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絶歌姫 レイゼ・テルノーグ

「あの痴女みてぇな白い修道服……!!間違いねぇ、レイゼ・テルノーグ……勇者候補だ!!」

「慌てんじゃねぇ!!全員戦闘準備、視線を逸らすんじゃ……!!」


パチンッ。


 強盗達のリーダーが声を上げ命令をしているがそれを無視して、レイゼは軽く指を鳴らす。その瞬間彼女の体が岩壁の上からなくなる。さらにそれだけではない、先ほどまで自分達が盗んできた金品や宝石等が入っていたはずの袋がなくなっていたのであった。当然その二つの事実に彼らは焦るが、後ろからジャラジャラと音が鳴るのを聞くとそちらの方へと向き直る。

 彼らの視線の先ではレイゼが立っており袋の中に入れてあった物品を物色し、残念そうに息を吐いていた。


「…………あなた達、魔法使いとしてはそれなりみたいだけれど、盗みの腕は3流以下のようね。こんな無造作に入れて……これらを作り、磨き上げた方々へのリスペクトはないのかしら?………あるわけがないわね、あるなら強盗なんて馬鹿な真似はしないもの」

「………!!うるせぇよ、金持ちの道楽で教会のアイドルやってる売女が、偉そうに言ってんじゃねぇ!!

 ストーン・ニードル!!」


 強盗のボスが声を荒げ地面に手を付けながら吠えると、地面から鋭い岩の剣山が生み出されレイゼの元へと迫っていく。レイゼは自分が強盗達から奪った袋に強化魔法による保護膜をかけた後、再び指を鳴らしその場から消え岩の剣山を回避、再び強盗達の後ろにある岩壁に指とつま先をめり込ませて張り付いていた。


「………無駄よ。そんな洒脱さも工夫もない、何より鈍いそんな攻撃では私を捕らえることができない。降参しなさい、そしてあなた達の裏にいると思われる存在のことを話しなさい」

「………!!何のことだ……?!」

「ああ、隠さなくてもいいわよ?さっきの話を聞かせてもらったから。あなた達、あと2分もしない程度に転送されるんですってね?確かに空間魔法の使い手がバックにいるなら無茶な強盗劇も納得がいく。

 ………ただでさえ今国は魔族との戦争で荒れている……今のうちに不穏分子は摘んでおかなければね」

「…………黙って聞いてりゃ、調子に乗ってんじゃねぇぞ、ブルジョアがぁ!!

 円になって互いの背を守れ!!視界に映ったら攻撃しろぉ!!」


 強盗のリーダーの一声で彼らは互いに背を庇い合うように外側を向いて円陣を組んだ後、リーダーは壁に負張り付いているレイゼに向かって再び岩の剣山を出現させ彼女を突き刺そうとするが、レイゼは指を鳴らしてまた回避する。だが回避した先で別の強盗が今度は氷塊を放ち彼女の体を貫こうとする。それに対してレイゼは足に強化魔法をかけると素早い蹴りで砕き、さらに飛んできた攻撃に関しては指を鳴らしてその場から消えて回避した。

 今レイゼは、岩壁の一番上におり、わずかに息を切らしているかのような、様子が見られた。


(……あの高速移動魔法は連続では使用できないようだな……!!すこし驚いたが所詮は大半が非戦闘員の教会の修道女、修羅場をくぐった俺たちの敵ではない……!!)

「非常に腹立たしいが金品はお前にくれてやる!!その代わり俺たちは、勇者候補から逃げ切った魔法使いという栄誉をもらうとしよう!!」


 そう言い放つリーダーら強盗達の足元にそれぞれ魔方陣が形成される。おそらくそれは彼らが語っていた空間転送魔法の魔方陣であり光からしておそらくあと5秒もしない内に彼らは転送されてしまうであることは明白であった。しかし、

 たった五秒あれば、彼女にとって十分すぎる時間であった。

 レイゼは背負っていた金品等が入った大袋を宙に頬り投げ、自身は前に倒れ岩壁の上から落ちていくが、その瞬間指鳴らす。そして鳴らした回数は一回だけだったはずなのに、

 その音は、何重に聞こえた。


パチチチチチチチチチチチチチチチチッッンッッーーー!!!ドンドンドンドンドンドォォン!!!


(?!!!何がッッッ………?!)


 何が起きたのかリーダー格の男には全く理解できていなかった。自分達は後数秒で転送されこの場から逃げることができたはずであった。しかし次の瞬間凄まじい数の打撃が撃ち込まれ、最終的に岩壁にめり込んでいた。わずかに動く眼球で他の面々の様子も確認すると、どうやら自分と同じような状態で気絶していた。

 そしてこのような状態を作り出したと思われるレイゼは落ちてきた袋をキャッチした後、光っていた魔方陣の上を足踏みしつつわずかにため息を吐く。


「………分かっていたことではあったけど、やっぱり対象以外の生物は転送されないみたいね。乗り込んで潰せればそれが一番速かったのだけれど、まぁ仕方がないわ」

「………な、ぜ………!!」

「………なぜ、お前は連続して高速移動ができるんだ、とでも言いたいのかしら?……逆に聞くけどなぜできないと思ったのかしら?私を誰だと思っているの?私はレイゼ・テルノーグ。テルノーグ侯爵家の長女にして、教会最高幹部七聖徒第六席にして、稀代の歌姫『絶歌姫』にして、

 最速最強の修道女と称される勇者候補よ。あなた達の次元で考えないで頂戴」


 レイゼはボスがめり込んでいる岩壁近くのに触れると岩壁全体が震え、次の瞬間岩は砂化し崩壊していく。リーダーは察してしまう、この女は自分でも言っていた通り自分達とは次元が違う、勝てるわけがなかった。それを察してしまった彼は白目を剝き、気絶するのであった。

 レイゼは自分の体に纏わせた魔法によって落ちてくる砂を避けつつ戦闘場所から離れていくとやっと到着した警備の魔法使い達が現れた。


「レイゼ様、状況は?!」

「実行犯たちは分かってる範囲で全員戦闘不能にして置いた。ただ彼らの裏にはバックがいる。すぐに拘束して尋問して頂戴」

「分かりました、では申し訳ありませんが状況を聞きたいのでご同行を……?!」


 警備長と思われる魔法使いが動向を呼びかけようとしたその時、彼らを間に割り込んで複数名の記者と思われる男女が現れ、それぞれほぼ同じタイミングで彼女に向かって話しかける。


「申し訳ございません!!私たち統国新聞の者ですが!!富裕層街に現れた悪党たちを倒したのは絶歌姫様で間違いないでしょうか?!」

「すみませんが取材をお願いします!!あとお写真も!!」

「カラーでポスターも作らせていただきますので、どうか!!」

「インタビューはともかく、写真は教会を通さないと色々と面倒くさいのだけれど……。…………!そうだ、いいことを思いついた。

 いいわ、写真撮影付きのインタビュー、受けてあげるわ。ただし、

 写真撮影に関しては、一緒にとって欲しい子たちがいるのだけど」

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