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日常Ⅱ:Vol1



「えぇ、突然ですが、古田ゆきめさんが、

家庭の事情で、退社する事になりました。」



あれから3日も経たない内に、ゆきめは会社を去った。



どうやら、竜司以外に知らされた人はおらず、

彼女の話に、朝礼の職場は、ざわついていた。



「あの人が...。」



「いきなり突然...」



次期エースとなるはずの柱が抜けたのだ。



たとえ、ゆきめの陰口や非難はすれど、

実力はあり、頼らざるを得ない影響力を

彼女は、持っていた。



社内に、動揺や混乱が走るのは当然だろう。



竜司はその輪から外れ、様子を見ながら、

最後に会った彼女を思い出していた。






-------------------------






「じゃあ、これで...。」



竜司は、駅前で、ゆきめがこれから

地元に戻るのを見送ろうとしていた。



カフェで話をしてからまもなく、

メールで、彼女からご飯の誘いがあった。



「奢ってもらったお返しをさせて!」



と、半ば強引に、ご飯に付き合わされる形になった。



あまり酒を飲まない竜司であったが、

せっかくの彼女の新たな門出を祝う事にした。



盛大に酔っ払うゆきめを宥めながら、

竜司は、介抱に注視している。



これまでのストレスからの開放感から、

ゆきめは、鬱憤を晴らし、言いたい放題だった。



会社の幹部の悪口(ハゲ!)、押し付けられる仕事の量、

デキの悪い同僚や上司...etc



彼女の言葉を聞いて、竜司は、

内心、「やっぱりか...。」と、

改めて、夢の答え合わせもしていた。



やはり、ゆきめは、他人に合わせている。



結果、彼女本来のキャパを超え、満身創痍だ。



竜司が、彼女の夢に入り込んだ事で、

ゆきめの心境は、無意識に変化していた。



それが、退社や休養に繋がったのだ。



今のゆきめは、今までの束縛から解放され、

蓋をしていたモノが溢れている状態だ。



しばらく、好きな様に吐かせてやろうと思った矢先、



「オェェェ...」



物理的に、ゆきめが吐瀉した。



ーーうわぁ、面倒くせぇ人...。



酒乱のゆきめを鬱陶しく感じながら、

竜司は、勘定を済ませて、彼女の肩を

組みながら、店を出た。



途中、コンビニで水を調達し、なんとか

彼女の酔いを覚まそうとした。



「駅に着いたよ。」



「...。」



水を飲む元気はあったものの、

普段と違い、ゆきめはグロッキー状態で、

竜司の言葉に、返事する気配がない。



「とりあえず、立てる?」



そう言いながら、そっと、彼女の肩から

腕を外しかけている時だった。



ゆきめが、竜司を両手で、抱きしめた。



「イヤだ...。」



「離れたくない...。」



ーー...また面倒臭い展開になってきた...。



これが、竜司の意中の人だったならば、

心臓の鼓動は高鳴り、興奮していただろう。



そのままお持ち帰りして、ひと時の楽しみを味わえたかもしれない。



今のゆきめならば、竜司は、そのまま

彼女を連れて、その肉体を欲しいままに

できるだろう。



しかし、竜司は、どこかデジャブを感じていた。



それは、夢の最後、ゆきめが押し倒され、

何もかも、肉体さえ差し出す程、匙を投げた場面、



彼女の潜在意識が、現実に反映される様に、具現化されていた。



竜司の答えは、夢と同じだ。



「古田さん」



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