2.授業
そんなことを話しながら歩いていると、学校に着いた。
時刻は十時を過ぎ、すでに三時間目の授業が始まっている頃だった。
「三時間目ってなんだっけ?」
俺は碧に聞いた。時間割なんて覚えていない。
「あー、歴史? だった気がする」
「まぁ、行けば分かるだろ」
そんな会話をしながら、俺たちは教室へ向かった。
「全く、一クラスしかないのに、なんでわざわざ三階の教室を使うのかな」
ずっと疑問だった。
一クラスしかないなら、一階の方が便利だろう。
三階のメリットといえば、他の階よりも少しばかり景色がいいことくらいだ。
「知らねー。まぁ、いいだろ。階段登るのも運動だと思えよ」
碧がヘラヘラと言う。
そういえば、こいつ、最近少し筋肉がついてきたような……。
そんなことを考えているうちに、教室に着いた。
扉を開ける。
「やっと来ましたか」
「祐二くん。碧くん」
優先生だ。
いつも敬語で、何を考えているのかよく分からない。俺はこの人が苦手だ。
「遅れてすみません。寝坊です」
正直に言う。嘘をつくのも面倒だ。
「そうですか。席に着いてください」
「碧くん。お迎えご苦労様です」
怒らない。
こういうところが先生っぽくないし、よく分からない。
俺と碧は席に着いた。
基本的に、どこに座るかは自由だ。
碧はいつも一番前で、俺はいつも後ろの窓側。
「授業を再開します。続き、九十二ページから」
優先生が教科書を開く。
「セラフの殺し方を述べよ」
「凪くん」
優先生は凪を指名した。
「はい」
凪が立ち上がる。
白く短い髪。相変わらず綺麗な顔をしている。美人だ。
「セラフの額にある核に一定以上の電力を与えると、セラフはショート状態になり、活動不能になります」
今日も今日とて優等生だ、凪は。
「よろしい。予習は完璧ですね、凪くん」
優先生は満足そうに頷いた。
「セラフはあくまで人類が生み出した生物です。自然繁殖はできず、三十二年前、人類がセラフを生み出した時点の個体数から増えていません」
「では、なぜセラフは核に一定以上の電力を与えられると活動不能になるのか」
「碧くん」
次は碧だ。
優先生の授業は、予習してあることが前提だ。
だから苦手なのもある。
一から教えてほしいのに、その一を知っていることが前提なのだ。
「はい!! えーっと……確かー」
「セラフは人類が作り出した生物で、肉体を持ってるけど、体を動かすために機械を取り入れてるから!!」
碧が答えた。
こいつも勉強しているんだ。
知ってはいたが、普段の言動のせいで意外性がある。
「よろしい。セラフは体内に機械を所持しています。その機械が壊れれば、肉体を持っていても動かなくなる」
優先生は教科書を指でなぞりながら続けた。
「その機械に外側から干渉できるのが核です。なので、核に電力を与えるのです」
「それでは、ここまで。挨拶はいりません」
優先生が教室を出たのと同時に、チャイムが鳴った。
心底不思議な人だ。
「はーー、終わったー。ほぼ受けてねーけど」
碧がそんなことを言いながら、笑って俺の席に近づいてくる。
「あれ? つーか、朔どこいった?」
「つーか、里津も」
教室を見渡す。
俺たちは五人クラスだ。
「どうせ朔は図書室だよ。里津がいないのは珍しいけど」
俺は言った。
朔は基本的に授業を受けない。
「里津は、用事があるって」
凪がこちらの会話を聞いていたのか、こっちに向かって言った。




