つかの間の回復
次の朝、看護師は、少女の病室で、しっかり手を繋いで眠っている二人を見つけた。
本当は、朝ご飯の時間だと起こさなければならないのだが、看護師には、それは出来なかった。
その看護師は、二人の病気のこともよく知っていた。
だから、この幸せな光景を壊すことは憚られた。
看護師は、二人を起こすかわりに、腰辺りにまではだけた布団を、そっとかけてやって、病室を後にした。
朝日に照らされた二人は、まるで、兄妹のように、その看護師の目に映った。
病室には、ひと粒だけ、零れた小さな雫が、朝日に反射して光っていた。
その後、病院側は驚いた。
もう、ダメだろうと思われていた少女が、一夜明けると、歩けるまでに回復していたのだから、その反応は当然と言えば当然だろう。
医師は、奇跡だと、医師にあるまじき発言を、花村清果の両親に告げた。
少女の両親は、少女の回復は、もしかすると、いつも遊びに来る少年のお蔭かもしれないと、感謝していた。
少年の両親も同じように、少女に感謝していた。
それから、少年と少女は、同じ速度で病状が進行していった。
そして、いつしか、病院側も、二人の仲の良さと、精神的な安心感というところから、病室を同じ場所にしていた。
二人は、本当に、いつも一緒にいれることになった。
相変わらず、二人はいろいろな話をした。
二人で、よく病院を抜け出し散歩をして、怒られた。
二人は、幸せだった。
死の恐怖はあったけれど、隣に誰かがいてくれることがわかっているから、笑顔でいられた。
季節は移ろって行く。
桜は散り、痛いくらいの日差しもなくなり、紅葉も散った。
気温はだんだんと下がって、空には粉雪が舞い始めた頃、少年と少女は、歩くことができなくなった。
そんなある日、二人は両親に頼んで、病院の外へ連れて行ってもらう約束をした。




