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宣戦布告

* 


 そして時は戻り、パーティ会場前。ミスト、シンシア、ルイスはイレクトアと対峙していた。出会ったミストとイレクトアは早速挑発を入れると相手の目と鼻の先まで近づき互いを射殺すように睨みつける。格好こそ彼女たちの美貌を引き立てる魅力的なドレス姿をしているがそれでも中和しきれないほどの荒々しさを醸しだし、他のパーティに来たと思われる勇者候補達も彼女たちに近づかないようにしていた。


「はっ、魔法戦の素人に負けて、なおかつご主人様見捨てて逃げたカスのくせによくここまでこれたな?その面の皮だけは褒めてやるよ」

「あっはははは☆面の皮の厚さじゃ流石の私も君に負けるよ!!上官を殺して敵前逃亡かまし、挙げ句の果てに罪のない魔法学園の生徒達や魔法連の会員を冷酷に斬りまくったくせに、なんとも思ってないんだもん!!いやぁ本当にすごいよ!!私、君にありとあらゆる要素で勝ってるけどこれに関しては勝てる気がしないよぉ!!」

「………ぶっ殺すぞ、金髪雌豚」

「……やってみろよ、黒髪喪女」

「ちょちょっと!!落ち着いてミストちゃん!!」

「落ち着いてください御姉様!!反応したら蛮騎士の思惑通りです!!」


 ミストが握っている鉄鞄の持ち手から彼女の怒りにこうするように軋む音が聞こえ始め、鞄部部分もにわかに揺れ動き始める。それを察知したシンシアとルイスはすぐさま彼女に近づきそれぞれ彼女の腕をつかみ落ち着かせる。

 ミストはそれによって落ち着き、介入した彼女たちを見たイレクトアも「……マジで御姉様って言われてんだ」とつぶやきつつも落ち着き、コートの裏ポケットに入れていた短剣から手を離し、2,3歩後ろへと離れる。


「……おや、名誉ある魔法女子学園をぶっ壊したシンシアちゃんと若き軍の次期エースのルイスちゃん♪お会いできて光栄だねぇ♡」

「………!!イレクトア……!!」

「………噂以上に下品な女ですね」

「うーわ、敵意ビンビンじゃん!ウケるねぇ!」


 いきなり奇襲され足をへし折っただけでなくミストを痛めつけたイレクトアに対しシンシアは睨みつけ、またそう言った情報を二人から聞いたルイスも二人ほど感情を表には出さなかったものの棘のある言葉で彼女を差す。

 そう言った敵意にイレクトアは晒されるも特に彼女は何も感じていないのか、にこにことした表情のまま話を続ける。


「あ、そうだ。会ったついでに話したいことがあったんだよ!

 次の勇者選抜試験の概要聞きたくない?聞きたく無いぃ??」

「………どうせ今日の説明会で聞くんだ、興味ない。………シンシア、ルイス。行くよ」


 イレクトアの話をシャットアウトしたミストは踵を返して会場の方へと歩き、シンシアとルイスもその後を追う。だがそれに構わず、イレクトアは彼女達に聞こえるようによく通った声を上げる。


「今回の勇者選抜試験は通例通りにバトルロワイヤルになるんだってさ!!

 そこで私と決着つけない?!」


 振り返りこそしなかったもののイレクトアの声にミストは足を止める。そんな彼女を心配するようにシンシアとルイスも立ち止まり二人の少女を交互に見る。

 イレクトア話を続ける。


「私とあんたが出会ってから約3年くらいだっけ?!あんたのせいで私のバラ色人生計画は台無し!!騎士として雑魚狩りと貴族のご機嫌取りに終始しなくちゃならなくなった!! 

 このくだらない因縁をさっさと解消したいんだよ!!」


 イレクトアは語気を強めつつ近づいてくるがこの時、ミストは先ほど以上に鉄鞄の取っ手を強く握りしめ震わせていた。先ほどよりも怒りを強めている、と感じるのが普通であるが、隣にいたシンシアはそれだけではないと感じた。


(……怒っている、けど……それ以上に、悲しんでるの?ミストちゃん……?)


「……3年、前………。やっぱり、認知すらしてないのか……! ふぅー……はぁー……」


 ミストは自分の中の感情を制御するように大きく深呼吸をした後振り返り、それと同時に魔導具、ヒドゥンエッジとサイコプレートを起動、取っ手を柄として出現した変則的な片手剣の刃を振るい、すぐそばに来ていたイレクトアの喉元数ミリの地点に突きつける。

 その光景に近くまで来ていた野次馬達やパーティ参加者、警備の軍人達は驚愕に固まってしまうが、差されたイレクトアは余裕そうに「かかった」といわんばかりの笑みを浮かべていた。


「くだらない因縁か……確かにその通りだ。あんたみたいな尻軽の豚にうろちょろされるのもいい加減目障りだったんだ。いいぜ、乗ってやるよ。

 ………こっちはアトリエと失敗傑作達を取り戻したんだ、一週間前と同じと思うなよ、蛮騎士ィ……!!」

「……それやこっちの台詞だよん、魔術師☆……あの時みたいなお遊びはもうしない、

 全身全霊で叩っ切ってやるよ……!!」


 イレクトアの言葉を聞いた後、ミストは首筋から刃を外し展開した魔導具達を鉄鞄の形態に戻す。それと同時に踵を返し今度こそ会場内へと入り、シンシアとルイスも遅れながら彼女の後を追っていき、イレクトアもゆっくりと彼女達を追うのであった。

 会場内の受け付けロビーに入った4人を見る者達の目には少なからずの悪感情が含まれていた。

 それもそのはず。今回のパーティに参加するのは勇者候補達を除けば教会、統一軍、騎士団、魔法連の上層部や勇者達の活動にに高額出資している貴族のみ。そんな彼らからすれば会場前、しかも国民が見ている前で刃傷沙汰一歩手前を起こそうとするなど、いい感情が持てるわけがなかった。 だがそんなこと関係なく、彼女達に近づいてくる一人の人物がいた。


「ミスト君、シンシア君、ルイス君にそれにイレクトアくんも。よく来られたねぇ」

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