ファーストミッションVol:24
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竜司の瞳から、一筋の涙が流れた。
ーーやっぱり..か...。
心のどこかで、わずかな、淡い期待をしていた。
母は、暴虐の限りを尽くしたけど、
後悔や自責の念があり、もう一度、やり直そう、
たとえ、死んでいても、心を改めてくれるのでは?
長い年月をかけて、実現した、親子の対峙。
人生、最初で最後の親子ゲンカ、
心を通じあえると、信じていた結果、バカを見た。
「もう...遅かったんだね..。」
当然であるが、母親は、もうこの世にはいない。
竜司の目の前にいるのは、いわば、彼の心の闇だ。
シャドー、トラウマというべきか、
はたまた、母親の残留思念とも呼べるだろう。
もう、過去の人となってしまったのだ。
彼女自身が変わる事は、もう、ない。
その現実を痛感し、竜司は、泣いた。
辛かった日々や母親との思い出は、なかった事にできない。
こうして、久しぶりの対面を果たしても、
結局、彼女は、彼女のままだった。
しかし、竜司自身は、変わる事ができる。
これまでの一連の夢の世界での、出来事が、
それを物語っている。
自分の未来の為に、彼は、立ち上がり、歩を進めている。
そして、今、過去の精算をし、ケジメをつける。
ーーカチャ!
竜司は、倒れている母親に、銃口を向けた。
扱い方は、知らないし、所持した事もないが、
身体は、その使い方を理解し、手慣れた様子で、
銃を持った。
「...さよなら」
これまでの思い出が、走馬灯に、竜司の脳内に
映像として、駆け巡った。
万感の想いを込め、引き金を弾いた。
ーーいや...!ダ..メ..!りゅ..
ーーパァン!
母親の続きの言葉を、銃声がかき消した。
ただ、温情なのか、頭に1発ではなく、脇腹付近に、弾が放たれた。
.............。
先ほど前の喧騒は、消え去り、沈黙が、部屋を覆った。
竜司の意識も、限界に近づいた。
「グッ..」
グラッと、体をよろめかせながらも、
まだ、ここで倒れる訳にはいかなかった。
最後に、虫の息となった母親へ歩み寄った。
まだ、息をしているが、もう長くはない事は、明白だった。
ーーわたし...は、あな...たの..た..めに...
何かを伝えようとしていたが、竜司はもう十分に理解していた。
「わかっているよ」
「けれど、もういいんだ。」
「あとの事は全部、俺が何とかやるから」
「もう終わろう」
そう伝え終わると、竜司は、ゆっくりと母親の手を握った。
久しぶりに、触れた母親の手は、とても小さかった。
ーーそう..ね..。
母親は、竜司の言葉を悟ったのか、
ようやく、穏やかな表情を取り戻した。
そして、目を瞑り、彼女の心臓の鼓動は止まった。
竜司が、それを見届けた瞬間、
彼女の全身は、エメラルドの光の粒となり、
散っていった。
「おやすみ、そして、さようなら」
誰もいないリビングの天井を見つめながら呟き、
竜司は、過去の因縁とのケジメをつけた。