特捜局の訪問
「勝原優子が天筒さんのところに行ってから初めてっスよね?ここ来るの。」
「そうだな。何かあれば報告は来るだろうし、特に問題はないんだろう。定期報告だからそこまで固くなる必要はない。」
「大丈夫ですよ。全然気持ちゆるゆるっす。それにしても不思議っすね。北陸新幹線よりも東海道経由の方が早いなんて。」
「そんなものだろう。北陸新幹線は東海道とは立ち位置も本数も違うんだからな。」
上司の斎藤助安とその部下(非常勤)の中村高次は敦賀に来ていた。着いたのは十時半ごろ。由紀江の事務所には十一時に着く予定である。しばらく時間をつぶし、タクシーを使って由紀江の家に来ていた。
時間ぴったりに由紀江の二階の事務所にインターホンを鳴らして顔を出した。
扉が開き、
「こんにちは。どうぞ。」
由紀江が出てきて挨拶をした。
「勝原ちゃん、元気してたかい?」
高次が優子に声をかけた。
「はい。おかげさまで。」
「そうかそうか、ならよかった。」
高次も優子の境遇を大体は知っていたので、優子のことを心配していた。
「どうぞ、こちらに。」
由紀江は事務所の中心辺りにあるソファーとテーブルが置いてあるところに二人を案内して、優子はその間にお茶を取りに行ってテーブルに置いた。
「ありがとう。」
「あ、どうもっす。」
助安と高次は優子にお礼を言った。
由紀江と優子も座ったところで、二人ずつ向かい合って報告と話し合いが始まった。
まず報告は由紀江が作った報告の資料を見てもらいながら助安に報告した。時々優子に直接尋ねることもあった。高次はそれを横目でお茶を飲みながら聞いていた。
由紀江と優子からの報告や聞き取りを終えたら、時間は十二時半になっていた。
いったん話が途切れた時に、高次が
「なんか腹減りませんか?」
といった。助安は、
「そうだな。昼か。じゃあ続きは午後二時からにするか。」
と、時計を見ながら言った。午後からも助安や高次側からの話がある。いったん昼休憩とすることにした。
「わかりました。お昼どうしますか?」
由紀江が助安に聞いた。
「どこか食べに行くが。」
「じゃあ私たちも一緒にいいですか?」
由紀江は両手の指先を合わせて助安に言った。
「は?いや、そんなキャラじゃないだろ、天筒。」
助安は話の内容がどうこうよりもその天筒のしぐさにツッコんだ。
「いやですね、女の武器ですよ。で、私たちもご一緒できますか?というか、私たちとご一緒したいですか?」
「はあ、わかった。どこ行く?」
由紀江に助安が折れた。
「やったぁ!優子ちゃん、斎藤さんがおごってくれるって!」
それを聞いた助安がすぐさまツッコんだ。
「は?おごるとまでは言ってないだろ。」
「え?私たちに自腹出させるんですか?」
「…。ずうずうしいな。今回だけだぞ。」
「よかったぁー!ありがとうございますー。」
なんだか普段の由紀江と助安のそれぞれの性格では考えられないような会話に、優子と高次はじとーっとその様子を見ていた。
「中村さん。あの二人って仲いいんですか?」
優子が小さな声で高次に聞いた。
「うーむ、仲がいいかどうかはわからないけどね、それよりも、天筒さんがやり手なんだろう。恐ろしい女だ、天筒由紀江は。」
こそこそと高次も優子に向かって話した。すると由紀江が、
「んー?なんか私の名前が聞こえたぞー?」
「ひっ!何でもないっす!」
もはや助安も高次も由紀江にはかなわないようである。




