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56 憤怒

リカルドのルーニーを目指し、金色の鳥が光の帯を引きながら空を通過していく。



リカルドは偶然出会ったジョゼフと立ち話をしていたところだった。

二人の周りを回った金色の鳥はリカルドの手元で光の球へと形を変え弾け文字を形成した。

それを読み取ったリカルドは顔色を変えた。


「孤児院で何かあったようだ。すまないが殿下に現状把握をしに行くことを伝えてくれ。」


そう言い終えたと同時にリカルドは転移が許可されている王宮の入り口まで急ぎ走って行き、そして孤児院へと転移した。




リカルドがアシャンテ孤児院に転移すると中庭にあるベンチに力無く座っているように見える母、セレイナを見つけた。

側でサマンサが支えているのだが、過去にこのようにぐったりしている母をリカルドは見たことがなかった。

慌てて駆け寄ればセレイナもリカルドに気付いた。


「リーすまない。…とりあえず『これ』を解除してくれないか?ルーニーを封じられている。」


『これ』と言ってセレイナが目線で示した右手首には光る環がはめられていた。

リカルドは術式を詠唱し自分の右手に集めたルーニーをルーナに変化させ、青白く輝く右手で母にはめられた光の環を掴む。


バチンッ!


弾けるような音と眩い閃光が起き、それが引くとセレイナの右手から光の環が消えていた。

先ほどまで力なく支えられていたセレイナは力強く立ち上がり、美しい顔の眉間にしわを寄せた。


「ユリアが攫われた。彼女は必ず取り戻すし、私の大切な孤児院に手を出した代償もきっちり払ってもらおう。」


普段は感情を抑制しているセレイナが、今は怒りにまかせて気持ちを開放し露わにしている。

彼女の強いルーニーは体から漏れ出しパチパチと体の周りでスパークをしており、リカルドさえも近くにいることに不快感を覚えるほどであった。

おかげでリカルドはユリアーヌが攫われたことに対し怒りはあったが感情的にならず、冷静な判断ができた。


ユリアーヌが狙われていたことは以前からわかっていた。

なぜ彼女であるべきなのか、そしてその目的がまだはっきりと分かっていない。

しかし、ユリアーヌが魔獣に襲撃されたことで王宮の騎士が正式に扱う案件になってしまった。

本当なら今すぐセレイナと敵地に乗り込んでいきたいところではあったが、まずは王宮に報告をし王太子殿下の指示を仰がなければならない。

この事態の収束に絶対に協力(…リカルド的には復讐では?と思ったが…)をすると言うセレイナと王宮へと向かうことになった。


転移する前にセレイナは孤児院の最奥にある自室から「持っていくものがある。」と言って、何やら大きな包みを担いで来ていた。

リカルドが訊ねても怒りもあらわに「私に必要なものだ。」としか言わなかった。


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