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第一話 有名探偵

序章


1800年代初頭。

とあるスラム街の片隅で、一人の男が死んだ。

男はこの国の中枢を担う国立銀行の総裁であった。


事態を重く見た王族や貴族たちは、止まりかけた国の血流――すなわち金融を立て直すべく、大蔵省(金 融省)を動かした。


    ❊


「『あれ』を使いますか?」

「それもいいだろう。そろそろ頃合いだ」


「あれ」とは阿芙蓉、すなわちアヘンのことである。

これを用いた密輸貿易により、国庫を潤わせるのが彼らの狙いであろう。


    ❊


第一章


新聞の一面には、総裁の死が「銀行総裁暗殺事件」として大々的に報じられていた。

あわせて、詳細こそ伏せられているものの、ある「薬物」に関する不穏な噂も書き立てられている。

……おそらくアヘンのことだろう。


「これがあの連中のやり方か。汚ねぇな」

鼻で笑いながら愚痴る。

どこかの国を薬漬けにし、依存させて傀儡にするつもりか。


「自国を滅ぼす気ですかね、あの人たちは」

「はっ、そう言ってやるな」


声をかけてきたのは、私の秘書だ。

一言で言えば、極めて有能。そして、クールな女性だ。


彼女の言う「自国を滅ぼす」という意味は容易に理解できる。

他国を薬で支配すれば、いつか真実に気づいた民衆が暴動を起こす。

その返り火を浴びて、この国自体が崩壊するリスクがあるからだ。


「君にはいつも助かっているよ」

「そうですか」


やはり、そっけない。


「で、今日の仕事は……」

「はい。午前8時30分から、首相直々のご依頼が一件入っているのみです」

「えっ、それだけ?」


意外な少なさに、私は肩透かしを食らった。


「どうせ総裁暗殺の件だろ。厄介ごとは御免なんだ。なぜ俺が政治なんぞに関わらなきゃいけないんだ?」

「それが名探偵という仕事ですから」


冷静なツッコミが入る。


「……うぅ。本来、探偵ってのはもっと地味な調査をするもんだろ」

「あなたが有名になりすぎたせいですよ」


返す言葉もない。

私は探偵事務所を構え、部下を抱える身だ。

経営はそれなりに安定しているが、有名税にしては重すぎる。


「そろそろお時間です」

「へいへい」


やり取りをしているうちに、約束の8時30分になった。

窓の外を見ると、立派な馬車が目の前に止まった。


「……来たな」

「来た、というよりは――」


「失礼するよ」


扉が開き、重々しい足音とともに依頼人が現れた。

私は立ち上がり、挨拶を交わす。


「どうぞ、おかけください。……して、今回の依頼は何でしょうか?」

「分かっているのだろう?

まぁいい、説明しよう。

銀行総裁暗殺事件の主犯、および実行犯を特定していただきたい」


依頼人は真っ直ぐにこちらを見据えた。


「報酬は1万メールでいかがかな」


1万メール。破格の提示だ。

厄介ごとには違いないが、国の中枢に貸しを作るのも悪くないだろう。


「――そのご依頼、お受けいたしましょう」


私は差し出された手と、力強く握手を交わした。

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