表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
203/216

星が落ちる先1

 学園長ロウエル・トゥールは、避難所を守っていた。


 ハーファン北部の中規模都市。

 その都市の聖堂には、近郊の住民と共に、リーンデース魔法学園の生徒達が避難していた。

 

 それ(・・)が始まったのは、全生徒が安全に避難してから半刻ほど後。

 小型竜を使役して哨戒を行っていた一人の学徒が、黒い蝶を発見した。

 吸血鬼の眷属と目されていたそれを、その学徒は速やかに教師たちに報告した。


 黒い蝶は一匹ではなく、数百匹が目撃されていた。

 蝶のほとんどは竜の息(ブレス)の射程外にいたため、取り逃がしてしまった。


 報告を受けたトゥールは、すぐさま対応に動いた。

 元々あった結界に加え、魔法塔からの魔力供給を利用した多層広域結界を聖堂に展開。

 戦闘に長けた有志の教師・学徒を、迎撃要員として配置。


 黒い蝶の消失から十数分後、都市を埋め尽くさんばかりの〈猟犬〉の群れが、聖堂を取り囲んだ。

 トゥールの素早い対応が功を奏し、その時には既に学園側は迎撃の体勢を整えていた。


 かくして、戦端は開かれた。


 四重の結界によって区切られた領域の最外縁に布かれた第一陣。

 その中でも最も危険な場所を、トゥールは受け持っていた。


 正面入口目がけて殺到する複数の〈猟犬〉が、まとめて極大の火球(ファイアボール)に飲み込まれた。

 詠唱の合間にも〈猟犬〉が抜けてくるが、炎を纏わせた長剣で切り払って数を減らす。

 それらと並行し、炎の人工精霊を三体同時に操り、上空から結界に取り付く血啜りの眷属たちも焼いていく。


 トゥールは善戦していたが、〈猟犬〉の数が多すぎた。


 どんなに焼き尽くしても、後から後から〈猟犬〉が現れる。

 防衛戦を突破した化物たちによって結界は削られ、それを繰り返すうちに一番外側の結界が破壊されてしまう。

 そのたびに、トゥールは繰り返し結界を展開した。


 しかし、それからしばらく経った戦闘の最中、聖堂の近隣にある魔法塔からの魔力供給が突如として断たれた。

 吸血鬼の策略により、彼らは魔法的にも孤立し、自身の魔力のみに頼らなければならなくなったのである。


 魔力供給を断たれてから四回目の結界展開。

 トゥールの心臓の鼓動は乱れ、息も上がってきた。


 魔法使いの能力は、精神と肉体に左右される。

 老境のトゥールの肉体は、彼の最盛期のそれと比べて、遥かに劣っていた。


 数ヶ月前、仇敵が学徒二名によって倒されたことも、精神に大きく影響を与えていたのだろう。

 長きに渡る熾火のような静かな怒りは、トゥールの心から失せてしまっていた。


 老いた体に、怒りを失った心。

 とうに力尽きていても、おかしくはなかったのだ。


 他の戦場からも、戦いの音が聞こえてくる。


 同じ第一陣の図書館長ジョルジュ・オルビスも、魔法鉱物学の教師ヴェルヘルム・ノクシアも、まだ持ちこたえている。

 竜騎士であり騎獣術の教師であるアントワーヌ・ノドゥスは最年少ながらも善戦し、まだ制空権を保っている。

 第二陣の教師たちを率いている教頭イーニッド・ムールに、これ以上負担をかけるわけには行かない。


 何より、あのハーラン・スレイソンと約束したのだ。

 必ずや学徒たちを守り切る、と。


 彼の強固な意志──生徒を守り抜くという意思だけが、既に限界を越えたトゥールを支えていた。

 トゥールは結界を展開するために、もう一度詠唱を始める。


 魔力が足りないのならば、この命を燃やし尽くしてでも。

 決死の覚悟が、彼の胸中に炎となって灯る。



 その時、星が落ちた。



 命も尽き果てるかと思われたトゥールの肉体に、魔力が満ちていく。

 彼はその意味を、おぼろげに悟る。


 吸血鬼勢力によって妨害されていた魔法塔の制御が、誰かによって取り戻されている。

 名も知らぬ誰かが、人々のために。


 不意に、トゥールの脳裏を、積年の仇を彼に代わって討ち果たした二人の学徒の顔が過る。

 避難者名簿の中には、彼女たちの名はなかった。


 若人が力を尽くしているのだ。

 まだ、朽ちるわけにはいかない。


 決意を新たにして、トゥールは詠唱を再開する。

 彼の長杖から巻き起こった黄金の炎は、堅牢な結界となって聖堂を包み込んだ。




      ☆




 魔法使いエヴァン・ハイアルンは、〈猟犬〉と戦っていた。


 聖堂の周辺・第三結界外縁。

 リーンデース魔法学園生徒の有志たちは、結界の破壊を目論む吸血鬼の眷属たちに対抗すべく、迎撃隊第三陣を結成していた。


 ハイアルンとロアルド・スランの二人組は、その東側を担当していた。


 二匹の〈猟犬〉がスランが放った炎の壁(ファイア・ウォール)を突き抜けて駆けてくる。

 恐怖で硬直してしまったスランの眼前で、〈猟犬〉たちは突然氷漬けになって地面に転がった。


 ハイアルンの唱えた氷の柩(アイス・コフィン)によるものだ。

 二つの氷塊は粉々に砕け、それとともに〈猟犬〉は塵となって消えていく。


「や、やった……っ!」


 それを確認したスランは安堵の声をあげた。


「油断するな、スラン!」


 ハイアルンが叫んだのとほぼ同時に、民家の窓を破って三匹の〈猟犬〉が飛び出してくる。

 獣たちの狙いは、無防備なスランだ。


 ハイアルンは長馳せ(ロングストライダー)によって加速し、一足でスランを追い抜く。

 短縮詠唱によって長杖に氷の魔法剣を生成し、一閃。

 二匹までが氷の刃によって両断されたが、一匹はハイアルンの斬撃を回避した。


 スランの眼前で〈猟犬〉の腹がぱっくりと開き、無数の牙が生えた体内が露わになる。

 しかし、その牙はスランに届かなかった。


 ハイアルンの人工精霊が展開した凝結の盾(コンデンセイションシールド)に阻まれ、異形の獣は空中でもがいていた。

 直後、ハイアルンの放った氷柱の槍(アイシクル・スピア)に貫かれ、最後の〈猟犬〉も動かなくなった。


「ひっ」


 動かぬ肉塊となった〈猟犬〉の悍しい姿に、スランの表情が恐怖で引き攣る。

 尻餅をついたままのスランを尻目に、ハイアルンは油断なく次の襲撃に備えた。


「す、すいません、先輩……」


 スランは少しでもハイアルンに借りを返したいという思いで、震えながら詠唱を開始する。

 彼の得意の炎の呪文ではなく、未来視の呪文だ。


「奴ら、また来ますよ! 今度は空から! 方向は北東から……四つ足じゃなくて黒い何かが……す、すいません、数は、正しく見られなくて……なんか、一匹の黒い何かがどんどん分裂して、とにかく大群になって……!」


 スランはわずかに未来視の適性を持っていたが、可能性の選定精度が低かった。

 そして、選定精度の低い未来視は術者の心をさらに不安定にさせ、結果の精度が落ちていく。


 ハイアルンはそのことをよく理解していた。


「気にするな。数が多いってことが分かっただけでも十分だ」


 ハイアルンは、長杖を構えて、幾つもの凝結の盾を展開するための詠唱を開始した。

 彼にとって数をこなすことは苦でなかった。


 この戦闘も、あの錬金術師との決闘よりはよほど楽だ。

 それに尋常ではない数の呪文の充填を強請られたお陰もあって、凝結の盾の多重展開は慣れたものだ。


 業腹だが、あのエーリカ・アウレリアに感謝するべきなのだろうとハイアルンは思った。


「先輩、いまから人工精霊を展開します……!」

「止めておけ、スラン」


 スランが未来視補助ための人工精霊を展開しようとするのを、ハイアルンは制止する。

 スランはもう魔力枯渇寸前だった。


「どう見ても限界じゃないか。もう聖堂に戻っていろよ」

「先輩……」

「とっとと行け!!」

「は……はいっ!」


 スランが一礼して聖堂へ駆け出すと、ハイアルンは胸ポケットの中の護符にそっと触れた。

 それは、幼馴染みのシャーロットが彼に贈ったものだった。

 護符からハイアルンは勇気を貰い、闘志を高める。


 ハイアルンの詠唱は完了し、空一面に凝結の盾が完成する。


 千切れた雲に隠れていた満月が、今は空を明るく照らしている。

 ハイアルンは何者かによって自分に強力な魔法がかけられたのを理解した。


 誰の魔法か。

 霊視の魔眼(グラムサイト)で確認したハイアルンは驚愕した。

 それはあのクラウス・ハーファンの魔法だった。


「クラウス様が……なぜ今……いや、いったい何処から?」


 ハイアルンが見上げると、天空の遥か彼方に、見たこともない魔力が満ち始めていた。

 奇怪かつ複雑な魔力の軌跡に、彼は目を奪われる。



 その時、星が落ちた。



 星の落下と同時に、大地の下の霊脈が脈打つ。


 数秒遅れて、断続的に微震が足元まで伝わってきた。

 一番近い星ですら、山三つは向こうに落ちたはずなのに。

 あまりにも規格外すぎる魔法の威力に、ハイアルンは背筋が冷えるのを感じた。


 呪文作成者の名前は、よく見知った錬金術師だった。

 だったら、この星はあの(・・)エーリカが落としたものだ。


 ハイアルンは、そう確信して頬を引きつらせた。




      ☆




 ウトファル騎士団のヤン・カールソンは、音もなく夜の森を駆けていた。


 リーンデースより西側の地方都市。

 カールソンは連絡員としての任務の後に、逃げ遅れた人々の救助に参加していた。


 カールソンは岩陰から、五メートルほど離れた大木の陰へ移動していく。

 身体強化を使い、研ぎ澄ました五感で周囲の様子を探る。

 近くに何もいないことを確認すると、彼は岩陰に向かって合図を送った。


 岩陰には、カールソンの背を見つめる十歳ほどの少女と八歳ほどの少年が隠れていた。

 付近の村に住む、逃げ遅れた姉弟だ。


 二人は辿々しい足取りで、僅かに物音を立てながらカールソンのいる場所まで走ってくる。


 姉弟が大木に身を隠したのを確認し、カールソンは次の物陰へと駆ける。

 その繰り返しだ。


 彼の今の最重要目的は、この姉弟を聖堂に避難している親族の元へ届けること。

 不安そうに彼を見つめる少女に、カールソンは声をかけた。


「大丈夫だよ、もうすぐそこだ」


 聖堂までの距離は、あとたったの五十メートルほど。


 聖堂に続く細道は、何者の影も見えなかった。

 カールソンは安堵のため息を吐いた後に、不意に不安が胸を過った。


 もしやと思い、来た道を振り返る。

 一匹の獣の、影が見えた。


 犬に似ていながらも犬ではないその姿を、カールソンはよく知っていた。

 自分たちの物音が引き寄せたのか、聖堂の結界を破壊するために集まってきたのか。


 カールソンの手持ちの武器は、愛用の短剣二本と、念のために避難所から持ち出してきた短杖(ワンド)二本。

 短杖は、魔弾の杖と突風の杖だった。

 篤志家の錬金術師がつい最近教会に寄付したものらしい。


 カールソンはあたりを注意深く見回す。

 その一匹以外に怪しい影はない。 

 

 短杖を構えて、敵へ狙いを定める。

 突風の呪文の一撃は命中し、〈猟犬〉は岩に叩きつけられた。


 呪文が発動すると同時に、カールソンの腕に電流のような異様な痺れが走り、突然渦巻いた風に腕ごと弾かれた。

 短杖(ワンド)を持っていかれそうになり、慌てて握力を強化して堪える。

 短杖には反動があることを、カールソンは思い出す。


 その間にも、〈猟犬〉はゆるりとこちらに向かってくる。


 どうせ壊れるなら、と思い、カールソンは利き腕ではなく左手で魔弾の杖を握る。

 暗闇に紛れた敵の姿を、視覚の身体強化で見定める。


 カールソンは敵から視線を離さないまま、短剣の一つを鞘ごとベルトから外し、姉弟に差し出す。

 戸惑う姉の代わりに、弟が手を差し出して短剣を受け取る。


「君なら絶対にお姉さんを守れる。さあ、聖堂に向かって全力で走って!」


 走り出した姉弟を追って〈猟犬〉が速度を上げた。


「こっちに来いよ! 子供より俺の方が食い甲斐があるぞ!」

 

 カールソンは大きな声で挑発しながら、敵に向かって一回、二回と魔弾の杖を振った。

 それぞれ頭部と右前脚に命中したが、倒し切れなかった。

 千切れた体のまま、〈猟犬〉は狙いをカールソンに切り替え、迫り来る。


 すんでのところで、短剣が〈猟犬〉の爪を弾く。

 恐怖と痛みを噛み殺し、カールソンは立て続けに短杖を振った。

 三回、四回。 


 至近距離からの魔弾の連射を受けて、やっと〈猟犬〉は灰となり風に舞った。


 安堵したのも束の間、舞い散る灰が晴れるとともに、闇の中でたくさんの小さな光が輝く。

 〈猟犬〉の群れだ。

 気がつけば、カールソンは敵に取り囲まれていた。


 カールソンは痺れの残る左手を数度開閉しながら、背後をチラリと見た。

 あの小さな姉弟は、どうやら聖堂の結界の内側に逃げ込めたようだ。

 彼は再び敵に視線を戻した。



 その時、星が落ちた。 



 敵を見据えていたカールソンは空の星に気がつくこともなく、ただ静かに得物を構えた。


 この危機的状況にあって、カールソンは不思議な充足を得ていた。

 小さな姉弟が逃げ延びたことで、過去の自分たち姉弟が救われたような気がしていたからだ。




      ☆




 エーリカの友人マーキア・ジョーナスは、聖堂の警邏を担当していた。


 聖堂の西側上部にある、最も高い鐘楼。

 哨戒網の要であるマーキアが配置されていたのは、そんな場所だった。


 マーキアが連れてきた沢山の小型竜は、どんな人間よりも優秀な斥候だった。

 空に飛び立ったマーキアの妹達は、定期的に鐘楼に戻り、連絡を伝える。 


 逃げ遅れた人々が今どこにいるのか。

 結界のどのあたりが攻撃されているのか。


 吸血鬼の眷属らしい蝙蝠に襲われれば竜の息で焼き切り、小さな竜たちは姉の元に必ず生還して情報を伝える。

 そして、マーキアは妹たちからの情報をまとめて、救助担当や防衛担当の生徒に伝えていく。


「マーキアさん、無理は禁物ですのよ……?」


 トリシア・レイルズはそう言って、ゴーレム用の熱源で作った暖房器具をマーキアの横に置いた。

 寒さが厳しい季節にずっと鐘楼の上にいるマーキアを思いやってのことだ。


「トリシアさんこそ働きづめでしてよ? ずっと暖房器具を作っていらっしゃるところを、小型竜(いもうと)たちが見ていましてよ」

「マーキアさんほどではありませんのよ。ほら、こんなに手が冷えていますのよ?」


 トリシアはマーキアにそっと手を重ねた。

 高所に座り、ずっと竜に指示を出していたマーキアの指先は、芯まで冷え切っていた。


「先生がたも、先輩がたも頑張っていましてよ。私達だって多少は頑張らなければ」


 マーキアは空を眺めた。

 その時、彼女は空の遥か上方の王竜を経由したオーギュスト・イグニシアの呼びかけを受け取った。


「……どこからか、天使様の声が聞こえてきましてよ……」

「天使様……?」


 マーキアの突然の声に、トリシアは目を丸くする。


「私たちを導く天使の声が……いえ、この声はきっとオーギュスト殿下……おそらく精神感応を使って、人々に避難先を指示してらっしゃいましてよ!」


 マーキアはオーギュストの現状を正しく理解した。


「さすがオーギュスト殿下ですのよ!」

「それと、おそらくエーリカ様も空の不思議な場所にいるようでしてよ」


 マーキアは妹達が伝えてくれた空の様子からも、現在の状況を理解していた。


「もうすぐ、エーリカ様が奇跡を起こしましてよ」


 空に今までに見たことのない魔力が広がっていると妹たちは言っていた。

 そんなことを可能にする人間を、マーキアはエーリカ一人しか知らなかった。 


「奇跡? それは一体なんですの、マーキアさん?」

「ほら! 見てくださいまし、トリシアさん!」


 マーキアはそっと空を指差した。



 その時、星が落ちた。



 マーキアとトリシアの瞳に、流れる星がキラキラと映る。


「まあ〜〜! あれはきっと錬金術師の星ですのよ!!」


 トリシアは興奮して声を上げた。

 すぐさま、霊視の魔眼(グラムサイト)の杖を取り出して、マーキアと自分に振る。


 トリシアとマーキアは空を見つめ、次々に落ちる星を目で追った。


「呪文の製作者はハロルド・ニーベルハイム三世……思った通り、それなら使い手はエーリカ様でしてよ」

「なんて素敵! 勝利は目前ですのよ!」


 二人は誰よりも早く勝利を確信し、手を取り合って喜びの声を上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
間に挟まれる、「その時、星が落ちた。」 の一文が、痺れるくらい格好いいですね!
[良い点] 今回泣けます。本当に最高です。
[良い点] エーリカ達主人公サイドからだけでなく、知り合い友人戦友たちからの視点が描かれていくのいいですね! わくわくします! [一言] クライマックス感が高まってきて、ドキドキと切なさが入り混じって…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ