水晶のハート
ユノがそう唱えた瞬間、俺の首を掴んでいた男の腕が落ちた。
そして、それを理解する頃には、男の全身が粉々に切断されていた。
「なっ......!?」
俺が動揺しいると、ミリスとアポロが駆けつけてきた。
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫か!?」
俺は2人の勢いに驚きつつも、「大丈夫だ」と返事をした。
すると、ユノがゆっくりとこちらへ歩いてきた。
恐らく俺の考えを理解したのか、求めるまでもなくユノは説明を始めた。
「俺の能力は肉体の一部と引き換えに、触れたことのある人間の力を借りられるんだ」
肉体の一部と引き換えにだって!?
「ち、ちょっとまて!つまりお前は俺を救うために......」
俺がそう言いかけた瞬間、ユノは俺の言いたいことを理解したのか、話を遮る。
「大したことない。今回は血液を代償にしたからな......少し休めば問題は無いはずだ」
だからと言って、良かったとはならない。
俺は役に立てないどころか、仲間に犠牲を払わせることになってしまったんだ。
自分の不甲斐なさを深く痛感していると、イルがユノの肩をポンっと叩く。
「問題は無いだと?」
ユノはその声を聞いた途端、顔がひきつっていた。
「自分の体を犠牲にする戦い方......お前はまだそんな事をしているのか?」
再び雰囲気が変わる。
ミナトはまずいと思ったのか、颯爽と止めに入る。
「ま、まぁとりあえずは門の方へ戻りませんか?隊長」
カイズもミナトと同じ考えなようで、2人の間に割って入った。
「命をかけて仲間を救ったつもりになっているのか?それではなんの意味も無いと再三にわたって話していただろう」
イルは物凄い剣幕でユノを睨みつける。
「あんたの話なんか聞き入れた事ねぇよ......何回も言わせるな、父親面をしないでくれ」
ユノは素っ気なく顔を背ける。
それに対しイルは、さらに機嫌を損ねている様子だった。
身体を震わせながら、イルは口を開く。
「私がどれだけ......どれだけの気持ちで!!」
イルがそう叫んだ時だった。
「もう我慢の限界だぞ、バラストよ」
その言葉に、その場の全員が固まる。
誰もが連想する、あの男のセリフ。
悲劇が始まる予兆。
誰よりもその言葉に強く反応したのは、隊長...カザミ・イルであった。
「誰だ......いや、そんなのはどうでもいい」
イルは素早く剣を抜く。
「私の前でその言葉を口にした時点で、その覚悟があるということだろう?」
すると声の主は姿をゆっくりとこちらへ歩いてくる。
「......冗談さ。喧嘩を止めてあげたくてね」
俺はその男の顔を見る。
その時、強い驚きと後悔が俺を襲った。
「あなたは......」
声が震える。
いや、もはや声に出ていたのかすら怪しい。
俺はどうしようもなくその場に固まっていた。
「やはり......また会えたじゃないか、少年」
その声と、「少年」という呼び名を聞き、それは確信に変わる。
「誰だ!?名を名乗れ!!」
イルは剣を向けながら男に問いかける。
俺は知ってる......この人は......いや、こいつは......!!
「私はハートのK、クリスタル・ロバート」




