日常Ⅰ:Vol5
現実に戻ってからの7日間、
いつもの彼の暮らす日常に忙殺されていた。
だが、常に、彼のそばに存在していた日々は、
夢を見た前と後で、徐々に、変貌していた。
まず、同僚に挨拶される様になった。
それまでは、空気同然、誰も、
竜司の存在に、気づく事すらなかった。
この1週間、出社すれば、必ず、
誰かに挨拶され、退社の時間になれば、
「お疲れ」と、声をかけられる。
竜司は、最初、しどろもどろだったが、
今では、人並みの挨拶ができる様になった。
彼の中で、やっと、人間関係の営みに参加できた感覚だ。
仕事でも、自然と話しかけられる様になり、
タスクや業務が早く進んだ。
会社の歯車の部品としても、
機能していたかどうか怪しいモノだったが、
ちゃんと、回れている事を実感した。
ひとりぼっちだった彼の世界に、
他の人が入ってきたのだ。
それまで、コミュニケーション障害を自負していた
竜司にとって、なぜか、自然と言葉が出る様になった。
声がうわずる事が、めっきりと減り、
少しずつだが、人に意見も伝えやすくなった。
昼食も、いつもは彼一人だったが、なぜか、一人ではなくなった。
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一番、変わった事は、そう、彼女だ。
古田ゆきめ。
この1週間、俺が、一番会った人物といっても過言ではない。
入社して5年、入社式で見知った以来なのに、
昼になると、必ず顔を鉢合わせる。
「あっ、竜司くん!」
また来た...。
最初は、「汗、大丈夫だった?」とか、
軽い会話で済むと思っていたんだ。
それが...
「あぁ、大丈夫です。さっきはありがとうございました。」
「すごく、助かりました。せっかくですし、
ペットボトルのお礼に、何か奢らせてください。」
俺の口からこんな言葉が飛び出たのが、
そもそもの始まりだった。
正直、なんで、俺が、こんな事を口走ったのか、わからない。
つい、うっかりというか、気づいたら自然と言っていた。
しかも、相手は、会社で一番の美人!
その人を相手に、俺は、堂々と、彼女を誘ったのだ!
「いいの?ありがとう!」
「じゃあ、お言葉に甘えて...
お昼ご飯の時間だし、コンビニにいこっか!」
彼女の答えは、なんと、イエス!
嘘だろ?
そう思った。でも、本当なんだ。
そこから毎日、偶然なのか、
いつも、彼女と鉢合わせる事が多くなった。
必然的に、彼女との会話が多くなった。
彼女もできた事がない、ましてや、
女の子と話した経験もない童貞の俺が、
とびっきり綺麗な人と、ランチデート...
スタイルやルックスは、言うまでもないが、
彼女の声が、また惹かれるんだよなぁ。
俺は今...夢を見ているのか?
あのサイコマリアの言っていた変化ってこれの事か?
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