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キビエラあごえ

 人はいつから善悪を認識していくのだろうか…幸福と不幸…そして欲望。



 僕の名前はひき太郎…ちょっとおかしな名前…小学校3年生のごく普通の家庭でひとりっ子。

 決して裕福な家庭ではないけど,お父さんは優しくお母さんは天然の側から見たらどこにでもいる幸せそうな家族…

 今僕達の流行りはテレビゲーム。

 でもゲーム機もソフトもとても高くてお小遣いではとても買えない…

 学校へ行くと話しはゲームの事ばかりでもっていない僕はひとり机とにらめっこ。

 ひき太郎〜早く買ってもらえよ!

おまえんち貧乏か?

 それから始まる学校の中でのいじめ。


 そんな毎日が嫌になっているけど,とても親に買ってとは言えない…

 今日学校どうだったの?楽しかった?

そういう毎日も嫌になっていた。

 ある日…学校の帰り道…

おもちゃ屋さんに入りゲームコーナーに行った。

 お試しのゲームが置かれていてここでほんの数分ゲームをする…

 それも嫌になっていた。

 何も楽しくない!

ゲームはやりたいけど僕は…


    キビエラあごえ


 僕の後ろから何か聞こえた!

振り向くと誰もいない…

 なんだったんだろ?

僕は家に帰った…

 親には毎日学校楽しいと嘘を言い,嫌な毎日が終わる。

 友達と言う友達もいない…学校では貧乏と言われいじめられる。


   こんな毎日本当に嫌だ!

 

僕はテレビを見ていた…

 同じ小学校3年生がいじめで自殺をしたというニュースをやっている。

 死ぬ事がどういうことなのか僕はまだよくわからないけど死んだら幸せになれるのかな〜?

 少なくともいじめられる事はなくなるのか〜…

 でも僕はまだ死にたくはない。

 だけどこの毎日にはウンザリ!

 ならどうすれば良い?


 考えろ❗️考えろ‼️

そうだ!お金だ!お金があればゲームが買える!

 今僕の持っているお金は3,200円。

コツコツ貯めてもこれしかない…

 

 

     キビエラあごえ


 何?また?何か聞こえた!

 誰?誰かいるの?

僕の部屋を見渡しても僕しかいない…

 何て言ったかな?

 キビエラなんとか…

 意味不明…

 でも確かに聞こえた!

  

いつのまにか時間が経ち,親と夕飯を食べてお風呂に入って寝た。

 

 朝が来て朝食を食べてまた嫌な学校に行く…

 特に勉強ができるわけでもないし,運動が得意というわけでもない…

 体育の授業が終わった後,自分の席に戻ると机の上には貧乏太郎と落書きがされている。

 別に腹立たしいとは思わない…本当の事だから。

 1人その落書きを消す…

周りの子達はクスクスと笑っている。

 

 落書きなんてまだ可愛い方だ…

僕がトイレでうんちをしていると上から水をかけられてビチャビチャになった事も…

 体育の運動靴もビチャビチャにされている事も…

 やっている人達はみんなどうでもいい…

生きようが死のうが僕には関係ない…

 怒りなんてバカらしい…

怒ると自分が疲れるだけで何にもいい事はない…

 好きにしてくれ…

みんなそのうちわかるさ。

 何の意味もない事を…

いじめられている事は親にはもちろん先生にも話してはいない。

 くだらないことにエネルギーを使いたくないから…

 そう…

 ゲームも本当はどうでもよかったのかもしれない…

 ただ嘘をつく事が嫌だったのかもしれない…

 疲れた…嘘に…

 偽りの自分に…

学校が終わりひとりトボトボと家路につく。

 共働きの両親は大抵いない…

いつも食卓の上にはおやつが置かれている。

 結局のところ僕はひとりでいる事が多い…

 僕は迷っている…

 考えられる選択肢は…

 自殺…

 それ以外にもう道は…

 僕は何を望んでいるんだろ?

 毎日嘘で固めてひとり苦しんで…

 

僕は家から出た…

 誰もいないような場所へ向かって…

どんどん民家もなくなり車の通りもない山林に入っていく。

 徐々に暗闇が覆っていく…

僕はどこに向かっているんだろう?

 とにかくひたすら歩き,そして疲れた。

グゥグゥとお腹が鳴り出し空腹に襲われる。

 ポケットにおやつのチョコバーを入れてある事を思い出し,それを手に取る。

 体温で少し柔らかくなっているけどそれを開けて食べた。

 大きな木の根に座り休みながらゆっくりと食べる。

 光がなくなると本当に真っ暗な世界…

これでは歩く事もままならない。

 特に怖くは無い…お化けやら幽霊なんているはずはないのだから。

 ただの作り話…

でも本当にいたら少しは楽しくなるかも…

なんてことを考えて眠ってしまった。

 

 目が覚めると僕の体は動かなかった…

というより僕は木と同化していた。

 これは夢なの?夢に決まっている!

こんな事はありえない!


     キビエラあごえ


ん!確かに聞こえた!

 キビエラあごえ…

      誰?

それにこのよくわからない言葉は何?

 

 僕は木のようになりたかったのかもしれない…

 誰かに気を使うこともなく,嘘もつかなくていい…

 ただ日が昇り,そして沈み,鳥や動物,虫の声や風の音を聞きながら1日を終えて育つ植物。

 

    このままがいいな〜


 遠くから声が聞こえる…

    ひき太郎〜

    ひき太郎〜

 この声は父さんと母さんだ!

 

 僕は叫んだ!ここにいるよ〜

しかしその声は届かない…

 そうだ!あの言葉!あの呪文のような言葉なら届くかも!

 僕は叫んだ!

    

     キビエラあごえ!


     しかし…何も起きない…

 夢なら早く覚めて!

 その時初めて自分の望みがわかった!


 いじめなんてどうでもよかった…

 ゲームもどうでもよかった…

 ただ嘘をつかずにお父さんとお母さんと一緒に居たかった…

 ただそれだけだった…

それが僕の1番の幸せと気がついた。

 

    キビエラあごえ〜!


すると…


 僕は父さんの背中におぶさっていた…


  ひき太郎もう直ぐ病院だからな!

 しっかりするんだぞ!

 

 病院に着き,処置をしてもらい1日入院という事だった。

 父さんと母さんがずっとそばにいてくれて,いろんな話もして楽しい時間を過ごして眠りについた。

 あの言葉はなんだったんだろ?

 あれ!そういえばキビなんだっけ?

 思い出せない!

 でももういいや望みは叶ったから。


 

 

 

 

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