ハナニアラシ 4
気が付けば六月になっていた。
無理矢理背伸びして奇跡的に白貴高校に合格したあたしは中間テストの結果に涙した。
特に数学は致命的だった。文章問題が四問。それだけのテストだったけど、答えが合っていても途中経過が間違っていたら容赦なくバツにされてしまい、丸を貰ったのは僅かに一問だけ。他のテストも得意な現国を除けば平均点には届かない点数だった。
中学では苦手な教科でも平均点くらいは採れていたのでこの落差に打ちのめされた。
「愛美〜。今日、料理部でカップケーキ作るんだって?」
「うん。美味しくできたら圭ちゃんにもあげるね」
「やったー」
嬉しいことに圭ちゃんもこの高校に入学していた。
ショートカットでいつも活発な圭ちゃんは、どちらかというと体育会系のノリだったから、進学校の白貴で会えるとは驚きだった。
文武両道とは羨ましい限りだ。あたしは運動も苦手だから。
この学校は部活が強制なので帰宅部が許されていなかった。圭ちゃんは陸上部に入部した。
あたしは料理部にした。活動が週一、二度なのでほとんど帰宅部と変わらないのが、小林家にお裾分けを持っていきたいあたしには丁度良かった。晩御飯を作り始めたのも高校に入ってからなので料理の勉強になるのも有り難い。
今日は貴重な料理ができる日。ガスとか包丁とかを使う料理部は、料理をする日を学校に申請して家庭科調理室の使用許可を貰わなければならないのだ。だから実際に料理が出来るのが月に一、ニ度くらいだった。
それ以外の活動日は、次の調理は何を作るのかをみんなで話し合ったり、食材について調べたりしている。
学校でお菓子を食べたい、という不届きな理由で選ばれたのが今回のカップケーキだ。
チョコチップやアーモンドスライス、オレンジピールなど色々なものを持ち寄って、生地に混ぜ込んだり、デコレーションしたりする。
あたしはチョコチップを混ぜたものを四個作った。
一つはもちろん自分の分。生クリームを添えて部員のみんなと一緒に食べた。
残りの三個は、それぞれビニール袋に入れて針金の入ったリボンで口を閉じる。圭ちゃん、小林くん、こーくんの分だ。
部活の終わった圭ちゃんに渡したら、その場で開けてかぶりついていた。とても幸せそうに食べるので見ているこっちも幸せな気分になる。
あたしのげんこつくらいの大きさのカップケーキがみるみると小さくなって、圭ちゃんのお腹の中に収まっていった。
辺りにふわりと甘いバターの香りを残して、圭ちゃんと下校した。