1「告白したら返ってきたのは殺意でした」
お目にかかりありがとうございます!
『お疲れ様ですーーご主人様』
「うむ。ありがとうな。ユヅキ」
誰もが二度見するような可憐で、美しさを具現化したような髪の短い、メイド服に身を包んだ女性が機械的に挨拶をする。その相手は彼女の雇い主だ。
其れに対し礼を言うのは、この大豪邸に住む彼女のご主人であるシンだ。
目が焼けるような程輝いている黄金の壁、巨大なガラスのシャンデリア、パーティーなどで使うような豪華な長机。
其れ等に囲まれた大豪邸に、全くふさわしくないような庶民的な服装に身を包んでいる彼は、長机の上座に座り、豪華な夕飯を食べていた。
メイドの彼女はそのすぐ真隣に背筋をピンと伸ばし、立っている。
『ところで、ご主人様。急遽呼び出しをなされましたが、何事でございましょうか』
いつも通り礼儀正しい言葉で、かしこまった態度でご主人である彼に御用は何かと、問いを投げる。
「焦るでないーーとりあえず、向かいの席に座ってくれ」
『かしこまりました。』
ご命令とあればと、いったように彼女は彼の指示に対し一礼し、彼が座る向かいの席に移動する。向かいの席の机にもおいてあるのは、豪華な食事を食べる彼と同様の代物。
席に座り、彼女は不思議そうに料理を見つめると、顔をあげ、彼を見て言葉を投げる。
『私は何をいたしましょうか?』
おそらくはご飯を一緒に食べよう、というお誘いなのは彼女も理解できている。ただし役職上、指示にないことは出来ない。
それ故に彼女は彼に聞こえるように透き通った声で問いかける。それに対して彼は彼女の予想通りの答えを返す。
「なぁに、オレと一緒に夜ご飯を食べようじゃないか。すこし君と話がしたくてね。今日は月も綺麗だしなーー勿論君も綺麗だけどね」
机にあるグラスを持ち、手首を少々動かし中のワインを揺らしながら彼女に答えを返す。
「月が綺麗ですね」なんて恋愛のロマンチックな愛の告白を混ぜるも此処は異世界、通じるわけもないのは重々承知である。
むしろ重要なのはそのあとーー月と同じくらいの貴方が綺麗と、自然に彼は褒めたのだ。
これに対し、彼女はその答えを聞くと無言で頷き、テーブルに置いてあるフォークとナイフを手に取り、お皿に盛り付けられているステーキを切り始め、一口口に放り込む。
彼女の口の中からステーキが無くなると、口元をナフキンで拭い、フォークとナイフを置く。そして口を開き、彼に向かって返答する。
『かしこまりました。話をお伺いします。どうなさいましたか?』
謎の一口には彼も困惑を見せるも、要件を何かと聞かれたので彼はありのままに正直に話す。
「嗚呼、そうだったな」
彼も彼女と同様に手に持っていた食器を置き、一呼吸つくと向かいに座る彼女の顔を見つめる。
澄んだ紺青の瞳、艶やかな金髪のショートヘア、嘘を見透かすような鋭い眼光。しわひとつない美しい肌に、綺麗な筋の通った鼻。整えられた前髪。
向かいに座る彼女は生きてきた数百年でダントツで彼のどストレートを射抜くビジュアルであった。
シンはーーメイドに一目惚れしていた。
「オレは君が好きだ。是非、オレと付き合ってもらいたーー」
鋭い眼光で見つめてくる彼女の眼差しに応えるように彼は真っ直ぐ彼女を見つめ、そして愛の告白をしたがーー刹那、返ってきたのはテーブルにあったナイフだった。
空気を切り裂きながらまっすぐ突き進んだナイフは彼の眉間に刺さっていた。無論眉間からは血が流れ出てくる。あまりにも一瞬で帰ってきた為、彼は避けることができなかった。
『申し訳ございません』
彼女はそう一言いうと一呼吸置いて、テーブルをバンと、両手で叩きながら立ち上がって彼に向かって怒鳴り声を送る。
『いい加減しつこいです!誰が貴方のような人を好きになるっていうんですか!?殺しますよ!?』
先程のかしこまったメイドと同一人物とは思えないほど、口が悪くなっている彼女だが、行動からわかる通り、本気で自分のご主人を殺したがっている。
然し、彼にとって歯向かってきたとか、攻撃してきたとかは然程気にすることでもない。それよりも、好きな女性に振られたことがショックなんだろう。
「お、オレのこの気持ち、わかってくれよぉ!!」
彼は額に刺さったナイフを抜き、噴水のように溢れ出てくる血を止めようと傷口を手で押さえながら涙を流し、懇願している。
それに対し彼女の返答はいつも決まっている。
『マジで、さっさと死んで!』
そう吐き捨てると、彼女は己の手で傷つけてしまったご主人様には目もくれずに、颯爽と部屋を退出しようと扉の方へ向かう。
その背中を追いかけるように、彼も椅子を立ち上がり、血を出しながらも平然と歩いて彼女を追いかける。
「ちょっ…まだご飯残ってるーー」
『ーーおやすみなさいませご主人様ァ!!』
彼女の歩みを止めようと近づきながら声をかけてくる彼に対し、彼女は振り向き、隠し持っていたテーブルのフォークを投げつける。
あまりの豪速球に彼はまたしても躱せず、再び眉間に刺さってしまう上に、威力を受け止めきれず彼は後方に仰向けに倒れ込んでしまった。
「きょ……今日も無理だったぁぁ!!!」
彼の目尻からは、もはや血か涙かわからないが、流れながら悔しさを叫んだ。
1話を読んでいただきありがとうございました!
続く2話をお待ちください!




