ13巻の発売日です。

可愛いオルトとアイネの表紙が目印なので、よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
 そういやあの帽子、正式名称はなんだろうと思ってググってみた。あまりにアイコンとして有名なのでシャーロックハットとも呼ばれるらしいが、原作では「鹿撃ち帽」を被っている描写ってないんだそうな。挿絵に描か…
つまり⋯殺した犯人とそれを裏で操る真犯人がいる可能性がある? 兎が一噛みで殺せるかどうか疑わしいのでミスディレクションの可能性も高い
>見た目は、額に角が生えた白いハツカネズミって感じだった。テイム対象じゃなかったことで、多くのテイマーが泣き崩れていた程度には可愛かったね。 >『さあ、プレイヤー諸君。ヒントを基に、犯人を探し出してく…
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