残虐なる試練
DYNAMITE SAGA by Souji Yamato
ハイエルフの女剣舞士サガと出会って、七日目の冒険者パーティー『ド・ロマーヌ』は、サガをメンバーに加え、装いも新たにダンジョンに挑みます。
無論、これから、女性1名と男性3名たちが挑戦するのは、この街の地下である『ベルファスト・ダンジョン』です。
ただし、ダンジョンに挑むには、地下への入口『試練の間』を、突破せねばなりません。ちなみに、試練の間では、クリア報酬が皆無だと知られています。
斯くして、試練の間は、古代神殿らしき建造物の最奥にありました。また、その入口は、古めかしい『両開き扉』となっています。
あらかじめ、初心者のサガが主張します。
「ここは、まだ入口だし、わたしに任せて!」
男たち3人は、そろって『頷き』了承しました。
こうして、試練の扉は、開かれたのです。
しかし、試練の間には、みすぼらしい初老の婦人(人間らしき)が、一人で居るだけです。当然ですが、この婦人に、勝利することが試練の内容なのです。
サガは、謎の婦人に問います。
「負けを認めてくれる?」
「‥‥5百コインを頂ければ、負けを認めます」
謎の婦人は、怯え震えながら、そう要求しました。
サガは、その婦人の存在を不自然に感じて、さらに問い掛けます。
「なんで、ここに居るの?」
「もう、私では、ホブリングは、産めないだろうと言われて‥‥」
「ホブリングって! あなた、魔物なの?」
「ううっ、違います‥‥」
謎の婦人は、泣き崩れてしまいました。ただし、奴隷女性と『ホブリングとの生殖』の件は、街の権力者たちが極秘にしています。
次に、サガは、優しく問い掛けます。
「事情を、聞かせてくれる?」
「ぐううっ、頭が‥‥割れそうです!」
これを、サガは、秘密を守る『質の悪い魔法』の仕業だと考えました。
ところが、仲間の野戦士ルイ(人間♂)が、口を挟みます。
「この試練、僕たちの時は、人間に化けた魔物だったよ」
「違います! 私は、まだ‥‥人間以下でも、人間です。人間なんです!」
謎の婦人の泣き顔からは、悲しみが溢れ出しています。
そこで、サガは、コインを取り出しながら、穏やかに言います。
「はい、5百コインだよ」
「まて、甘すぎるぞ!」
戦士カルロ(人間♂)が、咄嗟に、怒鳴りました。しかも、カルロは、剣を抜こうとしますが、魔道士ハインツ(人間♂)が制止します。
「待ってください!」
「なんだ!」
カルロの怒声が、ハインツに向かいました。
しかし、その隙に、サガが、さっと、カルロと謎の婦人の間に立ち塞がり、後ろ手でコインを財布ごと渡そうとします。
「この財布を持って、逃げて!」
「‥‥ありがとう」
謎の婦人が、財布を受け取ると、転送魔法らしきが発動して、その姿が消えます。同時に、地下への扉が開き、試練達成となりました。
それでも、カルロとルイは、例の婦人を疑った後悔で、暗い表情です。
やがて、ハインツが、微笑みながら、サガに確認します。
「ところで、あの財布の中身は?」
「あっ、所持金の全部が5千コインほど」
サガは、笑いながら、そう答えました。
ところが、此度の事は、この街の暗黒面の所業です。ただし、サガたちは、奴らの余興の『その他』登場人物に過ぎません。当然、サガたちの方も、暗黒面の存在には、気付いてもいません。
残念ながら、サガたちは、この街のことを、暮らしやすい活気あふれる場所としか、認識していません。
ですが、その活気は、ホブリングという労働力に支えられています。
ともあれ、剣舞士サガは、正々堂々と、ダンジョンの入場資格を得ました。
DYNAMITE SAGA by Souji Yamato
※5百コインは、5千円ほどの価値です。




