お泊りの提案
「優子ちゃん。今週の週末、うちでお泊り会しない?」
「え?」
由紀江は優子にお泊り会の提案をした。由紀江自身、あれからというもの、夜を一人で過ごしていて、もの悲しさをずっと感じていた。優子と過ごした城崎温泉での楽しさが忘れられないのだ。優子はあまり話す方ではないが、城崎温泉ではたくさん話せた。優子という人間を改めて知るきっかけとなった。むしろあそこでいろいろ話しすぎて話題がなくなってしまったと言えばそうとも言えるのだが、それでも優子との時間は由紀江にとって癒しをもたらしていたのだった。
対して優子も、城崎温泉での由紀江との思いが残っていたし、由紀江の言葉や感覚が忘れられなかった。しかし、日々を忙しそうに過ごしている社長である由紀江に、安易に時間を取らせるのも申し訳ない気がして、なかなか一緒に何かしようということは言い出せずにいた。
由紀江はなんとなく優子が自分に話しかけるのをためらっているような気がしていた。というより、話自体はするのだが、プライベートの話はほとんどしなかった。それに加えて、仕事中以外は会うことがなかったため、城崎温泉の旅行以降、プライベートで会っていないこと、話していないことが、由紀江にとっては少し気がかりだった。それもあっての、今回の提案である。
「わかりました。ありがとうございます。誘ってくれて。今週末、由紀江さんの家に行きます。」
「よかった。じゃあ、二日連続で、金曜土曜日曜の二泊三日でどう?」
「はい、よろしくお願いします。」
ということで、由紀江の家で泊まることとなった。
優子は木曜の夜、準備をして、床に就いた。
「あなたなんて産まなければよかった。」
優子は、パッと目を覚ました。時間は二時半。汗をかいていた。枕元には明日のお泊り会のために準備した持ち物がそろっている。
体勢を起こし、真っ暗の中気持ちを落ち着かせる。
心臓がドクンドクンと大きな振動を立てている。
優子はしばらく、布団に視線を落とした後、目を少しつぶる。すると、『あなたなんて』と、聞こえないはずの声が聞こえる。
優子はバッと耳をふさぐが、聴覚として聞こえているわけではない。目を開けると、その声は消える。
脳が覚醒しているのか。それから優子は寝ることができず、外が明るくなってきたころに、やっと少し寝ることができて、すぐに朝のタイマーが鳴った。
優子にとっては、このことは、すでに十回目近く起こっている出来事である。




