終章(エピローグ):新しき空の下で
2人の神話語により芽生えた天を貫く双樹。その双樹の目に二人の影があった。
終章:新しき空の下で
暗い空間に二つの影と魔石碑がある。魔石碑の前に佇む二人の内、一人が口を開いた。
「ねぇ、ニャニールン……私たち、また二人きりになったのかしら?」
「そうだな。残された魔石碑は、この一つだけ。真実が記された『キーニャの魔石碑』のみだ……」
キルミとニャニールンは、石の隙間から外の景色を眺める。
「この世界は、二人が望んだ世界なの?」
「さあな。これほどの高空では何の情報もない。俺たちが得られるのは、ここから見える空だけだ」
「そうよね。私たちは外へ干渉できないもの。……つまらないわ」
キルミは壁に手を添え、不敵な笑みを浮かべる。
「ねぇ、ニャニールン。外に出てみない?」
「何を言っているんだ。無理だろう?」
「忘れたの? 私も『神話語』を継ぐ者よ」
キルミは壁に寄りかかり、楽しげに微笑む。
「無理だ。『目』の外は『神話語』が存在しない世界だぞ」
「つまり、『外』はないけれど、この空間は『ある』ということでしょう? それに、外に無いとなぜ言い切れるの?」
キルミが短く詠唱を終えると、『石』は砕け散った。同時にキーニャの魔石碑も半分に欠け、彼女と共に新世界へと消えていく。ニャニールンが呆然とする中、新たな『目』が形成され、二つの影が姿を現した。
「やはり、キルミは外へ出たわね」
「ね? 私が言った通り、二重に術をかけておいた方が安全だったでしょ、シルちゃん」
「お、お前たち……」
「誰? あんた…」
「俺だよ、ニャニールンだ!」
「え? あんた、フクロウじゃなかったの?」
「違う、人間だ!訳あってフクロウになっていただけだ!!」
シルとキーニャは疑わしげな視線をニャニールンに向ける。やがてシルが口を開いた。
「どちらでもいいわ。人間だろうがフクロウだろうが…ちょっと、外に神話語のかけらが飛んじゃったけど、一生真相には辿り着けないでしょうね」
「ええ、そうね。真相はここにあるのだから…」
三人は欠けた魔石碑を一瞥し、外を見る。
「聖魔獣がいない世界は、平和なのかな?」
「どうかしら。何らかの神話は生まれているかもしれないわ。私たちの双樹は、あまりに巨大すぎるから…神話には十分な材料よ」
―結―
恐怖がない世界を作り上げたシルとキーニャ。二人が見渡す世界には永遠の平和が訪れるのか、一時的な平和なのか、それは誰にも分からない。




