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9話 ホワイトシープ(前半)

お久しぶりです。


やっと、ホワイトシープの戦闘に入れました。

今回で終わらせるつもりでしたが、長くなりそうなので、区切りのいい所で、投稿しました。

これからも、投稿は不定期になると思いますが、読み続けていただけたら幸いです。

モンスターとの戦闘による消費HP、MPの大きいKeiとイチを休ませるために、俺たちは、山の街"ロック"に向かっていた。


道中、先頭を歩いていたKeiが歩みを止め、頭を下げる。


「すみません。パーティーに誘っておきながら、足を引っ張って……。」


Keiの突然の行動に驚いたが、責任を感じているのだろう。

俺とエリスの2人だけでも、十分に戦えていたのだから。


「気にしなくていい。火力が足りない。って言ってる時点で、戦闘を行えばMP消費が激しいのは必然。消費した分を回復する為に街へよることも考えて、パーティーに入るのを決めてたから。」

「そうですよ、Keiさん。私たち2人でのパーティーなら、近接戦闘者が1人しかいないのでは、必ず疲弊して、街にはよっていたと思いますし。」

「だが……。」

「ストップ。もう、この話はおしまい。過去の事は変えられないし、何よりも後悔はしてないから問題ない。」


何か言いたそうな顔をしていたが、一方的に会話を終了させ、歩き出す。


「……ありがとう。」


呟きのような小さな声で言った言葉。

それはKeiの本音だった。





山の街"ロック"


ロックについた俺たちは宿を取り、1日泊まる事にした。



このゲームでは、減ったHPやMPを回復させるためには、睡眠が主となる。

1割で2時間。

3割で4時間。

5割で5時間。

7割で6時間。

全開で7時間以上。

となっている。


他に回復させる方法としては、アイテムによる増強と、MP(HP)を消費してHP(MP)を回復させる呪文又はスキルによって習得する技しかない。


討伐目標であるモンスターは、その土地のモンスターと比較すると強いのが常識。

万全の状態で挑むのが一番の理想なので、宿を取ることを全員反対しなかった。



宿で休む前に、5人はバラバラにホワイトシープの潜伏場所について情報を調べる。


店を営んでいるNPC。

ホワイトシープを狩るべく、ロックを訪れているプレイヤー。

ネット掲示板。


1時間後集合した時に、誰もホワイトシープに繋がる情報を手に入れる事は出来ていなかった。


「全く情報が無いな。当て所なく、山をブラブラするのか。憂鬱だ……。まあ、それはさておき、HPとMP残ってるから、スキル上げするか。エリス一緒行く?」

「そうね、私も"ハル"を出したいし。何時もの通りに。」

「Keiさん、一旦パーティー解散お願い出来ますか?」

「ん?別に一緒でもいいんだが……。」


きっと親切心から言ってくれたんだろうけど……。


「山の深部に行き、エリスを何分間かですが、守りながら戦闘をするので、ダメージ範囲の広い技を使うから、辺りに人がいない方が楽なんですよ。」


微笑みながらやんわりと断る。


「分かった。それなら、一時的に解散で。」

「それじゃ、エリス行こうか。」





山の深部に向かう街道はなく、通ることが出来る道は獣道のみ。

鬱蒼と茂った森をある程度進むと、多少だが開けた地形に出た。


「ここならモンスターに対応しやすいな。エリスの好きなタイミングで詠唱を

始めてくれ。」


数秒の時間がすぎた後、エリスは詠唱を始める。



詠唱の成功には、呪文を唱え終わらなければならない。それ以外の場合は失敗になる。

そのため、集中の持続及び行動が制限される。

また、多くのMPを使う呪文程、詠唱時間は長く、発声に気づいたモンスターは戦闘体制に入り、接近してくる。

しかし、呪文には多くのデメリットを持っている代わりに、破壊力はとてつもない。

実際、エリスの召喚獣である"ハル"は、殆どのモンスターをいとも簡単に倒す。



"ハル"を呼び出すエリスの詠唱時間は5分。


詠唱開始から1分。

まず現れたのは、バッドドッグが3体。

エリスの後ろに1体。前に2体。

エリスに向かって駆けてくる。

"疾走"によって、前の2体に近接。

"突進"で1体を潰し、横に振り払い、もう1体にぶつけ、強制的に距離を開けさせる。

この間の時間は僅か3秒。

だがこの3秒の時間で、後ろのバッドドッグはエリスとの距離を詰め、攻撃を加えようとする。


それでも、エリスの詠唱は止まらない。

これぐらいの事は、前もあったので動じる事はない。


バッドドッグの牙がエリスに届く前に、爆散する。



俺の槍スキルの技"風撃"



槍を強く突き出すことで、直線の衝撃波を発生させて、遠距離を攻撃出来る技だ。




「グルル――――。」


始めに距離を開けたバッドドッグは、同族2体を一撃と倒した俺を警戒する。


「ワォーーーーン。」


明らかに何かを伝える遠吠え。

嫌な予感がする。


"疾走"を使い、その声を止めるが……。

詠唱から3分、遠吠えから1分30秒後。



「「「「「「「グルル……。ワォーーーーーン。」」」」」」」


遠吠えの行われた近くから7体ものバッドドッグが俺の目の前に現れる。


「マズい――――!!」


Lv9に槍スキルが上がった時に覚えた技"五月雨"を打ち込む。


他のスキルと比べるとMPの消費は大きいが、複数体を攻撃するのには、便利な技。


一呼吸の間に"突進"と同じだけの威力を持つ5発の突きを放ち、即座に5体を葬る。

残りは2体。


技の硬直の隙をつき、左右をバッドドッグが駆け抜ける。


「エリス――――!!」


『――――我、汝に敬意を捧げる。』


言い終わった瞬間に具現化する"ハル"。


「ハル、その2匹を倒して!」


その刹那、風がバッドドッグを襲う。

その風はカマイタチの合わさったもので、当たった所から体に傷をつけ、HPを削り取る。


「守ってくれてありがとうNAKA。これからは私の番ね。行くよ、ハル!!」

『ウォン!!』





"挑発"によって詠唱の時よりも多い数のモンスターが集まり、目測でおよそ、50体。


「エリス、ちょっと多すぎない……。」

「問題ないでしょ、これくらいなら。ハル、"トルネードバインド"。」


互いに背を預けた状態で、まずエリスが戦闘の開始を告げる一撃を放つ。



サイド:エリス



エリスの目の前にいるモンスターを中心に、黒いエフェクトのかかった風が集結し、竜巻に変化。

それに巻き込まれた7、8体は浮き上がり、竜巻内に束縛される。

踏ん張らなければ、体を持っていかれるほどの強風が竜巻の周囲に吹き荒れる。

これでエリスの方のモンスターは動けない。

そこに、召喚で余ったMPを使い、魔術を叩き込む。

水や風を基本とした属性の魔術で、現れたモンスターを攻撃し、HPバーを黒く染めて行く。


「ハル、"エアリアルバースト"!!」


エリスからの指示により、"トルネードバインド"の解除と同時に、空気中に横一列の赤いエフェクトが広がる。


「グォーーーーー!」


踏ん張る必要が無くなったため、接近をしようとするモンスターや、呪文を唱えるモンスターもいるが、


「爆散しなさい――――!!」


赤いエフェクトから視界を塗りつぶす程の白い光が広がり、僅かの時間の後、爆音が響く。

光の消えた後には、モンスターは影も形も無くなっていた。



サイド:NAKA



エリスが戦闘開始の呪文を放った時、俺の方のモンスターが動き出す。

こっちの体数は、約15体。


「MP減ってる状態で戦闘か……。エリスに迷惑かけれないし、ムチャするか――――!!」


"疾走"がLv5になったときに覚えた能力"ブースト"を使用する。


能力"ブースト"を使用中、HPが常時減少する代わりに、DEXが減少分だけ増加する。

ただし、能力を解除すると、増加したDEXは消える。


ダメージ計算はSTRが基本となるが、攻撃速度が上昇するため、少量だがダメージにプラス補正される。

通常ならダメージ計算でのDEX上昇は無視出来る程小さいものだが、DEXが上がり続けるならば、その威力は強力。



モンスターは動きに時間差が存在するが、一度に接近してくる。

しかし、まだトライデントの届く範囲にモンスターはいない。

乱戦になれば、DEXが上昇して回避行動が容易になっても、ダメージをもらいかねない。


まずは後方支援を潰すべき。

俺は、後ろに存在するゴブリンシャーマンに、"風連撃"を放つ。


"風連撃"は、"風撃"を連続で行う技。

これにより、遠距離攻撃の可能なモンスターは残り2体。


DEXが高いと技の硬直時間も減少させるので、同じ技を連続でもう一撃。

残りは9体。


二度にわたる"風連撃"を放つ時間により、間合いはつめられ、肉弾戦に移行する。


「ったく、もう少し待ってくれても良いと思うけど――――!!」


俺は各モンスターの攻撃を回避し、回避出来ない攻撃は攻撃軌跡をいなす。

自ら攻撃を行うのではなく、隙を見つけてはダメージを蓄積させる戦い方。


始めは、モンスターの攻撃を完全に対応出来るだけのDEXは無かったが、時間経過と共に回避成功率は上昇している。


モンスターの対応に慣れ、多少の余裕が出来た頃に攻撃に転じる。


俺は攻撃に"旋風"を選択する。


時間経過に伴う"ブースト"によるDEX補正が150を超え、今もDEXは上昇中。

DEXの高さは、"旋風"の回転速度を高速にして威力を何倍にも跳ね上げる。

全てのモンスターは、"旋風"の範囲内。


「消えろ――――!!」


"旋風"の一回転で、全てのモンスターは爆散し、消滅するはずだった。



しかし……。



攻撃範囲内に、黒くて丸い物体がある。

物体の上にはHPバーが存在するためモンスターである事は確か。


"旋風"による攻撃を続けるが、トライデントが当たると発生する効果音は、金属と金属が衝突する音。


"旋風"が幾度となく当たり、辺りに響く金属音。


"旋風"の最大攻撃回数50回に達して、強制的に止まるが物体は存在したまま。

HPバーを確認するが……。


「どれだけ硬いんだ!?」


HPバーが黒く染まっている割合は一割に満たない程度。


"ブースト"によるHPの減少、肉弾戦による回避しきれなかったダメージで、俺の残りHPは100をきっている。


(どうする?"ブースト"を解除するか……。DEXが上がった状態の"旋風"でも、殆どダメージを与えられなかった事を考えると、解除したら与えられるダメージは無くなりそうだが……。)


数秒だけ思案していると、丸まっていた物体がもぞもぞと動き出す。

一刻の猶予も無い状況。

その時――――。


「爆散しなさい――――!!」


その言葉と共に、視界が白に塗りつぶされる。


エリスの方の戦闘は終わったようだ。


「エリス、1分だけ時間を稼いで。」

「ハル、"トルネードバインド"!!」


言葉を聞き終わった瞬間に、エリスはハルに指示を出す。

俺は"ブースト"を解除せず、アクアエッジに装備を変更。

地上での攻撃のため、たった1回しか攻撃が出来ない。

剣スキルLv1で覚えている"スラッシュ"。


「倒れろ――――!!」

「ハル、"エアリアルショット"!!」


俺は気迫を言葉に乗せて斬り払い、エリスは単体への攻撃力の最も高い攻撃を指示する。

刃はモンスターに当たり、途中で消失。

青いエフェクトのかかった空気の塊がモンスターに衝突。


しかしモンスターのHPバーは、残り一割程だが残っている。


俺のMPは尽き、HPも残っていないため、追撃する事は不可能。

ハルも硬直のため追撃はできない。

モンスターは、警戒態勢を取りながら、森の中に逃げ込む。

その姿は、黒い毛で体をしっかりと覆われた羊。



俺たちは、多くのモンスターを倒したため、レベル、スキル共に上がったが、


「「絶対、ホワイトシープだよ(な)(ね)。」」


あの硬さは異常だろ――――。



2人はホワイトシープを倒せなくてへこんでいた。



ただ、異常な硬さを持つホワイトシープを、2人合わせての一撃で、残りHPを一割まで削った2人の異常性に突っこむプレーヤーは辺りにいなかった。

ホワイトシープに2人ではダメージが足りなかったので、今度は5人で戦闘予定です。



感想や誤字脱字があれば教えていただけたら幸いです。

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