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職業は精霊の愛子  作者: 黒色猫


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第16話


「めーう」

「めーめーめー」

「めうめー」


 音の正体に近づくにつれて、鳴き声は増えていく。俺とハヤテは音を出さないように慎重に歩き、草むらの影からそうっと覗き込んだ。まず目に飛び込んできたのは、爽やかな青。こういうのをアザーブルーっていうんだっけ。


「めー」

「めーもめー」

「めうめうめー」


 1、2、3、4……計12匹の羊もどきが呑気に草を食っていた。もどきを付けたのは現実世界に羊と違って毛が青色だからだ。一瞬ヤギかとも思ったが、あの毛量は羊だな。


「あれはースカイシープだよー」

「知ってるのか?」

「うんー。大人しい子たちなんだー」


 どうやらハヤテは羊たちと顔見知りだったらしい。すいーっと飛んでいくと、頭に潜り込んでいた。スカイシープは全く気にせず口をもぐもぐさせている。

 草むらの影から出て、俺も羊たちに近づく。おぉ、全く警戒すらされない。恐る恐る体を触ってみると、フワフワとした感触が伝わってきた。そのままわしゃわしゃと撫でてみる。すると気になったのか顔をこちらに向けてきた。


「めーう」

「可愛いな……」

「みんないい子だよー」

「だな」


 しばらくスカイシープたちの食事光景を見守る。時間を忘れていくらでも見てられるな…。


≪スカイシープたちからの信頼が一定値に達しました≫

≪スカイシープたちが契約を求めています。同意しますか? はい/いいえ ≫


「…何かきたな」


 システムアナウンスが流れたと思ったら、いきなり画面にはいかいいえの選択肢が現れた。羊たちは草を食べ終えたのか、俺のことをじーっと見つめている。

 それにしても契約ってなんだ?ヘルプ画面で何か引っかからないかやってみると、契約に関する説明が載っていた。


・契約

モンスターとプレイヤーが相互に同意し、共同生活や戦闘の支援などを行う絆システムです。テイムとは違いモンスターの意思が最優先され、信頼度が重要となってきます────。


 なんとなくは理解できた。つまり理由は不明だがこのスカイシープたちは俺を信頼しているということだな。うん、デメリットもなさそうだし契約するか。


≪スカイシープたちと契約しました≫


「めめーう」

「めうううめー」

「はいはい。これからよろしくな」

「よろしくねー」


 テイムせずにスカイシープたちが仲間になってしまった。一気に家族が増えたな。


「…一旦街に帰るかー」

「帰るかー」

「うめー」


 モンスターが出てきたらハヤテが倒す、俺はスカイシープたちを守るという布陣で歩いていく。こら足元をうろつくな、踏んじゃうかもしれないだろ。あ、そこ、列から離れようとしない!羊たちはのんびり気ままな性格らしいな。あるいは我が道を貫くタイプと言い換えてもいいかもしれない。

 どうにかして1匹もかけずに、街までたどり着くことができた。よくやった、俺。やっぱりやればできるんだよ、俺。


「んで、この子たちはどうすればいいんだ?」

「いいんだー?」


 このまま街中に入ってもいいのかな?なんか道行く人の邪魔になりそうな気もするんだけど。だけどここに放置するわけにもいかないしさ、どうしよう?

 こういうときは、ハバネロに相談だ!メールで大量のモンスターと契約したんだけど街中に連れて行ってもいいのか、といった内容を書いて送る。よし、後は返事が来るのを待とう。それまでは休憩タイムだ。


 返信は割とすぐにきた。『そこで待ってろ』?


「……こわ。逃げようかな」

「逃げたら怒られるよー?」

「……そうだよな」


 だけどこれは怖くない?命令形だし、俺の居場所把握してる感じだし…。俺じゃなくても逃げたくなるはずだ、きっと。

 ハバネロは数分もしないうちに俺のところにきた。顔は無表情で虚無を纏っている。


「…この短時間でこれはひどいと思うぞ」

「俺のせいではない!」

「お前がやったんだろ?!」


 はい、その通りです。でもなんでそんなに怒って?るのさ。ただスカイシープたちと街に入りたいだけなのに。


「はぁ…まず契約って何?」

「ん?なんかモンスターとの信頼関係で結ばれる、テイムとは違ったシステムってヘルプには書いてた」

「…………探したけど、契約の項目はヘルプに載ってないぞ」

「マジ?」

「おそらくは条件に該当した奴にしか見られないんだろうな。ゲームだとあるあるなやつだ」


 ハバネロったら、相変わらず冷静なやつ。めちゃくちゃ頼りになります。


「んで。その羊みたいなモンスターと契約した経緯は置いておいて。こいつらと街に入ってもいいかだっけ?」

「そう。大丈夫かな?」

「んー微妙だな。あ、獣魔ギルドに行くのはどうだ?そこで職員さんに相談すればいいじゃん」


 獣魔ギルドはテイマーやサモナーの他、モンスターと行動を共にする人たちも多く利用する。確かに、そこに行けば羊たちが自由に暮らせる方法が見つかるかもしれない。


「獣魔ギルドに行ってみる!」

「おう。場所は分かるのか?」

「………」

「だろうと思った。道案内じゃないけど、一緒に着いていくよ」


 ハバネロ!お前は最高の友達だ!!


 いつも読んでいただきありがとうございます。

 契約した子たちは畜産方面、テイムした子たちは戦闘用という風に区別していきたいと思っています。テイムしてるのに戦わないのはどうなんだ、という作者の謎のこだわりが発動しました。

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