魔女の呻き:Vol11
ーーこういう時に限っての、悪運か...。
いきなりの当たりクジに、
つくづく、己の災難の引きの
良さを実感するキリアンだ。
「ミネカね。では、この出会いに...」
キリアンは、気持ちを切り替えて、
ワイングラスを、峰香の前の差し出す。
「そうね、乾杯。」
ーーチンッ!
お互いにのグラスを軽く当てて、乾杯をした。
「それにしても、良い顔をしていそうね。」
「その顔を見たくなったわ。」
もうすでに出来上がっているのか、
峰香は酔った様に、グイグイと言い寄ってくる。
「ミネカも、すごく綺麗だし、瞳が好きだよ。」
「僕も、ミネカの顔を見たいから、その瞳を見せて。」
ならば、とキリアンを一歩踏み出した。
「えっ...。」
峰香は、キリアンのアプローチに戸惑っていた。
「恥ずかしいよ...。」
「いいから、見せて。ミネカの綺麗な瞳を見せて。」
キリアンは、凝視する様に、彼女の目を見つめる。
有無を言わせない、まるで獲物を逃がさない様な
口ぶりやボディランゲージで、彼女に迫る。
「人前で外すのが恥ずかしいのなら、
ちょっと落ち着いた場所でいいから見せて。」
なお、ジッとキリアンは、峰香から視線を外さない。
「うん...。わかった。」
彼女の羞恥心を折れさせる事に成功、
「じゃあ、ちょっと移動しようか。」
キリアンは、彼女の手を取り、エスコートする様に、
会場を後にした。
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「ここらへんならば大丈夫でしょう。」
キリアンは、一目がつかない廊下で立ち止まった。
「はい、ワインもどうぞ。」
会場を去るついでに、トレーを持っている執事から
ワインを頂戴して、ミネカに渡す。
「ありがとう。」
緊張を紛らわす為なのか、峰香は渡された
ワインを一気に飲み干した。
ーーここでも酒癖は変わらないのね...。
心の中でツッコミを入れつつ、キリアンは、話を切り出す。
「じゃあ、見せてもらおうかな。」
そう言いながら、先に、サングラスを外す。
これで、土壇場で、話をなかった事にする、
逃げ道を封じた。
「あっ...。」
ーーすごく...かっこいい...。
そう言わんばかりに、彼女は、オンナになっていた。
某ハリウッド映画の主役を張る、
イケメンに口説かれているのだから、
当然の反応ではあろう。
素直に、峰香は、目元を隠したマスクを外した。
案の定、顔は現実と変わらない、彼女だ。
胸元を開けた真っ赤なドレスを着ている以外、
普段の松田峰香と変わらない姿だった。
「どう...?」
峰香は、モジモジしながら、キリアンに尋ねる。
「うん、思っていた通りの綺麗な瞳だね。」
そう答えると、彼女は、一歩、こちらに歩み寄ってきた。
「嬉しい...誰にも言われた事なかったの...」
「私、誰にも、相手されなくて寂しかったの...。」
また一歩、キリアンに近づく。
ーーなんだか嫌な予感がする...。
内心、冷や汗をかき始める竜司だが、
直後、その悪運は、現実になる。
ーーギュッ...!
峰香が、酔った勢いで、抱きしめてきた。
その瞬間、場面が一転する。