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湾ネットワーク戦

また短いです

開戦は、伝統守護派による先制攻撃だった。


本来、同じ列島を守る守護者同士が争うこと自体あってはならない。

ましてや、宣戦布告なき奇襲など、本来なら決して許される行為ではなかったはずだ。


だが、その頃には民も守護者も正常な思考を失いつつあった。

冷静でいられるはずがない。

自分たちの土地が切り捨てられ、苦しめられているのだ。


「自分たちは当然生き残る」


そんな思想を隠そうともしない中央統合派を、尊重できるはずもなかった。


自由独立派と伝統守護派は、中央統合派による切り捨て開始の時点ですでに密約を結んでいた。


物資輸送の円滑化。

そして、中央統合派の確実な殲滅。


そのため両派閥は、それぞれ前線に近い地域へ守護者を派遣し合い、協力体制を築いていた。


生存を当然と考える中央統合派。


伝統を守れぬ者は滅ぶべきだとする伝統守護派。


両者は、大阪湾霊脈ネットワーク建設地で激突した。

特に神戸港では、熾烈極まる戦闘が繰り広げられた。


九州七人衆に加え、陽菜、翠、麦、葵が一挙に攻め込む。

だが、それを迎え撃ったのは銀次、灯、玲央による中央統合派だった。


戦闘は凄惨を極め、被害は広範囲に及ぶ。


結果、多数の犠牲を出しながらも侵攻側は殲滅され、大阪湾霊脈ネットワーク建設は凍結へと追い込まれた。


京都から後方支援を続けていた志乃は、その報告を受けると顔を覆い、深くため息をついたという。


そして大阪湾での戦闘開始と、ほぼ同時刻。

新たな火種が生まれる。


自由独立派が、東京湾霊脈ネットワーク建設地へ侵攻したのだ。

横浜湾を中心に、小規模ながら激しい戦闘が各地で続いた。


凛、颯、悠斗、澄人、琥珀、澪、太智、林檎、楓、雪乃、幸樹。

大阪湾戦線を上回る兵力が投入された。


しかし彼らを迎え撃ったのは、零司、琴葉、瑞希、奏、海斗。

中央統合派の中核戦力だった。


戦況は次第に膠着化していく。


それどころか、中央統合派との圧倒的な実力差により、自由独立派側の被害は深刻化していった。

その時点で、すでに両派閥には多くの犠牲が出ていた。


__


【伝統守護派】


・殉死出島蒼真桃瀬陽菜紀州翠白馬澄人鹿島太智


・負傷桜島蓮春日悠真日光澪南部幸樹


__


【自由独立派】


・殉死日向ひまり有田結讃岐麦若狭葵駿河凛


・負傷琉球まな道後柑奈金沢小春会津悠斗


__



二つの派閥は、明確に苦境へ立たされていた。

だが、中央統合派も決して無傷ではない。


灯、瑞希、海斗らが深手を負い、前線からの離脱を余儀なくされていた。

すでに十を超える県が消滅状態へ陥り、民も疲弊しきっている。


このままでは、列島そのものの維持すら不可能になりかねない。

そんな中、銀次は考えていた。


――このままで、本当にええんか。


彼は確かに、零司の思想へ賛同していた。

だが、その信念に揺らぎが生まれ始めていたのだ。


傷つき、死んでいくかつての仲間たち。

中央だけは当然生き残るという、隠しきれない零司の傲慢さ。


そして、灯の負傷。


「……我ながら、弱い男やで」


眠る灯の病室の前で、銀次はうつむく。

彼は、中央統合派を抜けるべきではないかと考え始めていた。


このままでは、自分が自分ではなくなる。

まだ戦争開始から半年も経っていない。


それなのに、銀次の精神はすでに限界近くまで削られていた。

銀次が灯と共に中央統合派を離脱したのは、その三日後のことだった。


零司は、ただ首を傾げていた。

どうして、と。


最大の理解者だと思っていた銀次が、自分の元を去るなど考えもしなかった。


「……どうして皆、僕の言うことを聞いてくれないんだろう」


「気にしなくていいっちゃ。わがんねぇ奴らは、どうせ消えていくんだから」


「そうたい、そうたい。霊司の考えは間違っとらんばい」


落ち込む零司へ、瑞希と玲央が静かに声をかける。

とはいえ、二人もまた無傷ではなかった。


彼らも、自らの手でかつての友人や仲間を傷つけてきたのだ。

心は確実にすり減っている。


本当の意味で何一つ摩耗していないのは、零司だけだった。

それが悪意によるものではないからこそ、なおさら性質が悪い。


零司の精神には、人として決定的な欠落があった。


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