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第77話 (閑話10) 高天原愚連隊、1日限定の復活

第77話 (閑話10) 高天原愚連隊、1日限定の復活


月読尊(つくよみ)視点

あたしはこの日、お店の下ごしらえをしていた。

何もない穏やかな一日になるはずだった。

なのに、店員のエウリュアレの報告で全てが崩れた。

「店長さーん」

相変わらず気の抜けた声だ。

これがオリュンポスだと呪われた声と言われるのだから理解できない。

多分甘えたような声に聞こえるせいかも?

まあ、いい。

で、なにがあったの?

エウリュアレが持ってきたタブレットを見せてくる。

これが何?

パンツ?

この鬼ダサいいちごパンツがどうかしたの?

え?

エウリュアレが指さす箇所に視線を向ける。

あ?

姉様の…使用済みパンツ…だ…と!?

買わねば!!

誰にも渡すわけにはいかん!!

大黒天め!!

お前には渡さんぞ!!

あ!?

福禄寿!?

老いぼれが何しやがる!!

気づけばあたしはヒートアップしていた。

メデューサから頭を叩かれるまで。

普段のあたしならメデューサが近づけば普通に気づく。

気づかなかったということはそれだけ頭に血が上っていたみたい。

だけどこれは許されることではない。

姉様の使用済みパンツが売りに出されるのも看過できない。

どこのゴミクズだ?

こんな馬鹿をやらかすのは…。

あたしは静かに電話に受話器を取りある奴に連絡する。

「あ、経津主命(ふつぬし)の旦那…わりいが1日、目をつぶっちゃくれねぇか?」

かけた先はうちの常連で昔何度もやりあった経津主命の旦那だ。

高天原(たかまがはら)警察の警視正で当時は巡査長だった。

あたしがやんちゃやっていた時に真っ向からぶつかってきてくれた柱であたしが認める数少ない男神だ。

その経津主命の旦那が焦っている。

そりゃあそうだ。

あたしがあの当時の喋り方で頼んでいるんだから。

愚連隊総長時代の話し方だから経津主命の旦那もあたしがマジだと分かってくれたようだ。

事の経緯を旦那に話すとすぐに手配すると言ってくれた。

天児屋命(あめのこやね)の姐さんにも話を通してくれるそうだ。

あの姐さん、見た目キモオタなのにバリバリのハッカーだからなあ。

スキルを磨くため10年近くの間、地上でホワイトハッカーとして活躍していたんだから本当にすごい。

最後は事故死を装って高天原団地に帰ってきたんだけどね。

あのアクティブさは見た目からは全然想像できない。

しかも元あたしの愚連隊にもいたんだから余計に笑ってしまう。

あんたが取り締まるんかと。

まあ、いい。

あの二柱が動いてくれるならあたしが動くわけにはいかない。

だけど、経津主命の旦那が同窓会でも開けば?と提案してくれた。

なるほど。

店の中でなら何をしようと知らぬ存ぜぬと。

わかっているじゃない。

旦那の勧めだ。

愚連隊一同、ここで同窓会でもしようじゃないか。

あたしは部屋に戻り当時の特攻服を羽織る。

そして本日貸切の看板をステンノーに掛けさせ、かつての仲間に連絡をかけ始めた。

久々に同窓会で暴れようや、と。


貧乏神視点

むほほほほ。

すごい金額になったのじゃ!

結局外の神が購入したようじゃがとんでもない金額で売れたわ。

さすがに持ち歩くほどわしも馬鹿ではない。

ほとんど使っていない口座に入金してもらい、それを確認したらどうしても口元が緩んでしまう。

これで当面は楽に暮らせるぞ。

まずは、お風呂遊びじゃな。

かわいい女神を可愛がってやらねば。

小躍りしながら帰るわしに声をかける奴がおる。

何奴じゃ…?

!?

高天原警察じゃと!?

気づけばわしは囲まれていった。

空には猿田彦(さるたひこ)巡査長がおる。

これでは逃げられん。

まさかバレたのか?

いちごパンツを盗んだことが!

「貧乏神殿?任意同行、願えますかな?」

い、嫌じゃ!

わしはこれから可愛い女神とお風呂に入ってにゃんにゃんするのじゃ!!

邪魔はさせん!!

わしの権能でお前ら全員貧乏にしてくれるわ!!

…ぬ?

発動せん…じゃと?

あの小娘の加護かぁぁぁぁ!!


猿田彦視点

なんだあのバカ。

同じ神と思うだけで吐き気がするぜ。

だが、俺も高天原警察の巡査長。

こっちから手は出せねぇ。

せっかく姉御から同窓会に誘われてるのにこんな時にこの捕物とか殴りたくなるぜ。

さっさと終わらせて会場にいきたいが…。

暴れる貧乏神を神力封じの枷で弱体化させる。

こいつの権能は凶悪だからな。

天照(あまてらす)様の加護がなければ俺も破産していたかもな。

だが、神力封じをかけられた神は貧弱だからな。

もう恐るるに足らんというわけだ。

ん?

無線?

被疑者を連れて姉御の店に向かえ?

どういうことだ?

俺のスマホが鳴る。

…そういうことかい。

俺は笑いが漏れそうになるのを我慢しながらなおも逃げようともがく貧乏神を連れて姉御の店に向かったよ。

その後の貧乏神?

さあ?

俺たちの忘年会に放り込まれてから先知らんよ。

埠頭でボロ雑巾みたいになって真っ白になったやつが放置されていたそうだけど、何があったんだろうな?

警察がそんなのでいいのかって?

見てないんだから仕方ねぇじゃねぇか。

現行犯じゃないから捕まえられないだろ?

運がなかっただけじゃないかね?

貧乏神だから運も何もないんだろうが、な。

天照様のパンツ?

姉御が回収してたよ。

天照様は処分しろと言っていたけど、多分こっそり保管するんじゃないかな?

姐御、天照様が絡むと途端にポンコツになるからな。

窃盗じゃないのかって?

善意の購入者に商品を渡しただけだが?

何か問題があるのかね?

ん?


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