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CYCLE  作者: カツ・コイチ
生死渡航編
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俺と君、この世とあの世

初めまして!僕の話を開いていただきありがとうございます。

色々伝えたいことはありますが、まずは本文を読んで頂きたいです!

「コツ、コツ、コツ。」

高いハイヒールが、錆びた階段を登る音。

何度も聞いた、地獄を連想させる音。


この世界はおかしいんだ。

みんなはワクワクしながら両親の帰りを待っているのに、俺は両親が帰ってくることに怯えている。


「ガチャッ」


この世界はおかしいんだ。俺は悪いことをした訳じゃないのに、悪者のような扱いを受ける。


「え、居たんだ。どっか行っていいよって言ったのに」


この世界はおかしいんだ。俺にだけ、熱い、雨が、降る。


ーーー


「今すぐ交番に行こうよ!今度こそ...今度こそはきっと聞きいれてくれるさ!」


俺の友人・神谷ソウキは、火傷で爛れた俺の腕に手当をしながら俺にそう促してきた。


「いいんだ。そんなことしたら、母さんが怒るから」


俺は知っている。警察に行けば保護されるし、お母さんからも離れられるということを。


「だから警察に助けてもらうんじゃないか!僕はこのまま君が傷まみれでいるのは許せない!」

「このままじゃ我慢ならない、悪意を持って君の体を傷つけたなら、善意でそいつの身体をめちゃくちゃにしてやりたい...!」


「ソウキの気持ちは分かるさ、でもそれ以上に母さんが怖いんだ。」


俺は知っている。

ソウキは、俺が地獄にいるから手を差し伸べてくれているのだと。

俺はソウキと一緒にいるために、地獄に身を委ねているんだ。


「きっと僕が何とかしてみせる...!この世界から悪意を無くして、君も、みんなも、全員が笑っていられるようにするんだ!!」


そんなこと出来るわけないだろ、なんて言えるわけがない。

俺はソウキの、底なしの善意によって生かされている。

良くも悪くも理想主義なソウキは、俺をほんの少しだけ笑顔にしてくれる。


「ソウキならできるよ、応援してる。」


こいつが俺の横にいてくれるなら、それだけで十分だ。


「あのね、アマツ。あの世にはね、天国と地獄があるんだって。そこでは悪いやつは痛い目にあって、僕やアマツは幸せに暮らせるんだ!」


違うよ、ソウキ。天国と地獄は、この世にもちゃんとあるんだよ。

俺が、いちばんよく分かってることだ。


「いいでしょ?この世の悪意を根絶やしにするシステムが、あの世にあるはずだ。だから僕は...」


「ソウキ、俺そろそろ行かないと。母さんに怒られちゃうからさ」


ソウキは話し始めると長い。

少し素っ気なく話を遮り、俺はその場を後にした。

ソウキは俺が見えなくなるまで、手を振り続けていた。

だから、地獄への道なはずの帰路も、少しだけ心地よく感じたんだ。


ーーー


夢を見た。

ソウキに出会った日。

俺に生きるという選択肢が生まれた日。

母さんが連れてきた彼氏を家に泊めるために、僕はその日はずっと外に居なくちゃいけなかった。

9月の夜、長袖でも少し肌寒い季節なのに、生憎の雨天だった。

裏山の木陰に身を隠す。

街の方にいると他の人に警察を呼ばれて、母さんに怒られてしまうからだ。


「寒いな、凄く寒い。」


思わず独り言を呟く。

延々と聞こえる雨の音の中、そうでもしないと正気でいられないような気がした。


「大丈夫?」


振り返ると、華奢だが端正な顔立ちの、まだ少し幼かった頃のソウキが居た。


「寒いでしょ。僕の秘密基地に来てよ」


案内されるまま、ダンボールに囲われた木の根元に着いた。


「僕はソウキ、困ってるみたいだから話しかけたんだ」


「僕は...天付」


少し迷ってから、苗字だけを答えた。

下の名前はカイだが、母さんのつけた名前を誰かに呼んで欲しくなかった。


「アマツ、よろしく!嫌なことがあったなら、ここで楽しいことをしようよ!」


ソウキは俺の事については聞かなかった。

それが俺にとっては凄く心地よかった。

その日は夜が明けるまで話したり遊んだりした。

心の奥の氷が、ゆっくりと溶かされるような気持ちだった。


ーーー


目が覚めた。

今日は日曜日、ソウキと隣の町に遊びに行くんだ。

軽快な足取りで裏山の道を進んでいく。


ソウキ。

俺の地獄の、小さな天国。

ソウキ。

この道を抜けると、笑顔で君が待っている。


「ソウキ、なんでそこにぶら下がっているんだ?」


返事はなかった。

いつもの笑顔も無かった。

光を失った目が、地面を見つめている。

2人だけの秘密基地の、裏山。

黒ずんだ縄に強く抱きしめられた、ソウキの首が目に映った。


「ソウキ、なんでだ?なんで...」


俺にはソウキがいた、ソウキには俺がいた。

そう信じていたのに。

それに、俺とは違ったはずだ、恵まれていたはずだ、どうしてお前が...!


「お前も、地獄にいたのか?」


冷たい手を握りしめる。

優しい手だ。

そして、少し悲しい手。

いつも俺に差し伸べられる手。


「ソウキ、お前は俺を追いて、一体どこに行ったんだ...?」


静かに問いかける。

返事はない。

いつもなら、あの優しい声が聞こえてくるはずなのに...


「あの世だよ」


耳元で、低く太い声が囁く。

振り返ると、髭の濃い少し古い洋服に身を包んだ中年の男が立っていた。


「誰...?」


男はニヤリと笑う。

俺の何かを見透かすような、そんな顔をしていた。

俺の目は、なぜだかその男に釘付けになっていた。


「お前が望むなら、俺があの世への切符になってやる...」

カツ・コイチと申します。

カクヨムでも同じ作品を連載していますが、ここではとりあえずそのストックを順次載せていけたらなと思っています。(追いつき次第同時進行という形になります)


この作品はシリアスな雰囲気もありつつ、少年漫画のような熱さもあります。所謂「なろう系」とは違う部分が多いかもしれないですが、ぜひ楽しんでいただけたら幸いです!

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