第17話
ハバネロの案内もあって、獣魔ギルドにはすんなり辿り着くことができた。…この羊たちを連れて、中に入るわけにはいかないよなー…。
「ちょっとここで待ってろ。俺が受付の人に話しに行ってくるからさ」
「本当にありがとう。頼んだ」
またもやハバネロが助けてくれた。俺の代わりに事情を説明するため、ドアを開けて中に入っていく。あいつ、マジで最高の友達だな。
「めーう」
「うめー」
「はいはい。ちょっと待ってろ」
手に頭を摺り寄せてくるスカイシープたちを、1頭ずつ撫でていく。もこもこが癖になる触り心地だ。無心で撫でくり回していると、ギルドのドアが開いた。そこからハバネロともう1人、ギルドの関係者らしき40代くらいの男性が出てくる。
「話には聞いてたけど、本当にスカイシープがいるな…」
男性は口をあんぐりとして、少し放心状態になった。確かに、こんだけ羊が街中に現れると驚きもするよな。
「それもあるが、スカイシープは滅多に人前に姿を現さないんだ。一生に一度、その姿を拝めるかどうかって言われるほどレアなモンスターなんだぞ」
務めて冷静な声で説明しながら、その視線はスカイシープたちに釘づけだ。お前ら、そんなに珍しいモンスターだったのか?
「めめーう」
「…鳴いた!」
羊たちの鳴き声1つで、ここまで感動する大人も珍しいのではないだろうか。ハバネロに視線を送ると、肩をすくめて首を横に振られた。了解、そっと見守れってことね。
「この人ー何してるのー?」
「しっ。ハヤテ、こっちに来るんだ」
「はーい」
男性が復活するのを待っていると、ようやく現実が呑み込めたのか、我に返ったように俺の方に向き直った。
「いや、失礼した。君がこのスカイシープたちと契約したという旅人かな?」
「はい、そうです」
「俺はルシアン。獣魔ギルドの職員だ」
「ロロです。よろしくお願いします」
ルシアンさんは短髪の黒髪をワイルドにかきむしると、ハバネロへ顎をしゃくった。
「ハバネロから聞いた話とこの現状から推測するに、スカイシープたちを放牧する土地が必要とみた」
「まぁ…そうですね」
「それならこの辺はどうだ?」
懐から資料を取り出し、俺に見せてくれる。一番安い土地は草が少なく、狭い。逆に高い土地は餌も豊富で小さな小屋もついており、さらに井戸や畑も備わっている。お値段5000ベル。…さっきアクセサリーで稼いだ分が飛んでいくな。
「うーん…」
「早い者勝ちだから、さっさと決めた方がいいぞ」
「…決めました。この一番高い土地を買います!」
痛い出費だが、スカイシープたちのためだ。妥協はできない。
「それじゃ、この土地は今からロロのものだ。基本的にはどう使っても構わないが、近隣の迷惑になるような行為は控えてくれよ」
「分かりました。ありがとうございます」
「そうだ、獣魔ギルドに登録していくか?スカイシープと契約してるなら、クリアできるクエストがいくつかあるぞ」
なぬ!
「登録します!」
「わかった。ちょっと待っててくれ」
そう言ってルシアンさんは一度ギルドに戻り、書類を持ってきてくれた。それに名前と職業、所持スキルを書き込んでいく。…あ、またルシアンさんが固まってしまった。
「あの、書き終わりました」
「……はっ!あ、あぁ。それじゃあギルドカードを預かるぞ」
無事に手続きも終わり、俺は獣魔ギルドに登録が完了した。そして現時点でクリアしているクエストを確認していく。
〇精霊と契約する
期限:なし
報酬:50,000ベル
〇レアモンスターと契約する
期限:なし
報酬:3000ベル
〇レアモンスターと10体以上契約する
期限:なし
報酬:8000ベル
一気に61,000ベルも手に入ってしまった。これは思わぬ収入だ。特に、精霊に関するクエストの報酬が高かったな。
「それじゃあ、ロロの土地に行くか」
「うん」
ハバネロの力も借りて、スカイシープたちを誘導しながら歩いていく。道行く人からの視線がビシバシ刺さって、ちょっと恥ずかしい。
俺の土地は、わりと歩いてすぐの場所にあった。5000ベルにしては広いような気がするな。
「ほーら、ここが今日から俺たちの住処だぞー」
「めめっめー!」
「ううめー」
羊たちを1匹ずつ柵の中に入れていく。皆は新しい場所が気になるのか草に顔を近づけ匂いをかいだり、もしゃもしゃと食べたりしている。
「ふー…ハバネロ、ありがとうな」
「どういたしまして。…それにしても、ロロは目を離すとすぐ何かするな」
「別に、好きでこうなってるんじゃないぞ」
ハバネロは信じられないといったようにジト目で俺を見てくる。だって、スカイシープたちと出会ったのは本当に偶然なんだぞ?!
「…まぁ、また何かあったら連絡くれ。力になるからさ」
ハバネロー!お前、めちゃくちゃ良い男だな!去っていくハバネロの後ろ姿を見つめて、羊たちに視線をやる。
「これからよろしくな」
「めー!」




