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6「モーニングルーティーン2」

遅くなりましたが、6話です。


今回は新人メイドのタマキの朝です。


 新人メイドであるタマキは、いまだ、屋敷の怒涛の朝に慣れそうにない。


 朝五時十五分ーーユヅキが起床してから既に四十五分が経過している頃、彼女も輝く朝日に顔を照らされながら目をこすりながら起床する。

 この屋敷で一番早く起きるのはユヅキだが、最後に起きるのがタマキだ。それでも此処には四十五分の差が存在している。


『ふわぁ〜今日もユヅキさん早いなぁー』


 完全に起きていない脳を起こすため、動かない身体に鞭を打ち洗面台に向かい、其処で冷水を数回顔に浴びる。まずは洗顔をすることから彼女の1日は始まる。何よりも先に洗顔をしなければその日一日中頭が働かないレベルとのことだ。

 どこかの先輩とは違い、人間らしい朝の始まり方である。そして、洗顔を済まし、メイドの正装に身を包む頃には決まって屋敷に同じような雄叫びが響めく。


「ああああああああああ!!」


 ユヅキによる朝のご主人殺しの結果、毎度、ご主人様は叫ばれる。決まって五時半前後だ。とはいえどやはり朝イチで聞くご主人の声が叫び声なのは心配になるのだろうか、ユヅキと毎回入れ替わって部屋に入る時には飛び込むように部屋に駆けつける。


 此処からが、タマキの一番最初の仕事だ。


『ご主人様ーーまたユヅキさん怒らせたんすか〜?懲りないっすねー』


 新人メイドーータマキはユヅキとは異なる形で距離が近い。ユヅキとシンは物理的に距離を近くしようとするが、タマキの場合、空気感というか、心の距離が主従関係というよりは友達に近い。呼称こそご主人様ではあるものの、敬語とはいえない接し方でいつも話している。

 そんなタマキの此処での仕事は後片付けだ。それも時間制限付きのである。


『そろそろ諦めたらどうっすかー?あ、掃除するんで部屋出てもらっていいっすか?』


 タマキと云う新人メイド、態度こそメイドっぽくないものの、潜在能力は桁違いに高い。家事というか、物事を正確に、早く終わらせる力が極めて高く、その点はユヅキに匹敵するといっても差し支えない。

 朝の朝礼が始まるまでのわずかな時間で、血に染まった部屋を綺麗にし、布団や洗濯物を整えるーーが、未だ、朝のその仕事を誰にも見せたことはない。

 


 朝五時半頃ーーメイドの朝礼で手短にその日の予定のすり合わせを行い、数人のメイドはユヅキと共に食堂に向かう中、タマキはご主人様の身辺準備を行う。この屋敷では珍しいことに新人メイドは一番最初にご主人様関連の仕事を覚える。それから家事ーーそして食事の準備を習得していく。


「今日も朝から激しかったわ。もっとマシな起こし方できないのかな」


 起こされてから三十分以上経過した後でも、いまだにパジャマに身を包むご主人様の隣を歩くタマキに彼は半分愚痴のように吐露する。

 今から向かうのは屋敷の外ーーガーデンに水をあげに行くのだ。ガーデン関連の家事は基本的にご主人様であるシンが趣味として行うために、メイドが手を加えることは一切ない。その中、数人のメイドが一緒に交流という形で毎朝ご主人様と水をあげに行く。

 最近はタマキ一人が付き添うことになっているがーーユヅキは快く思っていないそう。


『愛情表現みたいでいいじゃないっすかーー!羨ましいっすよー!』


「愛情表現で殺してくるてなんだよ!なんかこう、朝起きたら隣で寝てて、「おはようございますご主人様♡」みたいな感じのことできないのかな??」


『あ、じゃああたしがやってあげましょうか!?!?』


「いやーー絶対いらない!」


『あひんっっ!酷いご主人様!かわいいあたしがせっかくご主人様のためにやってあげようと思ったのに!』


 たわいない話をしながら、廊下を歩いている朝の時間は、タマキにとって数少ない癒しだ。というのも、ユヅキとシン以外の全メイドからの扱いがかなり酷く、相対的に楽しい時間が優しく接してくれる彼との時間くらいしかないのだ。


『ご主人様!今日めっちゃ日差し強いんすけど、日傘さします??』


 玄関に着くと、タマキは日傘を手に取り、彼に提案話をする。

 ご主人様の健康を気遣うのはメイドとしての責務であり、其れをタマキも理解していた。だからこそタマキなりに慣れないものの、自分なりの言葉遣いで彼に提案する。


「嗚呼。いらないよ。それよりもタマキくんが使った方がいいんじゃないか?」


『え、あ、じゃあお言葉に甘えてーー』


「熱中症とか危ないからな。気をつけてな」


 優しさを受け取り、ドアを開け、日傘を広げる。燦々と輝く太陽を遮るも、彼の笑顔までは遮れない。

 そんな優しい彼がタマキは好きだ。恋愛的な意味も多少は含むが、兄のように慕っている感じに近い。


 朝六時半ーー庭園を歩きながら、水も巻き終わり、一通りの外の仕事も終わると、ようやく朝食の時間がやってくる。

 とはいっても、食べるのは彼であり、タマキ達メイドはもう少し後になる。


「じゃ、今日も頑張ってね」


『はい!いってらっしゃいませー!』


 そう言い朝食が用意されている部屋に入っていく彼を見送り、タマキは次の仕事へと取り掛かる。


 ベテランメイド、ユヅキに比べ未だやることは少ないものの、しっかりとメイドの勤めを果たしている新人メイドーータマキ。


『よーっし!張り切っちゃお!!』


 ドアが閉まるとタマキは拳をグッと握りしめ、上を見上げる。ユヅキのように優秀なメイドになる自分を想像し、自然と笑みが溢れる。


『じゃ、早速ーーっ』


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!」


 想像を終わらせ、次の仕事へと歩みを進めようとした途端、背後からものすごい叫び声が聞こえた。

 でもこの声は知っている。だって毎朝聞かされているのだから。驚きもしなくなった叫び声。


 だけどーータマキはドアを開く。


「どどどどうしましたかぁご主人様ぁぁー!!!」


 叫び声を気にせずに淡々と仕事をこなせるようになるのは、まだまだ先かもしれない。




6話目読んでいただきありがとうございます!


次回は屋敷探検です。



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