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天秤Vol:24



二人は、会社から徒歩5分程の距離にある、

チェーンカフェ店、フタバコーヒーへと入った。



幸い、2階の奥の席が空いていた。



竜司は、先に席を取ってからレジに向かい、

サンドウィッチとコーヒーを注文した。



商品を受け取り席に戻ると、ゆきめは上の空だった。



外の景色を眺め、目は虚げ、心ここに在らずだ。



「キャ...!」



竜司は、そんな彼女を見るや否や、

アイスカフェのカップを彼女の頬に当てた。



「はい、ゆきちゃんの分。」



彼女の分のドリンクも買っており、

そのまま、竜司は、手渡した。



「...ありがとう。」



ーーやれやれ...。



内心、ゆきめの状態にため息をついた竜司は、

現実に戻してあげるがてらの行動だった。



これが、彼女と最後の会話になる、



その様な予感が、彼の中で起きていたからだ。



だが、ゆきめの覇気もない、

魂が抜けている様な状態では、

話の仕様がない。



竜司は、黄昏ているゆきめを発見して、

面倒臭さが湧いたが、彼女に意識を取り戻して

もらう為の行動であった。



決して、意図して、ラブコメ漫画で見かける

お決まり的な行動をやった訳ではない。



だが、ゆきめの方は、

竜司のそのラブコメチックな行動に

驚きながら、その優しさにグラついていた。



「それで、何かボーとしてたけど、考え事?」



アイスコーヒを飲みながら、

竜司は、ゆきめの先程の状態を尋ねた。



「うん...ちょっとね...。」



彼女は、歯切れの悪い回答をした。



「そんなわかりやすい態度を取るなら、

溜め込むより、言葉にした方がラクになるよ?」



「聞かなかった事にするし、目の前にいるのは、

人じゃなくて、サンドウィッチを食べるクマの人形に

話しかけていると思って、気楽にいこうぜ。」



そう言いながら、竜司は、注文した

サンドウィッチを頬張り始めた。



「何よ、それ...。」



竜司の冗談に、ゆきめは、多少、気が楽になった。



そして、ゆっくりと話し始めた。



「私ね...、地元に戻ろうと思っているの。」



「へぇ、そうなんだ。」



「えっ?驚かないの?」



ゆきめの最初の話は、いわば、会社を辞める話だ。



会社の次期エースで、しかもマドンナが、

辞職となれば、職場は大騒ぎだろう。



しかし、彼女の予想に反し、竜司は、聞き流す様に

サラッとした受け答えだった。



そんな竜司の態度に、ゆきめは動揺した。



「いいから、続けて続けて。」



「ちなみに、理由は何なの?」



竜司は、相変わらず、サンドウィッチを

食べながら、ゆきめに話を促す。



「あっ...うん...。」



「家族の事情もあるのだけど、地元に戻って、

そろそろ落ち着きたいなぁと思ったの。」



「なかなか休みも取れなかったし、

仕事ばかりで、良い人にも出会えなかったし。」



「そっか。」



竜司は、ゆきめの退職の話を聞きながら、

ある程度の予測はついていた。



彼女の夢で、情報や秘密を知った事で、

どう動くか、なんとなく読んでいたからだ。



その一つが、会社を辞めてしまう事、



彼女は、元来、誰かに存在価値を認めてもらう

実感がなければ、生きていけない人物だ。



だが、現実では、チヤホヤされる一方で、

裏では、性別問わず、ヘイトも受けている。



ーーあんなに綺麗で、悔しい!



ーークソッ!何でアイツよりも成果を出せないんだ!



ーーあいつさえいなければ...!



現実の人間関係の心の機微を理解していれば、

ゆきめは、まだこの会社にいただろう。



しかし、彼女は、何よりも

彼女自身の価値が絶対的に位置付けている。



彼女が、無意識に、人を見た目や肩書きなどで、

判断しているのを、他の社員達に、伝わってしまっていたのだ。



結果、彼女は表では、賞賛、裏では嫉妬や憎しみなど、



まるで、裸の女王様の様な状況になっていたのだ。



ゆきめは、それも無意識に分かっていた。



どれだけ頑張っても、他人に評価されない、

認められない事に、耐えられなかった。



とうとう、彼女は、竜司に、本音を漏らしたのだ。



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