信用と気遣い
優子と由紀江と高次と助安は、由紀江のクッキーを食べた後、次の予定に移った。
「じゃあ、優子ちゃん、中村くん。ちょっと席を外してもらえるかな。」
「ん?なんでっすか?」
「ちょっとね。斎藤さんと私で大人のお話があるの。はいこれ。お金。」
そういって高次に三千円手渡された。
「喫茶店でも行って時間潰してきて。優子ちゃんも中村くんとなら大丈夫だろうから。」
そう由紀江から言われると高次は少し気に入らないようにこう言った。
「あのー、大人の話し合いなら俺も混ぜてほしいんすけど…。」
「あっはっは。何言ってるの。君まだ二十歳になってないでしょ。おこちゃまよ、おこちゃま。」
「それ、勝原ちゃんに同じこと言えるんすか…。ってか今年で二十歳ですけど。まだ十九だけど。」
「優子ちゃんは大人びてるからいいの。でも今回はちょっと外してほしいな。中村くんは優子ちゃんを守ってもらうためでもあるんだから。お願い。ね?」
「くっ!わかりましたよ。」
由紀江の謎の煽りのウザさとそこから反転するように出すあざとさ。高次は決してそのあざとさに負けて引いたわけではなく、ここで引き下がらないともっと面倒なことになると思ったので、ここまでにしておいたのだった。
「はいじゃあ、勝原ちゃんとどっか喫茶店にいるので、終わったら連絡くださーい。」
そう言って、高次と優子は一緒に事務所を出た。
下まで降りてきて、歩道に出た。
「いったい何が始まるというのかね。」
高次はつぶやいた。
優子は、
「何がですか?」
と問うた。
「いやあね、二人っきりで何の話をするのかなぁと。気にならん?」
「気にはなりますが、まあ、聞かれたくないことなのでしょう。そこまで踏み入るのは良くないということですね。」
「まじで大人びてんね。やっぱり女の子の方が大人びてんのかねぇ…。」
高次は空を見上げ、遠い目をした。優子はそれを純粋そうな目で見た後、由紀江の事務所をちらっと見た。優子も自分で言ったように気になっていないわけではない。
少しの間をおいて高次は優子に聞いた。
「じゃあ、喫茶店行こうか。どっかいいところある?」
「いえ、喫茶店はまだ、行ったことがありません。でも駅前に気になるところがあって、由紀江さんとも話していて。」
「あー、それなら天筒さんと入った方がいいな。」
「え?」
「せっかく天筒さんと話してた店なんでしょ?なら最初は天筒さんと入らないとねぇ。思い出を作らないとダメじゃん?他になんかない?スマホで検索すっかー。」
そう言いながら高次はスマホを取り出し喫茶店を探し出した。
優子は高次のさりげない気遣いに感銘を受けた。その気遣いは、物理的なものとは違う、感情的な気遣いとでも言おうか、思い出を作るなら由紀江と先に作った方がいいという、優子に対しての気遣い。それは優子にとってとてもありがたいものだった。やはり高次のことは信頼できる人だと思った。
「お、ここいい感じじゃん。ショッピングセンターの近く。結構歩くけど、まあいいじゃんね?駅前とも変わらないし距離的に。」
「はい。そこは知らないので、案内お願いします。行きましょう。」
「よーし、行こう。」
というわけで優子と高次は一緒に喫茶店へ歩き始めた。




