アオナニシオ
ドクリドクリ……まるで全身が心臓になってしまったかのように脈打っている。
「あの……小林くん?」
告白の勢いが無ければ未だに直接名前を呼べないあたしは、小林家のリビングにあるソファの上でまーくんの足の間に座らされて背後から胸の下に彼の両腕が回されている状態だ。
「ん?」
背中に押し当てられた顔から短い返事が返って来る。
「……口から心臓が出そう」
「慣れて」
無理無理無理。
だってドキドキするんだもん!
ことの発端は、赤点だ。
中間テストでたくさん赤点を取ったあたしは、もし期末テストでも赤点だったら、夏休みは殆ど補習で学校へ行かなくてはならなくなる。
それで、まーくんに宿題を中心に勉強を教えてもらえないかお願いした。
だけど、幼稚園の時とは違う低い声にドギマギしてしまって、内容が一向に頭に入ってこない。
折角まーくんが夏休みからバイトを減らしてくれたのにあたしが補習になっちゃったら結局会えない時間が増えてしまう。
焦る気持ちでついこーくんも一緒に勉強へと誘った。
まーくんと二人っきりだとあたしの心臓の音がうるさすぎて何も頭に入ってこないからだ。
今は中三であたしが奇跡的に受かった白貴を目指しているこーくんは受験勉強の傍らあたしの期末対策に付き合ってくれている。
まーくんがあたしへ説明するのを横で聞いていて、あたしよりもこーくんの方が先に理解しちゃうのだ。
それで、こーくんなら緊張しないあたしは、同じ説明をこーくんからしてもらって、なんとか理解出来る状態になってきた。
なんとか勉強出来ている事にホッとしたのも束の間、なんだかまーくんの様子がおかしい。
勉強の後、こーくんが席を外すとこうやってぬいぐるみのようにあたしを抱き込むようになってしまったのだ。
まーくんがバイトの日は、こーくんと二人で宿題をしているのもどうやら気に食わないらしい。
こーくんにもバレているようで「早く慣れてあげてよ」って苦笑されている。
あたしだってなんとかしたいけど、どうしてもまーくんを前にすると心臓が速くなってテンパってしまう。
(これって嫉妬なのかな?)
未だにあたしなんかが彼女で良いのかなとも思わないでもないけど、でもこうやってギュッとされると愛されている気がして幸せな気分になる。
数日後、期末テストで一つも赤点を取らなかったので、まーくんにもこーくんにも笑顔で報告した。
ちょっとでも気を抜いたら授業についていけなくなるあたしは、テストが終わっても勉強会を続けてもらっている。
そして今日も変わらず、赤く湯だったぬいぐるみになってしまうのだ。




