第40話 目立つエルシアと狙うスカウト
第40話 目立つエルシアと狙うスカウト
エルシア視点
昼ごはんを食べたあと、ダーリンは夏休みに免許を取ったあとに買うバイクを見に行きたいということで1時間ほど別行動することになったわ。
正直あーしにはバイクのことはよく分からないからダーリンに付いてっても暇なのよね。
ダーリンの目がキラキラしているのを見るのも楽しいけど、ね。
で、あーしが何をしているかと言うと、東京の色街、歌舞伎町を適当にぶらついているってわけ。
あーしが統治していたところとの比較をしたかったってのもあるんだけどね。
まあ昼間ということもあるからか、娼婦とかはいないか。
ただなんというかゴチャついている感じがするわねぇ。
あと不快な視線も結構多いわ。
色街に一人で来ているあーしもあーしなんだけどさ。
へぇ。
こっちの宿屋は泊まるだけじゃなくて休憩とかあるのね。
まあ、しっぽりするための目的なんだろうけど。
向こうの世界で言うところの娼婦たちが給仕をしてくれる酒場付き宿屋みたいな感じかしらね。
わかんないけど。
ただ治安はあまり良くなさそうね。
さすがに向こうほどじゃないけどさ。
「ちょっとそこのきれいなお姉さん、少し話、いいかな?」
なにかしら…ってうわぁ。
見た目は普通だけど心を読まなくても下心丸見えね。
「…あーしになにか?」
とりあえず興味があるのを装うか。
「いや、ものすごくきれいだったからさ、声をかけさせてもらったのよ。時間いい?」
「間に合ってまーす」
この男はダメね。
あーしのこと舐めるように見てくるし体目的なのが見え見え。
ひらひらと手を振って男を巻いたわ。
あら、しつこくないのは加点できるわね。
「お姉さん、モデルとか興味ない?」
今度は別の男が声をかけてくる。
あーしが美人なのはわかるけど、そんなに尻軽に見えるのかなぁ。
まあ、サキュバスだから種族的には尻軽なんだけどさ。
ちらっと一瞥する。
うん。
これもハズレ。
「モデルって言ってもヌードとかそっち系でしょ?」
『な、なんでバレた!?』
読心術が使えるあーしならこのくらい朝飯前。
「悪いけどあーし、そんなに軽くないのよ。ほかを当たって」
「そ、そっか、ごめんね」
ほーん。
あまりしつこくないのね。
その後も何度も声をかけられたけど、心を読むとやれキャバクラだのソープだのあっち系の女優とかの声かけばっか。
場所が色街なのは仕方ないけど、どこも男向けのそういうの、多いのね。
チャラチャラした男もちらほら見かけるし。
あーしは声をかけてくる男どもを軽くいなしていたらタンドールという喫茶店が目に入ったのでそこに入ってやり過ごすことにした。
別に声をかけられるのは悪い気はしないのよ。
だけどあけすけにあーしの体目的での声かけとか舐めてんのかって話。
もうあーしの体はダーリンのものなんだからほかの男に体許すかっての。
頼んだアイスコーヒーを飲みながら外を眺める。
ダーリンの話だとああいう声をかけてくるのはナンパ師かスカウトってことらしいけど、正直鬱陶しいのよね。
一つため息。
「あの…」
今度は女性?
「なにかしら?」
「少しお話してもよろしいでしょうか?」
まあ、女性だからさっきの男どもとは違うから心配はしてないけど…。
「いいわよ。」
「わたくし光映社の山村と申します」
差し出された名刺を受け取って確認する。
ふむ。
心を読んでもあーしを原石と思っているみたいね。
「それで、光映社の人がどんな用件であーしに声をかけたのかしら?」
「実は、新たにファッションモデルを探すことになりまして、現在社をあげてモデルの候補を探しておりまして…」
…嘘は言ってないわね。
「美人でスタイルが良くて、身長も高く足も長い。女の私が見てもうらやましいと思うレベルでしたので声をかけさせてもらいました。」
「ふーん。」
あーし自身、承認欲求は強い方だからこういうのはやってみたい。
「つきましては弊社の専属モデルとして所属していただけないかと思いまして」
「…読者モデルにってこと?」
「はい。どうでしょうか?正直言いますと、大手ではないので断ってもらってもいいのですが、私としてはぜひにと思っています。」
さて、どうするか。
あーしが調べた感じだと恋愛禁止とか結構うるさいって聞くのよね。
「一つ聞きたいのだけれど、あーし、彼氏いるよ?おたくとして、それでもいいの?」
「あはは…やっぱり彼氏いますよねえ」
恋愛禁止っぽいね。
「うーん。あなたの写真を何枚か撮らせていただいても?」
「なんで?」
「社長を説得する材料にさせてほしいんです」
へえ…。
この人、本気なんだね。
いいじゃない。
あーしは撮影を快諾し、ほかの人に迷惑にならないようにしながら山村さんに撮影してもらった。
そのまま少し待っていてくださいって言ってお店を出ていったんだけど、そろそろあーしも合流時間なのよね。
とりあえずダーリンにタンドールにいることを連絡しとこ。
山村翔子視点
私は声をかけた女性、エルシアさんの写真を速攻でデータ化して社長にメールし、電話を入れる。
数コールのあと社長が電話に出たわ。
「社長、とんでもない逸材を見つけました」
『そうか。だがそれだけで電話をかけてきたわけではないのだろ?』
「はい。スカウトをするにあたり社内規約の所属モデルの恋愛禁止事項に抵触するので先に相談をと思いまして」
『…お前、本気で言ってんのか?』
「はい。その規約をねじ曲げてでもスカウトすべきと私は思います」
『馬鹿馬鹿しい。山村、そういう寝言は寝てから言うもんだぞ?』
「そう言われると思い、その女性の写真をメールで送りました。見ていただければ私が言っている意味をご理解いただけるかと」
『………』
あれ?
社長が無言に?
「社長?」
『これ、加工してないんだよな?』
「もちろんです。普通に撮っただけです」
『身長はどのくらいだ?』
「本人の話では185センチ、股下105センチとのことです。さすがにスリーサイズは聞けませんでしたが胸は確実にGはありますよ」
『ヤバいな。ほかの事務所に取られるのが惜しくなるほどの逸材だな』
「社長ならそう言ってくれると思いました」
『大手なら間違いなく手を出して来る。これはこの子を見つけて声をかけた山村のお手柄だな。しかし規約を変えるとなると…』
「手続きは面倒かもしれませんが変えてでも彼女は確保すべきかと。」
『よし、わかった。他の幹部と話してみる。その子には前向きに検討するとでも伝えておいてくれ』
「わかりました。そのように伝えます」
『普通に考えりゃ、これだけの美人なら恋人いても不思議じゃないわな』
「私もそう思いました。私が男なら間違いなく狙います」
『俺も若ければワンチャン狙うだろうな。山村、とりあえずご苦労。』
「規約の見直しの件、是非によろしくお願いします」
社長との通話を終えてエルシアさんのところに戻ると彼氏らしき人と談笑しているのが見えた。
さて、エルシアさんをうまく説得できるかしら。
しなきゃならないんだけどね。




