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炎の想い 其の一
〝彼〟は私の、初めての〝恩人〟になった。
薄暗い洞窟と、深く冷たい水たまり……それが私の〝世界〟だった。
深い洞窟の奥で、私は水たまりに浸かって生きていた。
1本の白い棒だけが、水たまりに浮かんで共にあった。
太い木の格子が、目の前に立っていても何ら疑問を感じなかった。
それが〝当たり前〟だったから。
物心ついた時から、それ以外の〝世界〟を知らなかったから。
あとから知ったことだが、私は7年の間、水牢に浸かっていたらしい。
そして7年目のある日、薄暗い洞窟の中に〝光〟が射した。
幼い少年の姿をした〝光〟は、私を新しい〝世界〟へ連れ出してくれた。
薄暗く冷たい〝世界〟とは違う、明るく暖かい〝世界〟へ。
それまで何も感じず、何も考えなかった心に、熱い炎が灯った。
胸の奥を焦がすような、熱く切ない炎が。
生涯消えることの無い、灼熱の炎が。
そうして少年の姿をした〝光〟は……〝彼〟は、私の初めての〝恩人〟になった。
それが私の、物心ついた時から6歳までの生涯だった………